長野県安曇野市の特別養護老人ホームあずみの里」で2013年、入所者の女性(当時85歳)がおやつを食べた後に亡くなった事故をめぐり、介助中に十分な注意を払わなかったなどとして、業務上過失致死罪に問われた准看護師の山口けさえさんを逆転無罪とした東京高裁判決が確定した。東京高検が8月11日、上告しないと発表した。

無罪確定を受けて山口さんと弁護団が8月12日長野県松本市で会見を開いた。山口さんは「無罪が確定して、本当に良かったです。ホッとしたという気持ちです」と話した。

弁護団長の木嶋日出夫弁護士は「苦難にめげずに無罪無実を主張した山口さんの頑張りに心から敬意を表します。たくさんの教訓をもつ事件でした。2度とこうした乱暴な捜査や起訴がない日本社会を作るために努力したい」と話した。

山口さん「やりがいを感じられる仕事」

山口さんは事故後、女性が急変した現場となった食堂に近づくのが怖くなり、「精神的に追い詰められ、いっときも忘れることができなかった」と振り返る。

起訴から5年半あまりが経過した。長い戦いの中で、「頑張ろうね」と自分のことのように励ましてくれた同僚や家族、友人、現場に何度も足を運んだ弁護団の存在に勇気付けられた。

医療や福祉関係者からは、高裁判決までに無罪判決を求める計73万筆もの署名が集まった。山口さんは「看護師として心を込めて利用者のお世話をしてきました。この仕事は大変なことも多いですが、利用者さんの笑顔もみられるし、やりがいを感じられる仕事。この仕事に誇りを持って一緒に頑張っていけたらと思っています」と支援者に感謝した。

長野県民医連など支援団体は、無罪確定を受け共同声明を発表した。

「施設での食事提供が利用者の人間らしく生きることを支えるかけがえのない意義を持つことまで言及したこの判決は、1審判決により萎縮した全国の介護現場と関係者には安心と未来への希望を、利用者には生活の喜びを取り戻すものとなるだろう」と高裁判決を評価した。

ドーナツで入所者死亡、無罪確定 准看護師「やりがいを感じられる仕事」支援者に感謝