国税庁令和元年9月に発表した「平成30年分 民間給与実態統計調査」によると、平成30年度のサラリーマンなど給与所得者の平均給与は441万円。年収1,000万円~1,500万円は給与所得者全体の3.6%です。年収1,000万円というと、憧れの対象として見られるケースも多いですよね。

一方、総務省が令和2年5月に発表した「家計調査報告(貯蓄・負債編)」をみると、2人以上の世帯において、2019年の貯蓄高平均値を下回る割合は67.9%に及んでいるそうです。50歳以下の世代では貯蓄よりも住宅・土地取得のための負債のほうが上回り、負債超過となっているのが分かります

若い年代のほうが貯金している割合が少なく、それは一見余裕がありそうな年収1,000万円の世帯も例外ではないようです。今回は、「年収1,000万円でも生活が苦しい」という主婦・ワーママから話を伺いました。

児童手当、高校無償化も対象外…

大手企業に勤める夫をもつ専業主婦のAさん(44歳)は、都内に暮らす3人家族。マイホームと車も所有し、余裕のある生活を送っているように見えます。

「家計はきびしく、実は貯金がほぼゼロ…。税金は高いのに児童手当も対象外ですし、余裕なんてないですね。夫の給与は減らないという安心感があったので、ちょっと気を抜いているところもありました。進学に向けてきちんとお金をためなければいけないのに」

中学生以下の子どもがいる世帯が受け取れる児童手当。これは年収960万円で対象外となり、受給額の少ない特例給付に変わります。

しかし、子どもの成長につれ教育費も上がる一方です。Aさん子どもを私立に通わせており、塾や習い事もさせているそう。2020年4月から「私立高校の実質無償化」が始まりましたが、対象となる世帯年収の目安は910万円だといわれています。条件にもよりますが、Aさんのような年収1,000万円で共働きではない世帯では対象外となってしまうケースが多いのです。

また、先述の国税庁調査によれば、年収800万円以下の納税者は約3792万2千人、年収800万円以上は485万6千人と開きがありますが、全体の納税額で比べてみると、800万円以下が34.4%、800万円以上が65.6%と、半分以上の納税を年収800万円以上の世帯が担っていることが分かります

なかでも、年収2,500万円以上の世帯をのぞくと、最も多いのは年収1,000万円~1,500万円の世帯。令和2年からは未婚など一部の世帯で年収850 万円以上は所得税が増税されたこともあり、税金によるシワ寄せを感じやすい世帯なのかもしれません。

「LIMO[リーモ]の今日の記事へ」

「余裕がある」という思い込みから使いすぎてしまうことも

Bさん(38歳)は夫との共働き。夫婦の収入を合わせて、ちょうど1,000万円に届く年収です。累進課税で税率が変わることから、一般的に共働きの年収1,000万円世帯の方が手取り額は多くなりますが、なぜ貯金ができないのでしょうか。

「夫は多忙でほとんど家にいないので、家のことはワンオペ状態。平日は疲れてしまって、お惣菜を買ったり宅配を頼んだり…休みは子どもを連れて外食しちゃうことも多いです。掃除まで手がまわらないので、家事代行サービスをお願いすることも。夫とは『お金をかけていいから家事の負担を減らそう』と話し合っていますが、実質いくらかかっているかは把握していません…」

実は、年収が高く自由に使える金額が多い家庭には、このようにいつの間にか使いすぎてしまう「隠れ貧乏」というパターンがあるそう。ブランド品を買ったり海外に行ったりなど、いわゆる「贅沢な暮らし」をしているわけではないのに、貯蓄ができないという世帯です。

Bさんは、夫の仕事が安定して休みが増えたら…自分の収入が上がってもっと余裕が出たら…など理由をつけて「それまでは貯金できなくても仕方ない」と考え、ここまできてしまったといいます。
「夫婦で稼いでいるという心の余裕があるせいか、どんぶり勘定でも気にしていませんでした。子どもの進学もありますし、今後は考えていかないといけないですね」

生活設計を立てていない世帯は約6割

生活設計とは、将来に向かってこうありたいという生活像を描き、目的達成のために具体的な計画をたてることを指します。消費生活の安定・向上や教育、老後生活への準備などがこれにあたります。

貯金をしていないAさん・Bさんに共通している部分は、貯金していないことを自覚していたり、今後の金銭的な計画を考えていなかったりするにも関わらず、「なんとかなる」と楽観的になっていたところでしょう。

金融広報中央委員会が2019年に全国8,000世帯を対象に行った調査をまとめた「家計の金融行動に関する世論調査」〔2人以上世帯調査〕によると、過去1年間の家計運営について「思ったより苦しかった」と答えたのは46.9%。約半数近い世帯で家計運営の苦しさを自覚している様子がみてとれます。

しかし一方で、「生活設計を立てている」世帯は全体の35.1%にとどまり、「今後は立てるつもり」41.1%、「今後も立てるつもりはない」22.6%と、現時点で生活設計を考えていない世帯が6割を超しているのが現状のようです。

対象外となる制度が意外と多い…しっかりとした生活設計を

年収1,000万円ともなると、所得税が増えるだけではなく、遺族年金の受給ができないケースがあるなど、対象外となってしまう制度も多いことを考慮しておくべきでしょう。

また、今は余裕があるような気がしていても、子どもの進学などライフステージの変化によって、家計が耐え切れなくなることがあるかもしれません。きちんと貯蓄しながら家計をまわしていく第一歩として、しっかりと出費を把握し、生活設計を考えることからはじめてみてもいいかもしれませんね。


【参照】
国税庁平成30年分 民間給与実態統計調査
総務省家計調査報告(貯蓄・負債編)
文部科学省私立高校の実質無償化リーフレット
金融広報中央委員会「「家計の金融行動に関する世論調査」〔2人以上世帯調査〕