日本の大型貨物船がインド洋の島国、モーリシャス沖で座礁し、船体から1千トン以上の重油が流出した。座礁地点の近くには野鳥の保護区があるなど環境への影響が懸念され、世界的にも注目が集まっている。
そこでモーリシャスの人々は一丸となって、流出した重油を食い止めようとしている。髪を切り、みんなの髪を集めて、海に流出した重油を吸い取る作戦だ。
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海を救うため、地元の人々が立ち上がった
7月26日、日本の商船三井が手配した大型貨物船「WAKASHIO(わかしお)」がモーリシャス沖のサンゴ礁周辺で座礁し重油が流出した。
モーリシャス政府は、緊急事態宣言を出したが、1000トン以上の重油が島周辺の海域に流れ出した。現在流出は止まっているというが、船がまっぷたつになる前に、まだ船内に残っている重油をなんとか回収しようと急ピッチで対策が進められている。
モーリシャス政府が、流出を封じ込めるために世界中に助けを求める一方、地元の人たちも自分たちでなんとかしようと、髪の毛と藁、サトウキビを詰めた布やストッキングの袋で独自のオイルフェンスを作り、対処しようとしている。
重油の流出をくい止めようと、人毛を詰めたオイルフェンスをみんなで作るモーリシャスの人々
髪の毛を詰めたオイルフェンスの有効性
髪の毛は、油を吸い取るのに優れた素材だ。人間の髪の毛には、脂肪親和性がある。つまり、水ははじくが、油でできたものにはなんでも付着する。これは、水と油の分離に役立ち、髪の毛1キロで、8リットルの油を吸うことができるという。
初めて試されたのは、1978年。フランスのブルターニュ沖で、アモコ・カディスというタンカーが座礁し、22万880トンもの重油が流出したときのこと。2004年にメキシコ湾で起きたテイラー・エナジー社の原油流出事故でも使用された。
1990年代後半に行われたNASAの研究で、重さ1万1340キロの毛髪は、17万ガロンの流出オイルを吸収できる可能性があることがわかった。しかも、1ガロンを吸収するのに2分かからない。
『Environments』(2020年7月)に掲載された最新の研究によると、人間や犬の毛は、現在、流出オイルの処理に利用されているポリプロピレンのような合成繊維と同等の優れた性能があり、しかも天然で再生利用できる点で優れているという。
続々と集まる髪
現在、地元の人々は率先して切った髪を提供し、美容師もそうした人たちのカットを無償で行っている。かつてモーリシャスを植民地にしていたフランスも乗り出し、20トンの毛髪オイルフェンスも到着する予定だ。
SNSでもこの件に関する投稿が集まっている。
わたしの故郷の美しい島が、ひどい重油の流出被害にみまわれています。野生動物やその環境、壊れやすい自然の生態系、観光業に頼らなくてはならないこの国の経済にとって、大打撃です。流れ出た重油を吸い取るために、髪の毛の寄付が呼びかけられています。自分ができることはそれほど多くはないけれど、せめてこれくらいのことならできます。自分のロングヘアは気に入っていますが、髪はまた伸びますから
Merci de deposer vos cheveux et collants a Unicity busness park (bloc 21) a cascavelle pour la fabrication de boudins qui vont absorber l'huile 🙏#mvwakashio
Joanna Berengerさんの投稿 2020年8月8日土曜日
Fellow warden currently on the mainland sent this through. Free haircuts at the local mall to collect hair to help absorb some of the #oilspill in #mauritius.
— Bethan Govier (@Bethan_Govier) August 8, 2020
The official response may have been severely lacking but the community are coming together and it’s fantastic. pic.twitter.com/mBXNQ5PjDE
地元のショッピングモールで無料で行われているヘアカットの様子。モーリシャスで流出した原油を吸収する髪の毛を集めるためだ。地域の人々が一丸となって協力していることはすばらしい
自然の回復に数十年
モーリシャスは、観光業に頼る小さな島で、手つかずの美しいビーチや海、多様な野生動物が自慢だ。
この事故は、絶滅の危機に瀕していた鳥や希少植物などの保全に35年以上取り組んできた自然保護区からおよそ2kmの場所で起きた。流出した油はブルー・ベイ・マリーン・パークに迫り、多くの種の魚やカニが死んでいるそうだ。
また、湿地帯でもマングローブなどに被害が出ている他、蓄積した重油によりサンゴも死滅し、土壌汚染が鳥や昆虫などに中長期的な影響を及ぼすことが懸念されている。
市民が一丸となって、流出した油の広がりを阻止しようとしているのは、すばらしいことだが、一度汚れてしまった海をもとに戻すことは大変な作業だ。
現地の環境保護団体「モーリシャス野生生物基金」によると、自然が元のように回復するには数十年かかる可能性があるという。
海をきれいにする画期的な技術が生み出されるか、船から油が流出しない技術が生み出されるか、あるいは我々が石油に依存する生活を変えないかぎりは、また悲劇が繰り返されていくのだろうか?
とりあえず大量の髪の毛が必要ならば、送る用意はできている。ちょっと枝毛とかあるけども。
References:iflscience/ written by konohazuku / edited by parumo
全文をカラパイアで読む:http://karapaia.com/archives/52293648.html
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