○○さん家の猫がかわいすぎる Vol.18】


 サビ猫は特徴的な毛柄ゆえ里親が決まりにくかったり、特徴的な毛柄が猫種としての売りになっている場合は買いたたかれたりすることがあります。


 しかし、その一方でどこか味わい深さを感じさせるオンリーワンな毛柄の虜になっている飼い主さんも多くいます。愛猫らいむちゃんへの想いを語るユウさん(@CatdoctorU)も、そのひとり。


◆母から「捨て猫いる?」とLINEが



ユウさん宅のらいむちゃん



「SNSでいろいろなサビ猫を見るたび、それぞれの個性が出ているなあと愛おしくなります。まったく同じ柄の子が存在しないのが、サビ猫の魅力。らいむの場合は机から足を滑らせたり、ジャンプが全然届かなかったとき、何事もなかったかのように、すんっとした顔を見せるところがかわいい」


 今年の4月に獣医師になったユウさんの自宅には、らいむちゃんを含め、3匹の猫が。


「2年ほど前、実家の近所に住む老夫婦宅の庭に4匹の子猫が現れました。親猫が育児放棄してしまったようだったので、最初、老夫婦は親猫が戻ってくれることを期待して、手を出さないようにしていたのですが、1匹が衰弱死してしまい、もう1匹も衰弱していたため、弱った子を実家の動物病院へ連れて来てくれました」


 老夫婦は病院で「明日、保健所に引き渡すから今日だけ治療してください」と申し出たそう。それを聞いたユウさんのお母さんは「保健所へ連れて行くのを待ってほしい、残りの2匹も」と頼み、実家を出ていたユウさんに「捨て猫いる?」とLINE。


「当時は1か月ほど前から猫を飼いたくて、ネット上の里親募集を見ていました。でも、一人暮らしの学生が譲渡してもらうことは難しくて、半ば諦めていたので二つ返事でOKしました」


 以降、兄妹である3匹はユウさんにべったりと甘えつつ、絆を深める日々を送っています。



同居猫たちと。左がみんとちゃん。奥にいるのはかぼすくん



 なかでも、特に甘えん坊なのがらいむちゃん。




 ベッドで寝る時は必ず枕元に来てくれるのだとか。


「よく、どうやったらそんなに猫になつかれるんですかと質問を頂くのですが、僕がやっているのは自分も猫のつもりで接することだけ」


 自分は猫たちの4匹目の兄弟。猫だと思って生活すれば、難しいことを考えなくても自然とより良い関係が築ける。そう考えるユウさんだからこそ、3匹は心を許し、愛くるしい姿を見せてくれているのかもしれません。


◆YouTubeやオープンチャットを開設する獣医師



ユウさんのお仕事を見守るにゃんこたち



 そんなユウさんは従来の獣医師とは違った、斬新な活動を精力的に行っています。


「獣医師としてまだまだ未熟ですが、そんな僕でも伝えられる有益な情報を飼い主さんに届けたいと思ってYouTubeを始めました」


 例えば、生後半年過ぎてから猫の避妊手術を勧める動物病院は多いもの。しかし、最新のガイドラインでは「猫の避妊手術は4か月齢で実施するべきである」となっているのだそう。



「4か月齢で実施した場合と半年を過ぎてから実施した場合を比較すると、悪性乳腺腫瘍の発生率が1.5倍も異なります。こういった事実は僕が調べた限りではネット上に記載されておらず、Twitter上で飼い主さんに実施したアンケートでも半年を過ぎてから手術を受けている猫たちが最多でした」


 獣医師として目の前の動物を救うことは、もちろん大切。けれど、有益な最新情報を多くの人に知ってもらうことは目の前の動物を救うよりも、はるかに効率よく多くの動物を救うことに繋がるはず。そう考えるユウさんの動画からは、動物を守りたいという願いが伝わってきます。


◆猫のお悩み相談室もスタート
 そして、LINEオープンチャット「ねこちゃんのお悩み相談室」を開設した経緯も、ユウさんならでは。近ごろはSNSの普及によってペットの悩み相談が気軽にできるようになり、獣医師に頼る前に「SNSに相談」というワンクッションが挟まれやすくなりました。しかし、それは緊急時の場合だと命取りになります。


「オープンチャットを作った一番の理由は、病院に連れて行くべきか否かの判断を下すためです。オンラインなので治療はできませんが、『夜間でも病院に連れて行くべきか?』『明日の朝まで待っていい?』の判断はできる。そうした判断は獣医師に頼ったほうが確実です」


 オープンチャットでは、トーク履歴が残るという特徴も有効活用。


「僕が相談者さんのLINEにすぐ気づけなくても、チャットに参加している飼い主さんが過去の僕のアドバイスを引用し、迅速に対処法を提示することができます。最終的には、僕がアドバイスをしなくても緊急時の対応はLINEに気づいた誰かが反応してあげられるようになったらいいなと考えています」


 飼い主さんの心にも寄り添おうとするユウさんの姿勢は、心強いもの。今年の1月には、愛猫の名前にちなんだ「mint」というペットグッズ専用SNSもリリース。


「現状では獣医療とまったく関係ないサービスなのですが、今後、獣医療に絡めた機能を追加して行く予定です」


 具体的には、獣医師が選んだペットフードのみを取り扱うオンラインショップを作り、無料のビデオ通話で獣医師にペットフードについての相談ができる機能も追加しようと考えているのだとか。


◆「診てもらえて良かった」と言ってもらえる獣医に



レントゲン写真の棚で遊ぶ2匹



 これほどまでに、斬新な活動をしている理由。そこには自分が楽しめることを貪欲に求める情熱が関係していました。


「そもそも獣医師になろうと思ったのも、好きなことを仕事にしたかったから。高校生の時、1日中やっても苦痛にならないことを考えたときに“猫と戯れること”が頭に浮かんだので獣医になりました。実際、獣医師になってみて、あのときの判断は間違ってなかったなと思っています」


 大人になると人生の大半を仕事が占めるからこそ、ユウさんは苦痛を伴う人生にはしたくないと考え、好きなことを職にしようと考えたのです。


「僕が今、もっとも尊敬している院長先生は、飼い主さんの気持ちにとことん寄り添える獣医師。多くの人は学術的に優れた獣医師になることを目指しますが、僕はそこよりももっと大切な事があると思うようになりました。動物は、どんなに治療をしても最後には必ず死んでしまう。だから、『この獣医さんに最期まで診てもらえて良かった』と思っていただけるような人間力の優れた獣医師になっていきたい」


◆血液検査を年1度してほしいわけ
 そんなユウさんが世の飼い主さんに願うのは、「動物の1年を大切に考えること」。犬猫の寿命は人間の約5分の1。それは言い換えてみれば、犬猫にとっての1年の価値は、人間にとっての5年分の価値であるということ。


「例えば、去年、血液検査したから今年はやらなくていいだろう……と思う方もいるかもしれませんが、犬猫が人間の5倍速で歳を重ねると考えたら、1年に一度検査をしたほうがいいと思えるはず。よく『高齢であと2~3年の命だから手術はしない』と言われる方もいますが、犬猫にとっての2~3年は人間にとって10~15年。10~15年手術をしてもらえず、痛みを抱えたまま生涯を終える辛さを想像してほしいです」


 動物はしゃべることができない。だからこそ、飼い主が動物の気持ちや痛みを汲み取ってあげ、1年の価値に目を向けてあげてほしい。そんな祈りを持ち続けるユウさんは、人と動物両方の心を気遣い、双方の絆を取り持ってもくれる獣医師。


 3匹の愛猫たちと愛し合いながら、今後もどんなめざましい活躍を見せてくれるのか楽しみです。


<文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>


【古川諭香】愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291



ユウさんのお仕事を見守るにゃんこたち