巨大ウミサソリ ユーリプテルス


 人類が誕生する以前、地球上には巨大生物が多く存在していた。恐竜が誕生するさらに前、「古生代(5億4100万年前から2億5200万年前)」には、昆虫、甲殻類サソリ、カブドガニといった外骨格をもつ節足動物には、とてつもなく大きいものもいた。

 当時、地上最大の節足動物のひとつと言われていたのが、巨大ウミサソリ(Eurypterida)の仲間だ。中には2.5メートルを超える種もいたと考えられている。

 『Gondwana Research』で公開された最近の研究では、かつてオーストラリアに生息していた6種のウミサソリについての詳細情報が明らかになったようだ。

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 ウミサソリの仲間には、全長2.5メートルもあるような「ヤエケロプテルスJaekelopterus)」など最大級のものがいた。現代のホオジロザメのように、当時は、このような大型生物が同じ場所の食物網の中で効果的に存在していた。

 彼らは機敏に泳ぎ、ツメのついた大きな前肢を使って獲物をつかみ、足についている歯のようなもので獲物を砕いたと思われる。

 これら大型生物が実際になにを食べていたかははっきりはわからないが、魚や小さな節足動物だっと思われる。もし当時、人間がいたら、彼らのエサになっていたかもしれない。

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絶滅した巨大ウミサソリの仲間と人間と比較した図
image by:Slate Weasel/Wiki commons.

オーストラリアに生息していた6種のウミサソリ


 オーストラリアは、興味の尽きない動物たちの宝庫だ。現代でも、カモノハシのようなユニークな動物がいる。

 しかし、オーストラリアのウミサソリの科学的な記録や研究は、きちんと系統立ててまとめられていない。初めて記録された標本は1899年のもので、メルボルンで見つかった外骨格類の断片だった。

 オーストラリアのグループ全体を調べるこの新たな研究以前には、10ほどの調査記録があったが、すべてをまとめようとしたものはひとつだけで、こうした化石の多様性や分布についてはかなり曖昧になっていた。

 驚くようなこうした化石をもう一度調べるために、いくつかのオーストラリアの博物館を何度か再訪し、さらにニューイングランド大学にある標本を送ってもらったりした。

 その結果、これまで見落とされていたたくさんのウミサソリの化石が見つかり、オーストラリアにはかつて6種のグループが存在していた可能性がある証拠をつかむことができた。

 これらをまとめ、オーストラリアの化石記録のほとんどを占めるプテリゴトゥス科(体長2.5メートルにもなるウミサソリの仲間)のグループを図解してみた。

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オーストラリアの絶滅ウミサソリ2種のふたつの時代におけるタイムレンジ。ブルーはプテリゴトゥス、オレンジはアデロフサルムスを表わしている。
image credit:

 今回の研究では、オーストラリアの多様なウミサソリを紹介するだけでなく、これまで不足していた彼らの情報全般についても概説している。

 標本の断片はたくさんあるものの、全長わずか5.7センチというAdelophthalmus waterstoniの完全標本はたったひとつだけだ。

 今後の研究では、もっと完全な標本を求めて、これまで標本が採取された現場を再び訪れることになるだろう。オーストラリアのウミサソリの種類をもっとたくさん記録することができるだけでなく、彼らが生きていた環境についてもさらに理解できると期待できる。

ひとつだけはっきりしていることは、オーストラリアの先史時代の海を泳いでいたこれら巨大な生き物について、明らかにすることはまだまだたくさん残されているということだ。

References:Giant sea scorpions were the underwater titans of prehistoric Australia/ written by konohazuku / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52293482.html
 

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