北朝鮮が、未曽有の豪雨により大ダメージを受けている。

13日に開かれた朝鮮労働党中央委員会第7期第16回政治局会議では、「全国的に農作物の被害面積は3万9296ヘクタールであり、家屋1万6680余世帯と公共施設630余棟が破壊されたり、浸水し、多くの道路と橋梁、鉄道が断ち切られ、発電所のダムが崩壊するなど、人民経済の複数の部門で深刻な被害を受けた」との報告が行われている。

だが、韓国のニュースサイト、リバティ・コリア・ポスト(LKP)が報じたところによると、より深刻な被害を受けたのは軍だという。例えば江原道(カンウォンド)に駐屯するある部隊は、兵舎が丸ごと土砂崩れに飲まれ、200人が犠牲となる大惨事に見舞われたという。

食糧の横流しなどでただでさえ弱体化が進んでいた軍が、ほかにも甚大なダメージを受けたであろうことは想像に難くない。

北朝鮮国内に在住するLKPの情報筋によれば、両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市住む友人の息子が7月に死亡したという。この息子は、江原道の伊川(イチョン)郡に駐屯する第5軍団傘下の122ミリ自走砲大隊で兵役服務中だった。

軍から死亡通知を受けて現地へ行ってきた友人によれば、元山(ウォンサン)から伊川までの道が土砂で埋まり、元山で一週間以上も足止めされたという。また、息子が所属していた部隊は大隊兵舎が土砂崩れに飲まれ、200人以上が死亡。400人以上が重軽傷を負う大惨事に見舞われたという。

600人が死傷ともなれば、1個大隊がほとんど壊滅したも同然と言えるだろう。

この事故には国家の指導部も衝撃を受けたもようで、金正恩委員長の指示に基づき、すべての犠牲者に愛国烈士証が授与され、遺族に対する支援も軍部が責任を持って行うことが決められたという。

LKPによれば、軍が豪雨により被ったダメージはこれだけではない。土砂崩れにより通信ケーブルが流失し、電力供給網も破壊され、地下の軍事施設が甚大な被害を被ったとのことだ。

国際社会による経済制裁と、新型コロナウイルス対策のための貿易停止で疲弊した北朝鮮が、こうした被害を完全に復旧させるには相当な時間を要すると見られる。

北朝鮮軍砲撃訓練を指導した金正恩氏(2020年4月10日付朝鮮中央通信より)