ロシア公正取引委員会(FAS)は、調査の結果、Appleに独占禁止法違反があったことを認定した。

(参考:AppleがApp Storeから2,500以上の中国製ゲーム排除 取り締まり強化のねらいは?

自社提供の機能をリリースした途端に、競合アプリを禁止
 Appleは2018年後半にApp Storeからサードパーティのペアレンタル・コントロール・ソフトウェアを削除し始めた。それは、iOS 12で独自のScreen Timeアプリが利用できるようになったのと同次期のことだと『9to5Mac』は、報じている(参考:https://9to5mac.com/2020/08/10/apple-guilty-russian-antitrust-investigation/)。

 2019年6月にAppleは禁止措置を撤回したが、ペアレンタル・コントロールを提供するためにMDM(モバイル・デバイス・マネージメント)を使用するアプリやその他の同様のアプリは、ケースバイケースで承認されないものもあった。しかし、モスクワにあるコンピューターセキュリティ会社Kaspersky Labsは、MDMを使用したことはないと主張し、公に申し立てを行った。

 この問題についてAppleは「削除はセキュリティ上の理由によるものだ」という公式見解を発表したが、アプリ開発者らは「Appleの主張は誤解を招くものだ」と反論し、事態は悪化。そして、1年の調査を経て、FASはAppleが支配的な地位を乱用したという結論に至った。

 また、FASは「Appleが、サードパーティのアプリがAppleの全ての仕様を満たしていたとしても、そのアプリをApp Storeからブロックする権利を留保する」という点の問題を指摘。

これを踏まえ、FASはAppleに違反の是正を命じた。現在のところ、それが具体的に何を意味するかは明確ではないが、ロシアでMDMベースのペアレンタル・コントロール・アプリ使用のApp Storeポリシーを緩和する可能性がある。

 Kaspersky Labsは、Safe Control iOSアプリからアプリ・コントロールやSafariブラウザーブロックといった機能の削除に動かざるをえず、Apple独自の使用状況モニタリング機能Screen Timeと競争する能力が低下したと主張している(参考:https://www.cnet.com/news/russian-competition-watchdog-finds-apple-guilty-of-antitrust-abuse/)。

 Appleはこの裁定に不服で異議申し立てを行う意向のため、調査終了までさらに時間を要するだろう。

欧州・米国でも調査
 EUでは、音楽ストリーミング大手Spotifyが、App StoreでのApple独自の課金システム強制とアプリ外での購入に対する制限に懸念を表明し、欧州委員会が調査に乗り出した。Appleは、競合するApple Musicという独自サービスがあり、状況がロシアのケースと酷似している。

 Spotifyのケースについて、Appleは、真っ向から反論している(参考:https://www.apple.com/jp/newsroom/2019/03/addressing-spotifys-claims/)。

 アメリカでは、Appleに対する反トラスト法(独占禁止法)違反の調査が継続している。また、App Storeについては、メッセンジャーアプリWeChatを禁止する大統領令により、苦境に立たされている。

 輝かしい成功を収めているAppleだが、その裏で多くの紛争を抱えているのもまた事実だ。

(Nagata Tombo)