アメリカのドナルド・トランプ大統領が、メッセンジャーアプリ「WeChat」を禁止する大統領令に署名したことで、今後iPhoneを始めとするApple製品の売上げが、大打撃を被るという調査結果が出た。

(参考:米国政府の次なる中国テック標的はAlibabaか、海外メディアが予想

・最悪のシナリオでは、出荷が最大30%減少
 Appleの事情に詳しいTF International Securitiesのアナリストであるミンチー・クオ氏は、世界のiPhoneの出荷が最大で30%減少する可能性があるという観測結果を報告している(参考:https://www.macrumors.com/2020/08/10/kuo-wechat-ban-iphone-shipments/)。

 クオ氏は、WeChatがアメリカ国内のApp Storeのみで禁止になる楽観的な場合と、全世界で禁止になる悲観的なシナリオでの影響をそれぞれ算出している。仮に世界的に禁止になった場合は「破壊的な結果をもたらす」としている。

 WeChatは、毎月12億人以上のアクティブユーザーがいる。とりわけ中国のユーザーにとっては、通信・支払い・eコマース・ソーシャルソフトウェア・ニュース閲覧といった日常的に使用する機能が詰まっており、非常に重要なアプリだ。

 したがってクオ氏は、iPhoneの出荷は、世界で25~30%減少すると予測している。AirPodsiPadApple Watch、Macといった他のAppleハードウェア製品の出荷は、世界で15~25%減少するという。

 一方で、もしアメリカのApp Storeのみ禁止であれば、iPhoneの出荷は3~6%減少、その他のApple製品は3%未満の減少に留まるという。

 中華圏は、Appleの総収益の15%以上をシェアがあり、Appleのビジネスの重要な部分を占めている。

・中国のiPhoneユーザー95%が「WeChatなければ乗り換え」
 他方で、中国のiPhoneユーザーの95%が、WeChatがなければAppleに見切りをつけるという調査結果もある(参考:https://9to5mac.com/2020/08/13/chinese-iphone-owners/)。

 Weiboで中国の120万人以上の回答を集計した結果、iPhoneユーザーの95%が、WeChatをあきらめるのではなく、Appleから別のスマートフォン・ブランドに切り替えると考えていることが分かった。

 中国では、WeChatのないiPhoneは、高価な電子ゴミになってしまうと『9to5Mac』は伝えている。

 これら2つの異なる調査は、ともにiPhoneの販売に甚大なマイナス影響を招くという結論を導き出している。

・米国政府の解釈は「米国のみ」それとも「全世界」?
 今回の大統領令に対しては、AppleをはじめFord、Walmart、Disneyといったアメリカ企業が、それぞれ懸念を表面している(参考:https://www.theverge.com/2020/8/13/21366171/apple-wechat-ban-ford-disney-push-back-report)。

 「米国でのWeChatに関連するいかなる取引も禁止」という大統領令の文言をそのまま鵜呑みにすれば、アメリカ製品であるiPhoneは、全世界でWeChatが使用できないというふうにも受け取れる。

 しかし、アメリカの様々な業界を代表する大手企業がこれだけ反対の声を上げていることを受けて、ある程度“お目溢し”される可能性は、あるのだろうか。期限となる9月下旬には“禁止”になるが、今後のアメリカ政府の出方に注目が集まる。

(Nagata Tombo)