最終回の視聴率が『家政婦のミタ』を抜き、今世紀1位(関東42.2%、関西45.5%)を記録したドラマ半沢直樹』。次に放送されるドラマは『家政婦のミタ』に抜かれるまで、今世紀最高視聴率の記録を持っていたドラマ『ビューティフルライフ』に主演していたSMAP木村拓哉が、大学教授で天才物理学者の沫嶋黎士と、100年先の未来から現代に送り込まれたアンドロイド役の二役を演じる『安堂ロイドA.I. knows LOVE?~』だ。超高視聴率ドラマの直後だけに「木村拓哉でどれだけの視聴率が取れるのか?」「現場には重圧が!?」「設定があのアニメや映画にそっくり?」などあちこちで話題になっているが、そういう話は他にお任せして、ここではタイトルにも入っている「AI」の現状について『クラウドからAIへ アップルグーグルフェイスブックの次なる主戦場』(小林雅一/朝日新聞出版)を見てみよう。

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 AIとは人工知能Artificial Intelligenceの略で、「思考や推論、言語能力をはじめ人間が持つ様々な知能(知性)を、コンピュータのような機械と、そこに搭載されるソフトウェアによって人工的に実現したもの」と本書では説明されている。「AI」という言葉を使い始めたのはアメリカコンピュータ科学者であったジョン・マッカーシー氏で、AIの研究開発は1950年代から始まっていたそうだが、これまでに何度も冬の時代を迎えたという。しかし現在では科学者などの好奇心や高い理想ではなく、企業による地に足がついたニーズ主導のAI開発へと変わり、iPhoneSiriや、Googleの音声検索や自動運転車などがあり、AIというと人間に似たアンドロイドを思い浮かべるが、すでに日常生活に欠かせない技術になっているのだ。

 なぜAIはこれほどまでに重要視されているのか? それは昨今話題となっている「ビッグデータ」の争奪戦、つまりユーザーたちが発信する膨大な情報を真っ先に吸収するためだという。情報を制した者はすべての産業で大きな影響力を振るうことができるようになる……つまり「金」になるのだ。そのために、ユーザーが今何に興味を持ち、何を欲しがっているのかという個人情報を得るため、便利な「入口」を与えることでユーザーを囲い込み、様々なデータを蓄積する。そのデータを、休みなく働いて膨大な量を処理するAIの自律的な機械学習で処理する。その学習によってAIは高性能化し、さらに処理能力の高まったAIはより大きなビッグデータを吸収、そして性能が高まることで精度も上がり、「自分の欲しい情報」に簡単にアクセスできる検索に人が集中し、ビッグデータはさらに大きくなる……というデータ量とAIの能力が無限に進化する状態を作り出そうとしているそうだ。

 音声によるインターフェイスや自動の機械の登場は、これまでのようにキーボードマウスを使ってパソコンを動かすような「人間が機械に合わせる時代」から、AIが自律的に考えて「機械が人間に合わせる時代」へと変えていく力を持っている。ちなみに技術的特異点を意味する「シンギュラリティ」(機械が人間を上回る知能、そして意識までを持つようになる)の信奉者たちが開催するサミットでは、2045年には機械が人間を超えると予想しているそうだ。『2001年宇宙の旅』(アーサー・C・クラーク著、伊藤典夫訳/早川書房)を始め数々のSF作品で描かれてきた機械が人間の能力を超えるのは、そう遠くない未来の話になってきているのだ。

 未来の話といえば、木村演じる沫嶋教授は「ワームホール理論」を研究している設定だそうで、これは「時空構造の位相幾何学」と呼ばれている。ものすごく簡単に言ってしまうと、これは「時空のトンネル」のような抜け道が遠く離れた2つの場所や、過去と現在や現在と未来、自分が存在している宇宙と別の宇宙とつながっているという理論で、瞬時移動やタイムトラベルを可能にする考えなんだそうだ。『ホーキング、未来を語る』(スティーヴン・ホーキング:著、佐藤勝彦:訳/ソフトバンククリエイティブ)では、ワームホールを「空間と時間の異なる領域を結びつける時空のチューブ」と説明している。興味のある人は、こちらも合わせてどうぞ。「読むのが面倒臭い」という人は、ネット検索でAIに教えてもらってください!

文=成田全(ナリタタモツ)

『クラウドからAIへ アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場』(小林雅一/朝日新聞出版)