すでに社会問題化しているLINEを使った未成年の援助交際。未成年を守るためについに全キャリアで利用制限を実施するのだが、この規制は初めから抜け穴があった?

メジャー化したSNSが避けて通れない道?

9月30日、LINEが昨年12月のau(KDDI)に続いて、ドコモソフトバンクアンドロイド端末で「18歳未満のID検索機能利用制限」を実施する見込みだ。

この件について、LINEを運営するLINE株式会社は自社のサイトを通じこのように発表した。

「非公認の掲示板などの誰でも利用することができるウェブサイトやアプリにLINEのIDを公開し合って、見知らぬ人とLINEで友だちになるケースがあります。

そこで、青少年のLINEユーザーの皆さんをトラブルから未然に守るため、(一部省略)18歳未満の方はLINEのID設定およびID検索を利用することができないよう部分的な機能制限を実施します」(以上、LINE公式ブログより引用)

要するに、18歳未満の利用については、LINEのイメージが悪くなるような問題を起こされると迷惑だから、使い勝手は悪くなるけど、あえて規制するってこと。

でも、メインのユーザーである10代の利用制限は、LINEにとってもプラスにならないのでは?

ITビジネスに詳しく関連著書が多数ある小川浩氏が分析する。

「LINEを経由した未成年の援助交際が急増しているし、今年4月、広島で起きた16歳少女殺人事件も、LINE上での口論が殺人のきっかけとなったわけです。LINEのせいではないにしても、あたかもLINEが青少年にとって有害であるかのような報道が続きました。こうしたことから、LINEとしてもセキュリティや未成年保護になんらかの対策を示す必要があった。それが18歳未満の利用制限につながった」

実は「新しいSNSが登場するたびに同じような問題が繰り返されている」とITジャーナリストの新清士(しんきよし)氏は指摘する。

「2007年にDeNAの『モバゲータウン』でも、トラブルが発生して18歳未満のユーザーのメール使用が制限されたり、サイバーエージェントが同社のアバターサービス『アメーバピグ』で2012年に15歳以下の利用制限を行なうようになりました。このときも大人と未成年者との“出会い系化”の問題が起きていた」

つまり、LINEはメジャー化したSNSが避けて通れない問題に直面しているといっていい。その答えが、今回全キャリアで実施される利用制限なのだ。



■ID検索利用制限では援交を止められない!

果たして、「18歳未満のID検索利用制限」が実施されると、LINEを使った18歳未満援助交際を抑止できる効果はあるのか? 詳しく検証する前に、そもそもLINEを使った援助交際がどのようにして成立するのかカンタンに説明しておこう。

まず“商談”を望む男女が、LINEで取得したIDをLINE非公認の掲示板サイトやアプリに公開して、「場所や時間、自己アピール」などを書き込む。その書き込みを見て“交渉”を希望すれば、公開されたIDを元にLINEでID検索して、一対一の交渉へと進むのが基本パターンとなる。この基本を踏まえた上で、18歳未満のID検索利用制限が実施されると、ナニが起きる?

「よく『援交する連中は掲示板でIDをさらすから、ID検索機能の利用制限をしても無意味』って否定的な人がいるけど、あれってID検索機能を使ったことがない人。だって、相手のIDがわかっていてID検索機能を使うことで初めて相手にたどりつける。いわばIDはカギで、ID検索機能はドアのカギ穴。カギがあってもカギ穴がなければ、永遠にドアは開かない。だからID検索機能利用制限が実施されればIDを使った援助交際は減る。でも、IDを使わなくても、LINEで見知らぬ相手とつながる方法はある」

とは、LINE援交に詳しい釣果報告会代表のREM氏。気になるのはID以外の方法。特別な裏ワザが何かあるってこと?

「いやいや、裏ワザでもなんでもない! IDよりもカンタンにつながれるって理由で、掲示板に『LINEユーザURL』(以下、URL)を書き込んでいる人が増えています。LINEユーザーのほとんどは自分のURLなんて知らないと思うけど、自分のQRコードからカンタンにURLはわかります。これがIDの代わりになる。今後、ID検索ができなくなれば、生活がかかっている援交少女は間違いなくURLを使う。それに、そもそもスマホユーザーの6割以上はiPhoneを使っていて、そちらはまだ利用制限もないし、今すぐ援交が終わるわけがない」(REM氏)

ID検索機能利用制限だけでは、未成年の援交は止められないという声。ならば、URLも利用制限すべきじゃないのか?

「しかし今後、LINEがプライバシー問題を細かく設定するような機能を付加して複雑化していくと、フェイスブックが陥ったような罠にハマってしまう可能性もあります。ご存じのとおりフェイスブックは機能が複雑化したために、とっつきにくいものになってしまった。その結果、メッセージングサービスとか動画共有サイトは匿名で遊べるアプリにシフトしている」(前出・小川氏)

爆発的にユーザーを増やしたLINEだが、これからユーザー人気と社会的責任を両天秤にかけたビミョーな舵取りが要求されることになりそうだ。

(取材・文/鈴木英介)

ついに全キャリアが18歳未満のID検索機能利用制限を実地することになったLINE