緊急事態宣言が解除され、経済活動が再開されたら一段落……そんな安心感は幻想にすぎない。経済対策の効果が切れ、企業の体力が尽き、大量の失業者が生まれる「雇用崩壊」はむしろこれから本格化する。リーマンショックはるかに超える「コロナ氷河期」。その最悪のシナリオと生き残る術を探っていく。

◆すでにコロナ氷河期の真っただ中にいる「非正規労働者」

 秋冬以降にリストラ、倒産、失業の波が押し寄せるコロナ氷河期だが、「非正規労働者の元には、すでに氷河期が訪れている」とは労働相談に取り組むNPO「POSSE」代表の今野晴貴氏。

「連携する『総合サポートユニオン』と合わせて年間1500件ほどの労働相談に対応してきましたが、今年は2~5月末までにすでに約3000件の相談がコロナ関連だけで寄せられています。主な相談は『休業手当関連』『解雇・雇い止め』『3密下での危険な労働』の3点。相談者で最も多いのは40代の女性で飲食や観光といったサービス業が中心ですが、必ずしもそれだけというわけではなく、幅広い業種・年代に影響が出ています」

 同じく生活困窮者を支援するNPO「生活サポートセンター・もやい」にも相談が殺到していると同NPO理事長の大西連氏。

「4~5月にかけて直接の相談が400人、電話・メールを合わせれば約1000人が生活困窮を訴えてきました。相談日や窓口を倍近くに増やして対応しましたが、こちらも人員的にはギリギリです。相談者はリーマンショックのときは製造業が中心でしたが、今回は業種も年代もさまざまですね」

 5月25日緊急事態宣言が全面解除されて以降は、一段落したのだろうか?

「休業申請については、一時に比べれば落ち着きましたが、コロナ以前のようには働けない。今度はシフトを減らされたり、給与をカットされたという相談が増えています。もともと非正規労働者には経済的な余裕がありませんから、死活問題です」

 想定外の事態に国の支援も瀬戸際だと大西氏。

厚労省の貸付事業に携わる全国社会福祉協議会の発表によれば、生計維持の特例貸付が始まった3月25日5月30日までの時点で約38万件の申請がありました。東日本大震災が起こった’11年の一年間の申請件数が約7万件。今回は2か月で5倍以上の申請があったことになります」

◆最悪、借金を抱えながら生活保護

 この貸し付け、無利子ではあるが返済の義務がある。

「ですから、もし第2波が来た場合は最悪、借金を抱えながら生活保護を受けることになる。企業も限界で、社会福祉の現場も限界。今後、リストラや倒産などで非正規労働者だけでなく正社員にも生活困窮の波が押し寄せれば、社会福祉が崩壊するのではないかという危機感があります」

 福祉の現場はすでに手いっぱい。正社員が凍りつく頃には、受け皿が粉々になっている可能性もある。

POSSE代表 今野晴貴氏】
ブラック企業対策プロジェクト共同代表。著書『ブラック企業』で大佛次郎論壇賞を受賞。新著に『ストライキ2.0 ブラック企業と闘う武器』(集英社新書)

【自立生活サポートセンター・もやい 大西連氏】
同NPO理事長。’10年よりもやいの活動に参加し、’14年より現職。新宿ごはんプラス共同代表。著書に『絶望しないための貧困学』(ポプラ社)など

取材・文/藤村はるな、谷口伸仁、藤野綾子

―[コロナ氷河期の衝撃]―