先生から毎週送られてくる宿題を姉のアリッサさん(右、20歳)に見てもらうアレンくん(左、13歳)。(フィリピン、2020年8月10日撮影) (C) UNICEF_UNI358482_Hogsholt
【2020年8月27日 ニューヨーク 発】

世界各国が学校再開に向けて取り組んでいるなか、ユニセフ(国連児童基金)は本日新しい報告書を発表し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって学校が休校になっているとき、世界の学齢期の子どもの少なくとも3人に1人、4億6,300万人が遠隔学習を利用できなかったと述べました。

COVID-19によって学校が休校になった子どものうち、少なくとも4億6,300万人にとって、遠隔学習に該当するものは存在しませんでした。教育が何ヶ月にもわたって完全に中断された子どもたちの数自体が、世界的な教育危機のあらわれです。その影響は、今後何十年にもわたって経済や社会に影響を及ぼす可能性があります」と、ユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアは述べました。

全国的にも地域的にも封鎖が行われていた時期には、15億人近くの子どもたちが休校の影響を受けていました。遠隔教育の利用状況に関する本報告書は、遠隔学習の課題について概説し、アクセスにおける深い格差を浮き彫りにしています。
学校が休校になり、毎日ラジオを通じて小学3年生の授業に取り組む10歳の子ども。(ルワンダ、2020年4月撮影) (C) UNICEF_UNI319830_Kanobana
報告書では、100カ国のデータを用いて、就学前教育、小学校、中学校、高校に相当する子どもたちの遠隔学習に必要な家庭用機器やツールの利用可能性について、世界的な分析を行っています。これには、テレビ、ラジオ、インターネットへのアクセスや,休校時にこれらのプラットフォームで配信されるカリキュラムの利用可能性に関するデータが含まれます。

報告書にある数値は、休校中の遠隔学習が不足していることを示していますが、ユニセフは、状況はこれよりもはるかに悪い可能性が高いと警鐘を鳴らしています。たとえ、子どもたちが自宅に機器やツールを持っていたとしても、家の手伝いを求められたり、仕事を強いられたり、また学習環境が悪いこと、オンラインや放送のカリキュラムを利用する際のサポートがないことなど、家庭内のさまざまな要因によって、これらのプラットフォームを介して遠隔学習ができていない場合もあるのです。

報告書では、地域間の著しい格差を強調しています。サハラ以南のアフリカの学齢期の子どもが最も影響を受けており、全生徒の半数が遠隔学習を利用できない状況にあります。

地域/遠隔学習にアクセスできない学齢期の子どもの割合(%)/遠隔学習にアクセスできない学齢期の子どもの人数
  • 東部・南部アフリカ      49% 6,700万人
  • 西部・中部アフリカ      48% 5,400万人
  • 東アジア太平洋地域     20% 8,000万人
  • 中東・北アフリカ       40% 3,700万人
  • 南アジア           38% 1億4,700万人
  • 東欧・中央アジア       34% 2,500万人
  • ラテンアメリカ・カリブ海諸国  9% 1,300万人
  • 世界全体            31% 4億6,300万人

報告書によると、最貧困世帯や農村部に暮らす学齢期の子どもは、休校中に学習を中断する可能性が圧倒的に高くなっています。世界的に見ても、遠隔学習を利用できない学齢期の子どもの72パーセントは、その国の最貧困世帯の子どもです。高中所得国では、最貧困世帯の子どもが、遠隔学習にアクセスできない生徒の最大86パーセントを占めています。世界的には、遠隔学習にアクセスできない学齢期の子どもの4分の3が農村部に暮らしています。

報告書はまた、年齢層によってアクセス率に差があり、学習や成長の最も大切な時期に遠隔学習を利用できない可能性が最も高いのは、最も年齢の低い生徒たちであることも指摘しています。
  • 就学前教育の年齢の子どもの約70パーセント、1億2,000万人がアクセスできないのは、主に幼児向けのオンライン学習には制限や様々な課題があり、この教育カテゴリーの遠隔学習プログラムもそのための家庭での機器も不足していることなどが原因です。
  • 小学生の少なくとも29パーセント、2億1,700万人がアクセスできません。また中学生の少なくとも約24パーセント、7,800万人がアクセスできません。
  • 高校生については、遠隔学習の機会を逃す可能性が最も低くなっています。少なくとも約18パーセント、4,800万人の子どもが遠隔学習を利用するための機器を持っていません。
ニューヨークの自宅で、遠隔による「放課後学校」の美術教室に参加する9歳のヨランダさん。(米国、2020年4月撮影) (C) UNICEF_UNI320492_Elias
ユニセフは各国政府に対し、封鎖を緩和し始める際には、学校の安全な再開を優先するよう促しています。もし再開が不可能な場合には、政府に対し、失われた指導時間の代わりとなる学習を、学校の継続・再開の計画に組み込むよう求めています。学校再開に関する政策と実践には、特に置き去りにされた子どもたちのために、遠隔学習を含めた教育のアクセス拡大が含まれなければなりません。また、教育システムは、将来の危機に耐えられるように適応し、構築されなければなりません。

学校の再開に向けたガイドラインは、ユニセフユネスコ(国連教育科学文化機関)、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、世界食糧計画(国連WFP)、世界銀行と共同で発表したもので、国や地方自治体に向けた実践的なアドバイスを提供しています。本ガイドラインは、政策改革、資金調達の要件、安全な運営、代替学習、福祉と保護、最も置き去りにされた子どもへの支援などに焦点を当てています。

ユニセフは、COVID-19パンデミックが子どもたち、特に最貧困層や最も弱い立場にある子どもたちにとって続く危機を悪化させないようにすることを目的とした「再創造 (Reimagine)」キャンペーンの一環として、デジタル・ディバイドの格差を埋め、すべての子どもたちが遠隔学習を利用できるようにするために、緊急の投資を呼びかけています。

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注記:
  • 本分析は、「ユネスコユニセフ・世界銀行によるCOVID-19休校に対する国の教育への対応に関する調査」(UNESCO-UNICEF-World Bank Survey on National Education Responses to COVID-19 School Closures)の結果を使用しています。放送メディアやインターネットが「潜在的に到達している」子どもの数は、家庭での関連機器(テレビ、ラジオ、インターネット)の利用可能性に基づいており、子どもたちが実際に利用している数を示しているわけではありません。従って「潜在的に到達している」子どもの数は、「実際に到達している」子どもの数の実態の上位推計値となっています。信頼できるデータがないため、教材など紙ベースのカバー率は考慮されていません。
  • 本分析では、学校外の子どもたちには焦点を当てていません。就学前の子どもに関する最新のデータについては、ユニセフの基幹報告書『世界子供白書2019』をご覧ください。

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■ 学校の再開に向けたガイドラインは以下のURLからご覧いただけます。
https://www.unicef.or.jp/news/2020/0107.html

■ 世界子ども白書2019は以下のURLからご覧いただけます。
https://www.unicef.or.jp/library/

新型コロナウイルスに関するユニセフの情報はこちらからご覧いただけます。
特設サイト: https://www.unicef.or.jp/kinkyu/coronavirus/
各種ガイドライン: https://www.unicef.or.jp/kinkyu/coronavirus/info/

ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。(www.unicef.org)
ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。(www.unicef.or.jp)

配信元企業:公益財団法人日本ユニセフ協会

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