車道の左側に整備された自転車レーンは、結局、路上駐車のクルマで通れなくなるという声も聞かれます。そうした心配が少ない新タイプの自転車レーンが東京に登場しており、「日本一快適な自転車レーン」との声もあります。

路上駐車帯が自転車レーンの右側に! 邪魔されず通れる!

2010年代以降、車道の左側に自転車専用レーンが設けられるケースが増えてきました。そうしたなか、東京都文京区で新しいタイプの、というより、ありそうでなかったタイプの自転車レーンが登場しています。

文京区内を南北に貫く白山通り(都道301号白山祝田田町線)の一部などでは、車道の左端に設けられるパーキングチケット方式の路上駐車帯が、やや右側に設置され、そのあいだに青い舗装の自転車レーンが連続的に整備されているのです。2020年8月現在、この方式は白山通りのうち都営三田線千石駅から春日駅にかけての1.7kmほどと、小石川後楽園の北側を通る都道434号牛込小石川線のうち約300m区間で見られます。

車道の左側に設けられた自転車レーンをめぐっては、路上駐車のクルマによって自転車が通れなくなるという声もよく聞かれますが、上記の区間では路上駐車帯のクルマはもちろん、駐車帯以外のスペースに停めているクルマも、自転車レーンを侵さずに停めている光景が見られました。また、7月には牛込小石川線自転車レーンをツイッターで「日本一快適な自転車レーンがあった」と紹介したツイートが話題にもなっています。

文京区内のこれら都道を管理する東京都第六建設事務所によると、白山通りの路上駐車帯を移設しての自転車レーンは2019年度に、牛込小石川線は2020年度に入ってから整備したものだそう。これ以前、品川駅港南口付近の都道で400mほど先行的に整備された事例はあるものの、1km以上のまとまった区間で整備されたのは白山通りが初めてだそうです。

今後、この方式の自転車レーンは増えていくのでしょうか。

自転車乗りには快適? 異論も

東京都第六建設事務所によると、今回の方式が今後のスタンダードになるわけではないといいます。自転車レーンは場所ごとの実情に合わせ、交通管理者である警察と協議しながら整備しているとのこと。白山通りや牛込小石川線の路上駐車帯は以前から存在し、その需要もあることから、自転車レーンの外側(車線側)に移設する形で整備したのだそうです。

いずれの区間も、道路の幅が広いからこそ可能だったといいます。既存の道路幅を拡げることなく整備したそうですが、一部、中央分離帯を削ってスペースを捻出した箇所もあるそう。

ただ、この路上駐車帯を移設しての自転車レーンについては、異論もあるといいます。

たとえば、自転車が通っているとき、駐車帯に停まっているクルマの助手席側の扉が開く恐れがある、駐車してから歩道へ移るときに自転車レーンを横断しなければならない、といったことに、危ないという意見があるとのこと。白山通りなどではこれまで事故は報告されていないものの、ほかで整備事例がほとんどないこともあり、動向を注視しているそうです。

ただし、路上駐車帯が移設された区間でも、バス停についてはやはり、自転車レーンに乗り入れて停車するようになっています。また、同じ白山通りでも路上駐車帯がない区間では、青い舗装の自転車レーンに乗り入れて路上駐車しているクルマも見られました。なお一部の交差点付近など、構造的に自転車レーンが延ばせず、途切れてしまうところもあるそうです。

ちなみに、クルマが左折する際は原則的に、交差点の手前で道路の左端へ寄っておく必要がありますが、自転車レーンをまたぐべきか否かは、場所ごとに異なるといいます。路面標示にしたがって通行してほしいそうです。

牛込小石川線の一部では路上駐車帯が自転車レーンの右側に移設されている(2020年8月、中島洋平撮影)。