今季のバロンドール選出が見送られ、レバンドフスキはチャンスを逃す

 今シーズンの欧州サッカーは23日のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)の決勝で幕を閉じた。新型コロナウイルスの感染拡大でイレギュラーなシーズンになったことは様々な影響があり、その一つに最高級の名誉である個人賞「バロンドール」の選出が今季は見送られることがある。

 それを受けてイタリアサッカー専門メディア「カルチョメルカート・コム」は、今季に関してはCL優勝の原動力となったバイエルン・ミュンヘンポーランド代表FWロベルト・レバンドフスキが受賞すべきだったと指摘。レバンドフスキに関しては「CLで15得点、ブンデスリーガで34得点、ドイツ杯で6得点を挙げた、現代で最高の9番」として、絶賛している。そして、彼を含む「バロンドールに値したが受賞経験のない10人」を特集した。

 イタリアメディアらしく最初に名前が挙がったのは、元ACミランイタリア代表でも長らく活躍したDFパオロ・マルディーニ。「世界最高のサイドバックだったのは疑いようがないが、最高は1994年のアメリカW杯が終わった後の3位だった」と言及。全体的に攻撃的な選手が有利な個人賞であるだけに、そうした厳しさもあった。

 そして、現在はヴィッセル神戸プレーする元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタもピックアップ。バルセロナの好成績のシーズンにはリオネル・メッシの陰に隠れたことが理由で、2010年の南アフリカW杯の優勝後もメッシに次ぐ2位だったと紹介している。

 年代の遡ったところで、現在は国際サッカー連盟FIFA)の年間での芸術的なゴールに与えられる賞に名前を残す、元ハンガリー代表FWフェレンツ・プスカシュの名前も挙がった。マジック・マジャールと呼ばれた最強チームの中心選手だったが「バロンドールとは、その瞬間に最強と思われた人物が受賞する」として、シーズンごとの個人賞の厳しさに触れた。

 そしてGKでは、元イタリア代表ジャンルイジ・ブッフォンをピックアップ。イタリア代表が優勝した2006年ドイツW杯のシーズンはDFファビオ・カンナバーロが受賞した次点の2位だった。「世界のサッカー界で、歴史上でトップ5に入るGKなのは間違いない」としている。

94年までは欧州の選手しか選出されず、マラドーナも受賞経験なし

 また、長年にわたってクラブと代表チームで活躍したアーセナルなどでプレーの元フランス代表FWティエリ・アンリにも言及。1998年フランスW杯、2000年欧州選手権で優勝したチームの中心的存在だったが、受賞する機会には恵まれなかった。

 強烈な中心選手の陰に隠れた存在としては、レアル・マドリードスペイン代表DFセルヒオ・ラモスが挙がっている。長年ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドレアルのタイトルとセットで受賞したことを指摘し、「気の良い友人という感じには全くならないプレーヤーだが、戦術的な面も含めて必要な厳しさがある」と、プロフェッショナルファウルも厭わないスタイルを評価している。

 メッシロナウド両選手の陰に隠れたアタッカーとされているのが、元スウェーデン代表FWズラタン・イブラヒモビッチだ。「最高成績は2013年の4位だったが、ここ10年、20年で最強のストライカーの1人」としている。

 イタリア人ではさらに“マエストロ”と呼ばれたプレーメーカーのアンドレア・ピルロの名前もある。06年ドイツW杯の優勝や、07年のCL制覇の実績などもあり「ここ20年でイタリア人では最上級のタレント」とされたものの、この個人賞には縁がなかった。

 最後は、アルゼンチンレジェンドにしてサッカー界で永遠の問題児とも呼ばれるディエゴ・マラドーナ1986年メキシコW杯で優勝しているが、94年までのバロンドールは欧州の選手にしか渡らなかった。その変化が起こったころのマラドーナは、ピッチ外の問題も多くプレーヤーとしてはほぼ終わっていたことで、縁がなかった。

 近年はメッシロナウドが分け合ってきた印象の強いバロンドールだが、こうやって受賞を逃してきた世界的な名手もいる。それだけに、今季の賞がなくなったことはレバンドフスキのキャリアで痛恨の出来事なのかもしれない。(Football ZONE web編集部)

(左から)イブラヒモビッチ、イニエスタ、マラドーナ、アンリ【写真:Getty Images 高橋 学】