4気筒から6気筒のMまで多様なエンジン
BMW Z3よりひと回り大きく、3倍のボディ剛性を誇りながらも、ほぼ同等の車重を実現していたBMW Z4。デザイナーのクリス・バングルによる、明快なスタイリングも特徴だった。
ドライビングポジションは大幅に改善され、クリーンでモダンなインテリアからは、高品質さも感じ取れる。全体的に上級志向となり、先代のZ3ほどの台数は売れなかった。
6年間で登場したエンジンは、2.0Lの4気筒のほか、2.2Lと2.5L、3.0L、3.2Lの直列6気筒と幅広い。アルピナ版では3.4Lが搭載されている。オプションも多彩で、幅広い間口を持つモデルだった。
購入するなら、エンジンやオプションの内容には気をつけたい。まれに理想的なグレードのZ4を、安価に入手できることも。
スタイリッシュで実用性を高めた、高性能なクーペも遅れて登場。ロードスターより若干硬めのサスペンションを備える。需要に対して流通量は少なく、価格は高めで取引されている。Z4シリーズの中でも頂上を飾るのは、Z4Mだ。
アルピナからもロードスターSが登場。3.4Lの直列6気筒にアルピナ製ホイール、特製のインテリアにボディキット、サスペンションなどを装備する。
コレクターズアイテムとして、今後値上がりの可能性も考えられる。今のところ、アルピナ・ロードスターSは、Z4Mより安価傾向にはある。
英国では製造年によって税率が変わる。日本でも登録から13年を過ぎると、税率が上がるので注意したい。
ソフトトップ開閉用モーターには注意
Z4は快活な動的性能を備えている。乗り方に合ったエンジンを選びたい。排気量が小さいエンジンは、大きいエンジンより遅いだけ。BMWとして自慢したいなら2.5Siくらいは欲しいが、ゆったり週末ドライブを楽しむなら、小さいエンジンで充分だ。
Z4の2.2Lエンジンは、M54と呼ばれる直列6気筒。2006年のフェイスリフトでN52に置き換わっている。
Z4には、バイワイヤー式のスロットル、トラクションとスタビリティ・コントロールなど、数多くの電子機器が搭載されている。オプションで、ドライブモードをスポーツとコンフォートで切り替えることも可能だった。
BMWとして、電動パワーステアリングを初採用したモデルでもある。ソフトトップは完全な電動式で、手でロック解除する手間もない。開閉は10秒以下で完了する。
残念なことに、このソフトトップを開閉するモーターは、雨水のドレインエリアに搭載されている。ドレインが詰まると、雨水でモーターも水に浸かってしまう。
Z4には愛好家も多く、修理や整備の情報も手に入りやすい。クラシックモデルとして、評価を支える環境ができているともいえる。
2006年にフェイスリフトを受け、電子機器類の装備も充実した。後期型のZ4の方が価値は高め。選ぶなら直近の数年間、愛情が注がれてきたかどうかの方を重視したい。
BMW Z4の中古車 購入時の注意点
まずは整備記録を確かめる。ダイアグノーシスによるコンピューター診断で、過去の履歴がしっかりわかる。定期的な整備が重要。保証内でシリンダーヘッドやリフターの交換がされている例もある。当面は安心だろう。
同年式のBMW製サルーンと比べれば、走行距離は短め。ただし、手入れがしっかしされてきた走行距離が長めのクルマも、選択肢としては悪くない。
フェイスリフト前のM54エンジンは信頼性が高いものの、吸気量を調整するDISAバルブなどが不具合を起こすことがある。ミスファイアやパワー低下といった症状が出たら、修理が必要。比較的簡単で、自分での交換も可能だ。
バノスシールに不具合が起きてもパワーが落ちる。シール自体の価格は安い。
フェイスリフト後、Mを除く6気筒エンジンはN52型へスイッチ。エンジンオイルの量を調べるディップスティックがなく、メーターパネルからのチェックのみとなった。
電動ウォーターポンプは、9万kmほどが交換時期。費用は安くなく、放置するとオーバーヒートにもつながる。
トラクターのような大きな音が出る、油圧リフターのノイズも悩みどころ。エンジンが温まれば止まるし、ダメージをもたらすことはないものの、修理は高い。
Z4Mが搭載するのはS54型ユニット。定期的にバルブクリアランスの確認が必要。コンロッド・ベアリングやボルト類も交換が必要になることも。異音がある場合は注意したい。ベアリングの交換は、英国では1500ポンド(20万円)程度の費用がかかる。
ヘッドガスケットやエンジンマウント、タイミングチェーンのガイドやバノスフィルターの交換履歴も確かめておきたい。
不具合を起こしやすいポイント
ソフトトップ
ソフトトップ自体の状態と動きを確かめる。雨水の排水口が詰まると、モーターも水に浸ってしまう。対応策として、モーターをトランク内に移動するという手法がある。
ボディ
リアフェンダーは、ホイールアーチ裏側やバンパー付近で錆びやすい。多くがフェンダーのどこかで錆びている。クーペの場合、リアハッチが錆びることも。
ドアハンドルがスムーズに動くかを確かめたい。ハンドルの樹脂が劣化したり、ケーブルが摩耗して切断や固着することがある。
エンジン
M54型ユニットの場合、ミスファイアはDISAバルブの交換で治る。N52型ユニットの場合、エンジンオイル不足で油圧カムリフターから異音が出る場合がある。クーラント・タンクからの液漏れにも注意したい。
電装系
電気系統が正常に動くかを確かめる。特にパワーウインドウや集中ドアロックなど。メーターパネルの警告灯にも気をつけたい。
ステアリング
Mモデル以外のパワーステアリングは、電動式。操舵時に違和感がある場合は、調整で治ることがある。まれに、モーターやラック自体の交換が必要になることも。
ホイールとサスペンション
ホイールのガリ傷や変形、タイヤの製造年や残り溝を確認する。リア・サスペンションのスプリングは、折れることがある。安定性の悪さは、サスペンション・ブッシュが原因。
インテリア
シートのヘタリや摩耗を確かめる。特に運転席側のサイドサポートは傷む。カーペットが湿っている場合、電子機器に不具合を与えるので要注意。
英国で掘り出し物を発見
BMW Z4 3.0 登録:2003年 走行:15万2000km 価格:3850ポンド(51万円)
安価で高性能。市場では需要の少ない、MT車という点も魅力。仕様も悪くなく、走行距離は16万km以下で妥当。231psの3.0Lロードスターで、大径のアルミホイールに赤いレザーシート、キセノン・ヘッドライトも備わっている。
近年主要な整備を受け、タイヤも新品。この内容なら、魅力的な価格だ。
オーナーの意見を聞いてみる
生粋のクラシックカー・ファン、ゲイリー・ロスが昨年購入したのが2.2LのBMW Z4。「5000ポンド(67万円)以下で低走行距離の、週末ドライブ用のクルマを探していたんです」
「ローテクな、モダン・クラシックが希望でした。電動シートや、大きなモニターなどがないクルマ。手頃なボクスターは、走行距離が多いものがほとんど。Z4ではクーペが欲しかったのですが、値段が高いか手入れが悪いか、どちらかでした」
「このZ4は、走行距離3万kmほどの2オーナー車。整備記録もしっかり残っています。2人目のオーナーはガレージに入れっぱなしだったようですね。2.2Lエンジンは扱いやすく、妻も喜んで運転しています。スペアパーツも入手しやすい方でしょう」
「オリジナルのまま、長く乗りたいと考えています。ホイールは16インチの方が、乗り心地は良いです。ソフトトップ用モーターは、トランク内に移設する予定です。外に停めていますから」
まとめ
BMW Z4は実用的で楽しい。車内は広く、スタイリッシュで日常的にも乗りやすい。エンジン次第でリラックスしたクルージングから、本気のドライブまで幅広く楽しめる。
しっかり整備されてきたクルマを選びたい。高性能モデルは、サーキット走行で高い負荷がかけられてきた可能性もある。
様々なスペックやオプションが選べたから、時間をかけて調べるのが良いだろう。後々後悔しないためにも、自分の理想に近いクルマを探したい。
良いトコロ
とても乗りやすいスポーツカー。本格的なサーキットマシンからカスタムカーまで、オーナーの思い通りに楽しめる。修理用部品も手頃で、整備環境も比較的整っている。
良くないトコロ
メンテナンスが悪いと、エンジンの弱点が顔を出すことも。ボディの錆も、悩みどころ。
BMW Z4/Z4 M(2003年〜2009年/英国仕様)のスペック
価格:新車時 2万2945〜4万2795ポンド
生産台数:18万856台(E85)/1万7094台(E86)
全長:4091-4113mm
全幅:1781mm
全高:1287-1299mm
最高速度:220-249km/h
0-96km/h加速:8〜4.8秒
燃費:5.3−12.4km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1295-1465kg
パワートレイン:直列4気筒1995cc/直列6気筒2171-3246cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:150ps/6200rpm-342ps/7900rpm
最大トルク:20.4kg-m/3600rpm-37.1kg-m/4900rpm
ギアボックス:5速、6速マニュアル/6速AT
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