電車、国、軍艦、パンツ……もう擬人化されてないものはないのではと思えるほどの、なんでもかんでも擬人化ブーム10月2日に発売された『ギャルゲー探偵と事件ちゃん』(とよたかゆき、染谷みのる/講談社)では、「事件」まで擬人化してしまったのだ。ギャルゲー大好きな高校生主人公・谷口弥人には、さまざまな事件を擬人化し、その事件そのものと対話する能力があるという。彼は、どんなふうに事件を擬人化して解決していくのだろう?

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 そもそも、事件ちゃんとは「事件を取り巻くありとあらゆる概念の集まり」で、弥人は「事件ちゃんと会話や推理を進めていく」ことによって事件の解決を図るのだ。彼の能力は、「生まれ持った探偵の素質」と「人間ではない女性キャラクターに対する行き過ぎた執着心」があいまって生まれた特殊能力。それを使って最初に擬人化するのは、あるホテルで起きたユイネラという高級ネックレスの消失事件。弥人が事件の起きた部屋で「おーい、事件ちゃーん」「出ておいでー」と呼びかけると、現れたのは金髪ツインテール。青い瞳と白いワンピースのようなドレスが似合う美少女

 そして、彼女の胸元にはユイネラが輝いていた。「あたしは自分で言うのもなんだけどかなりの難事件よ。あんたみたいな冴えない男に解決なんてできるのかしら?」と高飛車な言い方をする彼女だったが、事件について思ったことや気づいたこと。ユイネラを部屋から消し去ってしまったトリックについて話していると「あんた、ホントに鋭いのね」とか「…いいえ、駄目ね」「残念だけどまた不正解ね」とヒントを与えながら協力してくれる。そして、見事事件を解決すると、その象徴である事件ちゃんは消えてしまうのだが、消える直前、この事件ちゃんは急に弥人に飛びつき「ありがと、弥人」と言って彼の頬にキスしたのだ。こんなツンデレ美少女と会話ができて、さらにキスのプレゼントまであるなら、どんな探偵も俄然やる気が出るはず。

 また、声優の花町なくるに脅迫状が届いた事件のときには、真っ白な猫の着ぐるみパジャマを着た事件ちゃんが登場する。話し方も「にゃんだお前は」といった感じだし、弥人をソファーに座らせると勢いよく膝に飛び乗って「うにゃん!」と鳴く。まさに、猫がそのまま人間になったような事件ちゃんなのだ。だから、的外れな推理を披露して彼女を怒らせると「ふにゃーっ!」と叫びながら腕に噛みついたり、暴れたりする。でも、弥人が推理に行き詰ると「弥人、どした? もうあきらめるのか? ダメだ、がんばれ。おまえならきっとわたしの大好きななくるを助けることができるはずだ」と必死に応援してくれるのだ。ここまで自分を頼りにしてくれるなら、なにがなんでも事件を解決するしかない!

 そして、将棋のタイトル戦で不正疑惑があったときの事件ちゃんは、前髪ぱっつんの艶やかな長い黒髪。赤いエリカの花びらをイメージした髪飾りに、少しアバンギャルドな紅色の着物を着ていた。そして、とにかく将棋がしたいと言う彼女の提案で、1回の対局が終わるごとに推理に付き合う。もし事件ちゃんに勝てたら、特別に大ヒントももらえるという条件で推理を始めるのだ。途中、どうしても推理に集中したくて弥人が将棋に付き合ってくれなくなると、なんと事件ちゃんが「次の対局で、もし探偵さんが私に勝つことができたら、私は今着ているこの着物を脱いで裸になります」と宣言しだす。ここまで来ると、なんだか事件を解決して事件ちゃんを消してしまうのがもったいなくなりそうだ。

 たしかに、ギャルゲー好きならあらゆるパターンシミュレーションしている。さすがに本当に事件を擬人化するのは無理でも、もしかしたら頭の中で事件を擬人化し、妄想で対話するくらいならできるのかもしれない。本当に弥人のようなギャルゲー好きの探偵が現れれば、未解決のまま迷宮入りする事件はなくなるかも!?

文=小里樹
ダ・ヴィンチ電子ナビより)

『ギャルゲー探偵と事件ちゃん』(とよたかゆき、染谷みのる/講談社)