米大統領選挙の投票日(11月3日)まで2カ月ほどあるが、すでに民主党ジョー・バイデン候補(77)は当選した場合を想定した動きに入っている。

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バイデン政権」の組閣人事である。

 バイデン氏の当選がこの時期に約束されているわけではもちろんない。ただ新大統領が誕生した場合、当選から新政権発足(翌年1月20日)までに閣僚だけでなく、各省庁の主要ポストを決めなくてはいけない。

 過去の大統領選の事例を眺めると、この時期から組閣に動くことは珍しいことではない。

 米国は政治任用制をとっているため、中間管理職の交代も含めると、政権交代のたびに数千もの連邦職員が入れ替わる。

 すべての人事が終わるのは新政権発足から1年以上が経った後になることも珍しくない。

 現時点でのバイデン政権の人事は、複数の情報を総合しても大まかな形しか見えてこない。だが民主党内では確実に新政権発足の陣容が語られ始めているので、分かる限りの顔ぶれを記したい。

 ワシントンから伝わってくるのは、バイデン氏が当選した場合、新政権はフランクリン・ルーズベルト大統領以来、最も進歩的な政策を敷くであろうということだ。

 増税を含めて、左派的な政策が強まると予想されている。

 そんな中、日本の外務大臣にあたる国務長官の筆頭候補に、スーザンライス元国連大使(55)の名前が挙がっている。

 ライス氏は国務省の官僚も経験していることから、国務長官以外でもホワイトハウス内の国家安全保障会議(NSC)議長か首席補佐官に据える案も出ている。

 そして経済分野のトップである財務長官には、今年の大統領選挙でバイデン氏のライバル候補の一人だったエリザベス・ウォーレン上院議員(71)が有力視されている。

 ウォーレン氏はもともとロースクール出身の弁護士だが、破産法専門の学者であり、商法や消費者金融にも精通した政治家である。

 司法長官候補としては公民権・人権リーダーシップ会議のヴァニタ・グプタ会長(45)の名前が出ている。

 バイデン氏の選挙戦での思想的中核とも呼べる「国家の魂」を救うという考え方に深く同意できる人物との見方である。

 グプタ氏はバラク・オバマ政権では司法次官補代理の立場から、人種問題や警察関連の問題を統括してきた経験ももつ。

 国防長官にはミシェル・フロノイ元国防次官(59)が有力視されている。

 オバマ政権時代の国家安全保障政策の策定に深くかかわった人物で、周囲からの評判も極めて高い。中道派の国防長官になると目される。

 ハーバード大学卒業後、英オックスフォード大学で修士号を取得し、4年前にヒラリー・クリントン氏が選挙に勝った時には、フロノイ氏が国防長官に抜擢されるとの話もあった。

 カレン・バス下院議員(66)の去就も注目されている。

 バス氏は黒人議員連盟の会長を務めており、バイデン氏の副大統領候補の一人に挙げられていた。

 副大統領カマラ・ハリス氏に決まったが、バス氏には保健福祉省(HHS)の長官職が与えられるかもしれない。

 また現ロサンゼルス市長であるエリック・ガーセッティ氏(49)は国政の経験はないが、運輸長官か住宅都市開発長官に充てる話が出ている。

 ガーセッティ氏は今年1月の段階からバイデン氏を支持してきた人物で、副大統領選出委員会のメンバーも務めた。

 興味深いところでは、教育長官に現在ミネソタ州知事であるティム・ワルツ氏(56)を起用する案である。

 ワルツ氏は高校教師出身の教育者で、2006年には連邦下院議員に出馬して当選。以後は政治家として地道に教育分野で尽力している。

 バイデン氏はオバマ政権では副大統領を務め、多くの政策でいまでも「オバマ流」を踏襲しているが、教育については独自の考えを持つ。

 というのも、オバマ氏がデータと評価を重視したのに対し、バイデン氏は学校のインフラに力を入れると同時に教員の賃上げの必要性を唱えている。

 そのうえでワルツ氏の起用を考慮していると伝えられる。

 そしてホワイトハウス内の大統領経済諮問委員会委員長に長年、バイデン氏の経済顧問を務めてきたジャレッドバーンスタイン氏(65)を充てると予想されている。

 同氏はコロンビア大学、ニューヨーク大学で経済政策を教えた経験があり、「労働者の味方」であるとの評価がある人物だ。

 同氏はハリス氏が副大統領候補になった後、バイデン・ハリス両氏に経済問題のブリーフィングを行っている。

 また興味深いところでは、ハーバード大学学長を務めた経験があるドリュー・ギルピン・ファウスト氏(72)を、女性で初めて中央情報局(CIA)長官に据える案も出ている。

 同氏は女性で初めてハーバード大学学長になった人でもある。

 実はファウスト氏はハーバード大学卒でもなければ、同大に一度も在籍した経験がない人物で、それでも学長に就任した。

 専門は米南部史なのだが、切れ者との評があり、「こうした人物こそCIAに必要」との声がある。

 さらにバイデン氏と大統領選を戦ったライバルピート・ブダジェッジ前インディアナ州サウス・ベンド市長(38)を国連大使に任命するという案が出ている。

 30代でありながら大統領選に出馬を果たし、知名度はすでに国外でも高いので適職との見方だ。

 国連大使にならなくとも、民主党の将来の指導者の一人であることは間違いなく、同党としては「将来の大統領」を大切に育てる意向が共有されているようだ。

 中西部の市長から国連大使になることで、世界的な視野と同時に、外交面での経験も蓄積されることで今後の政治家としての幅が広がる。

 ただ同氏には外交経験が皆無に近いため、どれだけ職責を全うできるかが疑問ではある。

 いずれにしても、まだ「バイデン大統領」が誕生したわけではない。

 もしも当選したらという仮定で話を進めてきたが、記した人事は筆者の思いつきではなく、複数の情報源から入手したものである。

 バイデン氏はいま、現職トランプ大統領にいかに勝つかに精力を割いているはずだが、同時に閣僚人事にも気を使っているということである。

 今回の原稿は全くの無駄骨に終わるかもしれないが、読者の方のご参考になればと考えて挙げさせていただいた。

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バイデン政権誕生時には国務長官就任の可能性が高いスーザン・ライス氏(2月20日撮影、写真:AP/アフロ)