ある人との出会いが、自分の人生を救ってくれることがある。

映画リスタートはただいまのあとで』は、そんなかけがえのない出会いを通じて、もう一度歩きはじめる人たちの姿を描いた癒し系ハートウォーミングムービーだ。

都会で挫折し、数年ぶりに故郷へ帰ってきた青年・光臣と、塞ぎ込む光臣に温かく寄り添う大和。ふたりの間に流れる優しい時間に、観る人たちの心も癒されていく。

光臣を演じたのは、古川雄輝。大和を演じたのは、竜星 涼。ふたりはこの映画でどんなものを見つけたのだろうか。

取材・文 / 横川良明 撮影 / 増永彩子

◆お互いが照れ合うところとか少女漫画に近いものもあった。

ーー 映画拝見しましたが、キスシーンが幻想的で美しくて、心に残りました。

【 古川 】 現場に入ったときから、それはすごく感じました。照明部のみなさんがストーブの赤い光をすごく印象的につくってくださって。きっと幻想的に撮りたいんだろうなという監督のイメージが見えたので、僕もなるべく綺麗な感じを出せればなと意識しながら臨みました。

【 竜星 】 僕は眠っている側だったので、いつされるんだろうってひたすらドキドキしていました(笑)。

ーー キスの相手は男性でしたが、何か違いはありましたか。

【 竜星 】 目をつぶっていたので、そこは特に何も感じなかったですけど、唇は柔らかかったです(笑)。

ーー おふたりはこのキスシーンを作品の中でどういう位置付けのものとして捉えて演じましたか。

【 古川 】 あそこは、光臣にとってはただのキスシーンじゃなくて、自分自身の知らなかった部分に気づく場面。すごく重要なところですよね。あとは、この作品に限らずなんですけど、どの映画やドラマでもキスシーンって印象に残るので、しっかり美しく描ければという思いがありました。

【 竜星 】 たぶん大和にとっては、異性が相手だったらまた違う感覚で捉えられたと思うんですよね。でも、相手が同性だから葛藤が生まれた。同性だからこそその後のストーリーがぐっとドラマチックになったのかなと。そういう意味でも、大和にとっては葛藤が生まれるきっかけのシーンだと捉えていました。

ーー まさにこのキスからそれぞれ自分の中にある恋愛感情と向き合っていくわけですが、演じながらその気持ちの流れに寄り添うことはできましたか。

【 古川 】 男女かかわらず人を好きになる気持ちは同じ。そう考えると、光臣が大和を好きになっていくことは共感できました。とくに、大和は光臣とは正反対のタイプ。それでいて、光臣の生き方に深く影響を及ぼしていく。そんなふうに自分とまったく違う人間に惹かれたり、自分に影響を与えてくれた人に心を寄せていくのは、性別に関係なく一緒なんじゃないかなと思いましたね。

【 竜星 】 ふたりはお互いが持っていないものを補い合える関係なんですよね。親の愛を知らない大和にとって、光臣は自分を怒ってくれる唯一の存在。だから、親とは言わないけれど、ある意味それに近いような温かさを感じていて。そういうふたりが、友達から恋人へと変わっていくのは普通のラブストーリーとして起こり得ることなんじゃないかなと思っています。

【 古川 】 はじめにお話をいただいたとき、BLと聞いて、そういう描写が過激に描かれているものなのかなと思ったんです。でも原作を読んでみたら、全然そんなことはなくて、男性同士ではあるけれど、きちんと恋愛を描いていて。お互いが照れ合うところとか少女漫画に近いものもあった。すごく読みやすかったですし、入りやすかったです。

【 竜星 】 人間ドラマなんですよね。人が人をどう好きになっていくのか。その過程が丁寧に描かれている。こういった作品ってお互いを受け入れた先の葛藤がメインになることが多いのかなと思うんですが、この『リスタートはただいまのあとで』はお互いを受け入れて、新しいスタートを切るところがラストになっている。だからこそ、余計に誰しもに起こり得ることのように思えました。

◆田舎暮らしは向いてなさそうです(笑)

ーー おふたりはこの作品で初共演ですよね。

【 古川 】 そうですね。竜星さんはお会いするまでは男らしい方なのかなという印象で。

【 竜星 】 僕は知的でクールな方なんだろうなと思っていました。

ーー そのイメージは、実際にご一緒されてみて、どう変わりましたか。

【 古川 】 イメージ通りではあったんですけど、現場での対応の仕方とかを見ていると、年齢は僕の方が上なんですけど、竜星さんの方が大人なのかなと思いました(笑)。

【 竜星 】 古川さんは現場でもそうですし、撮影が終わってからもよく監督とディスカッションをされていて。思っていた以上に情熱的な方で、すごくいいギャップでした。

【 古川 】 監督とは10年前からの知り合いで。ずっと「監督をしたい」という話も聞いていたので、僕としてもいい作品にしたいなという思いがあったんです。特に今回は光臣という役について僕と監督でイメージが違った部分もあったので、そこについては時間をとってしっかり話し合いをさせてもらいました。

【 竜星 】 僕が監督から言われたのは、髪型ぐらいで。あとはかなり自由にさせてもらいました。原作はあるけれど、やっぱり脚本に起こしていく中で変わるものもいろいろあって。だから、あまり原作に縛られず、映画オリジナルの良さを出せるように大和をつくっていきました。

ーー ロケ地は長野県上田市千曲市。非常にのどかな日本の風景にも心癒されました。おふたりはああした田舎暮らしは向いてそうですか。

【 古川 】 向いていないです(笑)。

【 竜星 】 僕もあまりできないかもしれません(笑)。

【 古川 】 いいなとは思うんです。たぶん田舎に行って最初のうちはこういう暮らしもいいなと思うんですけど、結局刺激を求めて人が多い場所に行きたくなっちゃうと思うので(笑)。

【 竜星 】 僕は両親が山形出身で、おばあちゃん家は農家をやっていたので、小さい頃はよく農作業を手伝ったり、そのへんで遊んだりしていたんです。それこそ今回撮影で行った長野よりずっと田舎でしたし。だから馴染みはあるし、好きですけど、ずっと住むのは……シティボーイなんで(笑)。

【 古川 】 僕もずっと都会にしか住んだことがないんです。だから、田舎暮らしをはじめても、たぶん1週間が限界かなと(笑)。

【 竜星 】 ただ、いいなと思ったのが、今回のロケ地が上山田温泉というところで。ホテルの大浴場にも温泉が流れていたんですよ。僕は友達と温泉に行って、ふわーっとしているのが最高の癒しというぐらい温泉が大好きなので、僕的にはロケ地としてこれ以上ない環境でした(笑)。温泉のある田舎町は最高ですね!

ーー 物語は、挫折した光臣が地元に帰るところから幕を開けます。おふたりが地元に帰りたくなるのはどんなときですか。

【 古川 】 僕はいろんなところを転々としていたこともあって、地元という地元がなくて。地元に帰りたいっていう感覚もないんです。だから地元のある人が羨ましい。「どこ出身なの?」と聞かれたとき、東京以外に答えられると話題が続くじゃないですか。東京だと、「ああ……」で話が終わっちゃうので。地元がもっと違うところだったら話題が続くのになと思っていました(笑)。

【 竜星 】 僕も東京出身なんですけど、地元が都心というよりは緑がわりと多いところだったので、やっぱり帰ると気持ちがリセットされるというか。季節の変わり目なんかは特にいろんな匂いに反応して、自分が学生の頃の思い出とかがふっと蘇ってきたりします。今でも自分にとって都心は仕事に行く場所。地元は心を落ち着ける場所っていう感じなんです。

古川雄輝
ヘアメイク / 赤塚修二(メーキャップルーム)
スタイリスト / 五十嵐堂寿

竜星 涼
ヘアメイク / TAKAI
スタイリスト/ YAMAMOTO TAKASHI

(c) 映画「リスタートはただいまのあとで」製作委員会

古川雄輝×竜星 涼「人を好きになる気持ちは、性別に関係なく一緒だと思った」。映画『リスタートはただいまのあとで』インタビューは、WHAT's IN? tokyoへ。
(WHAT's IN? tokyo)

掲載:M-ON! Press