日本電気株式会社NEC)は、一般財団法人電力中央研究所(電中研)協力のもと、光ファイバセンシング技術とAI技術を組み合わせたシステムを用いて、電柱のひび割れの有無を遠隔で判定する実証実験に成功した。

なお、光ファイバセンシング技術とは、電柱にかかる既存の通信用光ファイバケーブルの片端から光パルスを送信し、微弱な戻り光(後方散乱光)の位相の変化を検出して経路上に生じた振動などの状態変化を測定するというものだ。

精度75%で判定成功!

同実験には、振動波形を遠隔測定できる光ファイバセンシング技術と、振動データを基に解析・分類を行うAI技術を組み合わせた分析システムが用いられた。

しかし、屋外にある電柱に起こる振動には周辺音響や交通振動に起因するものもあるため、これらと電柱に起因する振動を区別する必要がある。そこで、試験対象である電中研の赤城試験センター構内の電柱群の振動特性を事前に調査・設定して実験に臨んだという。

光ファイバセンシング技術で取得したデータを、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」のひとつ「RAPID機械学習」によって構築された振動波形と電柱のひび割れの有無をセットとした学習モデルに照らし合わせ、遠隔での電柱のひび割れ有無の判定を行った。

結果、ひび割れ電柱を遠隔から約75%の精度で判定することに成功したとのことだ。

今後の展開は……

このたびの実証を終えて、電中研のエネルギーイノベーション創発センター上席研究員 中島慶人氏は、同技術が労働人口減少のなかで必須とされる点検作業の効率化に貢献することへの期待を示すと同時に、同センシング技術のさらなる応用可能性についても引き続き検討していくとコメントした。

なお、この取り組みは2020年9月9日~11日に開催される「令和2年 電気学会 電力・エネルギー部門大会」にて発表予定。

両社は今後、より広範囲な構造・材質の電柱へ対象を広げ、さまざまな環境での評価検証と判定制度の向上に取り組んでいくとのこと。

今回の実証成功という結果は、2200万本以上の電柱を保有する国内の電力送配電事業者にとって、送配電設備の保全・工事の担い手不足、災害時の設備被害の状況の迅速な把握といった課題を解決する第一歩となるかもしれない。

日本電気株式会社