劇団NLT『オウムにわとり』が9月2日より、赤坂RED/THEATERで開幕する。

オウムにわとり』は、映画『罠』や『8人の女たち』で知られるフランスの劇作家、ロベール・トマの作品。おしゃべりが好きなことから「オウムおばさん」と呼ばれているアリスは、パリの公証人事務所で働いている。ある日、彼女の目の前で上司・ロシェが背中にナイフを刺され、倒れてしまう。通報ののち、気絶してしまったアリスが目を覚ますと、ロシェの死体は消えていたーー。アリスを中心に、刑事や公証人事務所の面々の軽妙な会話によって、それぞれが抱えていたロシェへの思いが明らかになっていく。

劇団NLTといえば、1960年代の発足以来50年以上、コメディを中心に上演してきた団体。1975年に『オウムにわとり』を日本で初めて上演したのも彼ら。今作はまさに、この団体の原点とも言えるブールヴァール劇(大衆娯楽演劇、風俗喜劇)だ。

コロナ禍であらゆる芝居の上演が難しくなっていく中、NLTは3月末まで細心の注意を払って公演(NLTダッシュ公演『病める時も健やかなる時も』)を続けた。また、緊急事態宣言以降は過去作品の配信を行ったり、所属する若手俳優たちを中心にオンライン演劇に挑戦したりと、演劇の灯を絶やさないよう活動を続けている。

そんなNLTが、半年ぶりの公演で彼らの原点、真骨頂ともいえるブールヴァール作品を上演する。長きにわたってコメディを上演してきた彼らにとっては「いつもどおり」であるとも言えるが、同時に特別な公演でもあるだろう。だからこそ、私たち観客はただ目の前で繰り広げられる丁々発止のやりとりを、死体が消えるところからはじまる上質なサスペンスを、アリスを演じる木村有里の「オウムおばさん」ぶりをめいっぱい楽しみたい。

文:釣木文恵

『オウムとにわとり』チラシ