君の膵臓をたべたい」で知られる住野よるの同名小説を実写映画化した『青くて痛くて脆い』(公開中)で共演した吉沢亮杉咲花柄本佑を直撃。それぞれが感じたお互いの印象や、“青くて痛くて脆かった”青春時代の苦い思い出について、語ってもらった。

【写真を見る】吉沢亮たちの“爽やかブルー”な撮り下ろしショット!

吉沢は、人づき合いが苦手な大学生の田端楓役を、杉咲は自分の信念が強すぎて周囲から浮いてしまう秋好寿乃役を演じた。2人は大学で出会い、「世界を変える」という目標を掲げる秘密結社サークルモアイ」を立ち上げる。柄本はモアイを外部から支援する脇坂役を務めた。

――吉沢さんと杉咲花さんは、映画『BLEACH』(18)でも共演されていましたが、ここまでがっつりと相手役を演じるのは今回が初めてだったそうですね。共演してみていかがでしたか?

吉沢「一緒にお芝居をさせていただく前から、すてきな女優さんという印象があったので、いつかしっかりとご一緒してみたいと思っていたら、このお仕事をいただきました。

杉咲さんは、いい人オーラが出ていて、笑顔の印象が強いです。人を傷つけることをしない人で、すごく安心感があり、一緒にお芝居をしていてとても楽しかったです」

杉咲「うれしいです。吉沢さんとは、最初に楽しいシーンから撮っていったので、時間が経つにつれて、徐々に打ち解けてくださった感覚がありました。吉沢さんは誰に対してもフラットで、やさしい方。ちゃんと自分の意見を伝えつつも、気を遣いながら心地いい距離感でいてくださるので、すごく勉強にもなりました」

――杉咲さんと柄本さんはNHK大河ドラマ「いだてん」で夫婦役を演じ、今回はカップルになるという役どころでしたが、共演シーン自体は少なかったですよね。

杉咲「確かにカップルらしい2人のシーンは、ほぼなかったです」

柄本「実は『いだてん』の時も『結婚しましょう』と言って2人で写真を撮ったけど、夫婦生活のシーンはまったく描かれませんでした(苦笑)」

――今回、また共演してみて、お互いの印象はいかがでしたか?

柄本「脚本で抱いた秋好のイメージが、そのまま立体的にパンと出てきた感じで、とてもハマっていると思いました。杉咲さんの声は、一瞬細く思えるけど、意志がのっかると、非常に厚みのある声になります」

杉咲「ありがとうございます。脇坂はすごく個性的なキャラクターだから、秋好と共鳴できる部分があったんだろうなと思いました」

■「僕はあまりSNSを見ないし、エゴサーチもしないです」(吉沢)

――本作は前半と後半でがらりと空気が変わります。吉沢さんは、後半でかなり心の闇が露呈していく役でしたね。

吉沢「いままでにも、こういう暗い役を演じたことがありましたが、今回は、自分で勝手に突き進み、勝手に傷ついて、復讐していくという身勝手な男の役でした。脚本を読んだ時、SNSとの関わり方や、自己主張のし方、闇の抱え方が、すごくいまっぽいなと思いました」

――どんなところが“いまっぽい”と感じたのでしょうか?

吉沢「誹謗中傷の問題もそうですが、悪者を見つけたら、みんなで一斉に攻撃するところです。また、相手が悪いのなら、なにを言ったっていい、と捉えている感じもそうです。楓は、身勝手な正義感を振りかざして、相手を押さえつけようとしています」

――ちなみに、吉沢さんは、SNSを見たり、エゴサーチをされたりしますか?

吉沢「僕はあまりSNSを見ないです。スタッフさんがやってくれているTwitterはありますが、それ以外のSNSはよくわからないですし。エゴサーチもしないです」

杉咲「そうなんですか?」

吉沢「僕自身で、SNSをやってないので。でも、いまは、SNSでのやりとりが主流というか、それがないと逆に不便なんだろうなと」

――例えば、誹謗中傷のようなコメントを目にして、傷つくことはありますか?

吉沢「自分の出演作が公開された時は、どんな感想が出ているのかを調べたりする時もあります。そうすると、平気でぼろくそに言う人もいるわけです。そういう時は、『そんなことを言える人は、どんなにすばらしい人間なんだ?』と思ってしまいます。僕だって普通に傷つきますし、イラッともしますが、あまりにもひどい内容だと、過剰に傷つけてくる言葉なんて、どうでもいいやと、自分に言い聞かせるようにしていますね」

柄本「わかる!顔を出す勇気もなくて、言葉だけで攻撃する人だよね」

■「SNSではこういう意見もあるんだと勉強になることもあります」(杉咲)

――柄本さんや、杉咲さんはどうですか?

柄本「しないですね。でも、一応Twitterのアカウントは持ってます。実は、震災をきっかけに、家族のアカウントを作りました。電話が通じなくなった時、自分が生きているということを、家族にちゃんと伝えられるので、そういう使い方は悪くはないなと。でも、いまは、みんな使い方に節操がなさすぎです。わびさびがないというか」

杉咲「私はInstagramをやっているので、いただいたコメントは見ます。もちろん『こんなこと言われちゃった』と思ったりもします(苦笑)。でも、こういう意見もあるんだと勉強になることもあります」

柄本「作品について再発見することもありますよね。わりとちゃんと批評をしてくれる場合もあるし」

吉沢「確かにそれはあります」

――“青くて痛くて脆い”というのは、青春時代特有の感情かなと思いますが、楓の気持ちは共感できましたか? みなさんも学生時代にそういう経験をしたことがありますか?

吉沢「僕は高校時代に、仲のいい友だちが2人くらいいて、彼らとノリでキックボクシングのジムに通い始めたんです。最初はやっていてすごく楽しかったのですが、途中から、久々にこのジムに帰ってきましたという、男性が入ってきたんです。その人から『新しいやつが入ってきたのか。ちょっとここへ立て』と言われたので立ったら、いきなりやられてしまいました」

柄本、杉咲「ああ~!」

吉沢「たぶん、彼なりに僕たちを鍛えようと思ってくれたのかもしれないんですが、それ以来、ジムへ行こうとすると、怖くなってお腹が痛くなっちゃって。結局3か月で辞めてしまいました (笑)」

柄本「体育会系のノリだね」

杉咲「私は学校にあまりなじめなかったです。学生の時は、学校が世界のすべてというか、そこでの関係性が上手くいかなかったら終わり、みたいな感じがあって。私はそれがすごく苦手だったので、高校では1人でいることのほうが多かったです。現場にいる時間のほうが楽しかったので、1つの現場が終わると、『また、学校に戻らないといけない』と思い、いつも憂鬱に感じていました」

柄本「わかる。そうなるよね。現場って楽しいから」

■「客観的に見たら、悲劇と喜劇は背中合わせかもしれない」(柄本)

――柄本さんはいかがですか?

柄本「僕は中学時代に、友達2人から仲間はずれにされ、それがきっかけで、俺対クラス全員みたいな感じになったことがあります。でも、僕はわりと鈍感なのか、不登校にはならず、学校はさぼらずに行くもんだと思っていたので、普通に行っていました。そしたら担任の先生に呼び出されたんです」

――先生が助けてくれたんですか?

柄本「いや、先生から『俺も長年、教師をやっているが、こんな状況はめったにない。辛いだろうけど、この状況を自分のなかで楽しめたらいいかもしれない』と言われたんです。その言い方で、いいのか悪いのかはわからないけど、俺はわりと気持ちがすっと楽になったんです。確かに、客観的に見たら、悲劇と喜劇は背中合わせかもしれないなと。結局、その後、首謀者2人と話し合う機会が持たれて、解決はしましたが」

杉咲、吉沢「良かった!」

――本作でも、自分の居場所を失った楓が、ある行動に出て、後半は一気に青春サスペンスと化します。楓と秋好が、お互いの感情をぶつけ合うシーンは、芝居的にも見せ場だったのではないかと。

吉沢「そうですね。前半が楽しくていいシーンばかりだったので、そこからの変わりようがすごすぎました。あのシーンを撮っている時は、お互いにひと言も喋らなかったです。極めつけに、楓が秋好から『気持ち悪い!』と言われてしまいますが、リアルすぎて僕は本気で傷つきました(苦笑)。現場の緊張感もハンパなかったです」

杉咲「すいません!なかなか、人に対してあんなにひどい言葉をぶつけることはないので、私自身も演じていてすごく苦しかったです。それまでの積み重ねもあったし、楓は『秋好が変わった』と言うけど、秋好自身は『楓が変わった』と思っている。あのシーンは精神的にもきつかったです」

吉沢「それぞれの正義感や信念を持っているからこそ、本人はすごく必死にもがいたり、苦しんだりするんだと思います。僕自身も痛いと感じたけど、なにかそこに愛おしさもあるような気もしました。きっと誰が観ても、共感していただける部分がたくさんある青春群像劇になっているので、それぞれの表情に注目して観ていただきたいです」

取材・文/山崎伸子

『青くて痛くて脆い』で共演した吉沢亮、杉咲花、柄本佑/撮影/河内 彩