スバルの新型「レヴォーグ」登場を前に、ステーションワゴンが再び見直されています。SUVに押されすっかり地味な存在になっていますが、現存モデルはどれも、しっかり売れています。ワゴンの良いところ、悪いところを振り返ります。

90年代の華だったステーションワゴンのいま

2020年秋に発売開始が予定されているスバルの新型「レヴォーグ」が注目されているようです。スバルのオフィシャルYouTubeチャンネルには、1か月で20本近くの動画が公開されており、どれも数万から20万ほども再生されています。また、自動車メディアの多くで、新型レヴォーグの試乗レポートなどが数多く公開されています。

レヴォーグの初代は2014(平成26)年にデビューしていますが、その年はスバルの最多量販モデルである「インプレッサ」よりも、レヴォーグの方が数多く売れるほどのヒットとなりました。この感じでは新型となる2代目モデルの売れ行きも好調が予想されます。

新型レヴォーグはヒットしそうな気配が濃厚ですが、その一方でレヴォーグの車形となるステーションワゴンは、いまや日本市場では斜陽と呼べる状況です。

レヴォーグのルーツとも呼べる「レガシィ ツーリングワゴン」が大人気となった1990年代の日本は、ステーションワゴンの人気が高く、数多くのモデルが発売されていました。トヨタからは「カルディナ」、日産は「ステージア」や「アベニール」、ホンダは「アコードワゴン」などが人気を競っていたのです。

ところが、SUVブーム真っただ中の現在、それら多くのステーションワゴンは姿を消しており、現存するステーションワゴンは、ほんのわずかになってしまいました。

では、ステーションワゴンは、もう消えてなくなる運命のクルマなのでしょうか。それは間違いだというのは、レヴォーグの注目度の高さを見れば明らかです。また実際に、現存する数少ないステーションワゴンは、意外と売れているのです。

カローラのワゴンが売れまくっている!

その筆頭が、トヨタカローラ」のステーションワゴンです。2019年にカローラはフルモデルチェンジしましたが、その内訳は、セダンが「カローラ」、ハッチバックが「カローラ スポーツ」、ステーションワゴンが「カローラ ツーリング」という3車種で構成されます。さらに、旧型モデルのセダンカローラ アクシオ」、ステーションワゴン「カローラ フィールダー」も併売となりました。

なぜ旧型が併売され5車種展開になったかといえば、「新型が大きくなって3ナンバー化したから」「社用車ニーズが高く、その人たちは3ナンバーが嫌」というのが理由。社用車ニーズには、5ナンバーの旧型で対応しようという狙いです。そうした5車種のカローラシリーズのうち、カローラ ツーリングとカローラ フィールダーが販売台数の6割ほどを占めています。つまり、カローラの中ではステーションワゴンが一番に売れる車形なのです。

2020年1月から6月におけるカローラシリーズの販売台数は、通称名別ランキングでいえば、1位「ライズ」に次ぐ2位のポジションで約5万7000台。その6割ですから約3万4200台にもなります。これはランキング12位の「アクア」に肉薄する数字です。つまり、カローラステーションワゴンは、それだけで12位になるほど売れているのです。

カローラステーションワゴンが人気の理由は複数考えられます。まず、トヨタのラインナップ中にステーションワゴンが、カローラプリウスにしか存在しないということ。これまであったニーズを2車種だけで受け止めているのです。また、プリウスステーションワゴンとなるのは「プリウスα」ですが、こちらの特徴は荷室が広いことで、欧州ではタクシーでも利用されています。

それに対して、カローラステーションワゴンは、セダン由来の走りの良さが魅力です。特に新型は低重心を売りにするTNGAプラットフォームを採用するため、走りの実力が高く、カローラよりも格上になる車種のユーザーが受け入れることもあるでしょう。また、旧型のカローラ フィールダーが5ナンバーでコスパに優れているも魅力です。

他メーカーも健闘!

続いて人気なのはホンダのワゴン「シャトル」です。2020年1月から6月の販売ランキングは38位。2015(平成27)年のデビューから5年を経ていることを考えれば大健闘の成績でしょう。

コンパクトカーのフィットをベースに、荷室を伸ばしたようなスタイルで、ミニバンのような室内の広さが確保されています。それでいて200万円弱という価格は、手ごろ感があるでしょう。兄貴分であった「ジェイド」が販売終了になってしまったのも、シャトルという存在があったことも理由になるのではないでしょうか。

最後に紹介するのが、マツダの「マツダ6」ワゴン。フラッグシップセダンの派生モデルです。マツダの中では上級モデルということで、パワフルな2.5Lガソリンターボエンジンや2.2Lディーゼルを選べます。

また、セダンとワゴンでホイールベースを変えるといったこだわりで、広い荷室と優れたハンドリングを両立しており、近年のマツダ車共通ともいえる「デザインの良さ」「走りの良さ」を味わえると言えるでしょう。弱点はハイブリッドがないことくらいでしょうか。マツダ6の販売台数もワゴンが46%を占め、セダンとほぼ互角です。ユーザーは40代から50代が中心で、キャンプやスキー、トレッキングなどを楽しんでいるとか。

そもそも、ステーションワゴンの魅力は「セダンと変わらぬ優れた走行性能」「スタイリッシュな姿」を備えつつも「商用車にも使われるほどの高い実用性(荷室の広さ)」を実現することです。そうしたクルマを求める声が消えたわけではありません。それはカローラを筆頭とする、現存するステーションワゴンの売れ行きを見れば、間違いないことと言えるでしょう。

一方、SUVブーム真っただ中の日本市場において、ステーションワゴンは「トラディショナルな存在ゆえの古臭さ」「実用性でミニバンには劣る」という欠点があるとも言えます。ただし、それらは本来的には、致命傷になるようなものではありません。新型レヴォーグの登場をきっかけに、ステーションワゴンの魅力を改めて見直すのはいかがでしょうか。

新型レヴォーグ(画像:スバル)。