マナー違反のキャンパーが急増

 三密を回避して、なおかつ屋外で感染リスクも減るということで、キャンプなどのアウトドア人気が急上昇している。だが、それに伴ってキャンプ場ではトラブルを引き起こす“迷惑”キャンパーも増えているようだ。山梨県のあるキャンプ場の経営者に話を聞いた。

「今年は三密回避で2グループ以上での予約は取らず、サイトの間隔も空けるようにするため入場者数も減らして営業しています。ですが、2グループ以上の予約はできないと断ると、別々に予約をして来てから合流されたこともあります。また、誤解を与えないためにSNSへの投稿も遠慮して頂くよう、お客さんにはその旨を説明しているのですが、SNSに投稿されてしまい『こんな時に営業しているのか!』という苦情の電話が来たこともあります」

 予約や問い合わせの電話は昨年と比べて倍近く増えたとこの経営者は言うが、頭の痛い問題も増えているようだ。こうしたトラブル群馬県キャンプ場経営者も頭を抱える1人である。

「今年は慣れてらっしゃらない方が増えましたね。夏でもキャンプ場のある高原は夜になると冷え込むんです。20度以下でテント泊だとけっこうな寒さです。でも、そういう方は軽装で来てしまうこともあって、夜中に寒くて車に乗ってエンジンを掛けてしまいトラブルになったこともありました。テントやタープを建てられないからと言って駆け込んでくる方も珍しくないですね。

 でも、コロナの影響でできるだけ接触はできないので、手助けをするリスクはありますし、家族経営のウチなんかだと人手不足でお手伝いする余裕がないんです。あとはゴミ出しと夜の騒音もトラブルとしては多いですね」

アウトドアショップクレームを入れる客

 トラブルに巻き込まれるのはキャンプ場だけではない。キャンプ道具を扱うショップの店員に話を聞いた。

「購入された方から『すぐ壊れたじゃないか! カネを返せ!』というクレームは増えました。でも、話を聞いてみるとほとんどの方が使い方を間違えているんですよ。アウトドアのギアは軽くて丈夫なものが多いのですが、使い方を間違えるとあっさり壊れることが多いんです。テントのポールなんかも間違えて差し込んで無理に力を入れたらあっさり折れます。

 特に壊れたという声が多かったのが、人気ブランド、スノーピークのガスコンロ『Home & Camp バーナー』ですね。一昨年の年末に発売されて、スタイリッシュなフォルムと収納性の高さで人気になったのですが、組み立てる際にしっかりロックを外して順番通りに組み立てないとけっこうあっさり壊れてしまうんです。そのため、購入する際には実際に組み立てて説明をしているんですが……」

 三密回避が呼んだアウトドアブームが、思わぬところでひずみを生んでしまっているようだ。

うっかり“迷惑キャンパー”になってしまう初心者キャンパー

 もちろんのことながら、迷惑を掛けずに楽しくアウトドアライフを送りたいものである。では、どうしたら迷惑を掛けず、トラブルを起こさずににアウトドアを楽しむことができるのだろうか。アウトドアライターの三浦晋哉氏に現状と対処方法を聞いた。

「迷惑キャンパーというと、集団で騒いでゴミを巻散らかして……という無法者のイメージがありますが、私がいろいろなキャンプ場の方から聞く限り、そういったケースは非常に少なく、実際は悪気はないものの図らずも迷惑を掛けてしまったキャンプ経験の浅い方が多いようです。

 夜、食事をして酔っ払ってしまい、料理をそのまま置いて寝てしまって朝になったら動物たちに荒らされてゴミが散乱していた……なんて話も聞きます。場所によっては熊が出るところもあるので、食料品は片付けて寝るというのは慣れている人からすると当たり前のことです。

 こういうことは、慣れている方やキャンプ場の方が教えることなのですが、最近はグループで行くこともできないため、慣れている方と一緒に行けずに単身でバーベキューの延長のような気持ちで行ってしまう初心者の方が増えているのです。キャンプ場もコロナ感染防止のため、受付を簡素化しているところも多く、説明不足になってしまうケースも増えていますしね」

 どうやら、迷惑キャンパーと言えども傍若無人な振る舞いをすると輩ではなく、初心者キャンパーによる“うっかりな行動”がトラブルを引き起こして周囲に迷惑をかけてしまっているようだ。また、三浦氏はコロナの影響で密を回避するため、キャンプ場内における人間関係が希薄になっていることもトラブルを大きくしている原因ではないかと指摘する。

「以前なら隣同士のサイトの人と気軽に挨拶をしたり、何かあるとちょっとした声かけをして……という光景が当たり前でした。しかし、三密回避のためにサイトも間隔を空け、できるだけ接触を控える傾向にあるので挨拶もままならない。

 挨拶をして少しでも関係性ができていれば、テントやタープの設営など困っていると、『手伝いましょうか?』とか『すいません! ちょっと初めてでわからなくて……』なんてやり取りも容易になりますし、夜騒いでうるさいなぁと思ったときも『すいません。ちょっと静かに……』と言えますが、そういう関係がないと『なんだ、あいつらは……』みたいに思ってしまうこともあります。ちょっとしたことでもトラブルに発展しがちなのです」

キャンプ動画が悪影響も……

 では、キャンプ道具を巡るトラブルに、初心者はどう対処したらいいのだろうか。

「大袈裟かもしれませんが、キャンプ道具は命を守るものです。そして使い方を間違えると命を落とす危険性を孕んでいます。以前、ある女性がSNSキャンプ場から実況したのですが、ガスバーナーの使い方を誤り、ガスが漏れて引火して爆発事故を起こしたことが話題になりました。最近は通販でキャンプ道具を購入する方が増えていますが、心配ならアウトドアショップで店員から説明を受けてから買った方がいいでしょう。

 特にテントなどは設営してくれるお店もあるので、実際に建ててもらうといいでしょうね。わからないまま使うことは本当に危険なので、説明書を読むだけでなく、最近はメーカーが使い方を動画でアップしているので不安ならしっかり見てから使うことをオススメします」

 だが、この動画が“くせ者”だとも……。

タレントの方などが焚き火キャンプをする動画を見て始められる方が増えています。動画では彼らはたやすくギアを操って、焚き火をして料理を作り……とやっていますが、それは経験があって慣れているからできるのです。しかし、動画を見てると自分もできると錯覚してしまう方も多いんです。こうした動画はキャンプの魅力は詰まっていますが、キャンプの全てではないんです」

 ここ数年は空前のアウトドアブームと言われている。誰でも“初めて”はあり、間違うこともある。だが、そうしたトラブルを回避するための準備はできるはずだ。また、自然の中で過ごすため、危険とも隣り合わせであることは肝に銘じる必要がある。河原でバーベキューをする感覚でキャンプに行くことは、非常に危険なのだ。楽しくアウトドアライフを送るためにも、下準備と勉強は必要なのである。

取材・文/長谷川大祐

長谷川大祐】
SPA!本誌編集。料理やエンタメスポーツ分野まで幅広く取材し、自ら執筆することも。また、これまでにも多く書籍を手がけた