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最大の不安材料はブレーキ

text:Jon Pressnell(ジョン・プレスネル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
モーリス・エイトシリーズEを最初に借りた、デボラフライシートベルトがないことも不安材料だったが、一番大きな心配はブレーキだった。

4輪ともに油圧式ながら、現代の交通事情に合わないと感じたという。「気を使ったのは、ブレーキ。できるだけ先行車との車間距離を取るように、意識しました。直前にクルマが割り込んできて、ドキッとする瞬間もありました」

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モーリス・エイトシリーズE ツアラー1938〜1941年)

彼女はエイトシリーズEを、クラシックカーイベントにも持ち込んだ。借りている間に、1600km以上の距離を走ったという。「ただ自動車イベントに行くだけでなく、モーリスで向かい、色々な人と会うことが素晴らしい体験でした」

「地元の、チャリティイベントのようなものにも参加しました。イランからのテレビ取材も受けましたし、俳優のラリー・ラムの番組でも取り上げてもらいました。彼の最初のクルマが、古いモーリスだったようです」

「様々な年代の人と出会うことができた、素敵な夏でした。一番の思い出は、チェスターフィールドで開かれた1940年代マーケット。当時の服装で着飾って、4人で参加したんです」

「このクルマは沢山の人を笑顔にします。どこへ向かっても、ちょっとした話題になりました。レジスターのクラブマガジンにも、毎月記事を書きました」

返すのが悲しいほど大好きになった

信頼性はどうだったのだろう。「一度、4本すべてのプラグが点火されなくなりました。プラグコードが切れていたんです。激しい雨の日には、ワイパーが動かなくなりました。レジスターのメンバーが、すぐに直してくれました」

「モーリスが大好きになりました。返すのが悲しく感じるほど。一生の記憶ですよ」。と振り返るフライ

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モーリス・エイトシリーズE ツアラー1938〜1941年)

「お金があれば、買いたい。古いトラクターランドローバーを持っている友人がいるのですが、彼もエイトを探しています。レジスターの将来的なメンバーかもしれません」

モーリスを借りたことで、フライには新しい出会いがあった。「レジスターで知り合った人から、1963年製のキャンピングトレーラーイタリアのラバンティ・グラツィアを買いました。友人も沢山得ました」

2番目に借りたのは、デビッドアランソン。2019年の夏だ。彼はシトロエンCXを所有したことはあったが、クラシックカーは初めて。「気にはなっていましたが、実際に行動するほどではありませんでした」

アランソンは42才。ハートフォードシャー出身のサラリーマンだ。彼はモーリスで3000kmほどを走った。

ドーバー海峡に近いボーリューや、西部のノーフォークコーストまで走りました。最後には、モーリス・レジスター・ナショナルラリーにも参加しています」

「高速は走らず、いつも下道を選びました。事前にルートを調べる必要がありますが、その計画も楽しみの1つ。ナビの誕生で、最近はする機会が減りましたよね」

いつか1台を見つけ、所有したい

「時間は掛かります。でも感じるストレスは少なく、当時の交通条件に近い環境で、クルマを走らせることができたと思います」

「日常的な買い物や、近場へのドライブにも乗りました。エイトシリーズEは乗りやすい。古いクルマなのに、実用的で本当に驚きました」

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モーリス・エイトシリーズEを借りたデビッドアランソン

「とても好きになりました。運転することが楽しい。ブレーキは、車間距離を気にしていれば大丈夫」。とアランソンが話す。

多くの注目も集めたという。「買い物に行くと、いつも数名の人がクルマを囲んで話しかけてきました。ひと目見たいと、近寄ってくる人も」

メンテナンスの手間は、最小限で済んだようだ。「トランスミッション250ccほどのフルードと、エンジンに1.5Lのオイルを補充しています。燃費は、一度計算してみたら15.6km/Lくらいは走るようです」

クラシックカーへの思いに、変化はあっただろうか。「エイトシリーズEのカタチが好きです。ツアラーは、夏の季節に良いですね。いつか1台を見つけ、所有したいと考えています」

アランソンにエイトシリーズEを貸し出したことで、モーリス・レジスターにも良い変化が起きている。レジスターのメンバーシモンズが説明する。「ウェブサイトを運営したらどうかと、アランソンに勧められ、開設しました」

アランソンを、会費不要の正式なメンバーとして迎え入れました。レジスターに関心を持ってくれ、協力してくれます。かけがえのない、新メンバーです」

扱いやすく、運転が楽しいモーリス

この記事が出る頃には、モーリス・エイトシリーズEは3人目の貸し出し人へ渡っているはず。その前に、筆者も試乗させてもらった。

とても扱いやすく、運転が楽しい。FYK 259のモーリスは、見事に仕上がっている。

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モーリス・エイトシリーズEを借りたデビッドアランソン

918ccのサイドバルブ・エンジンは滑らかに吹け上がる。十分活発に速度を上げ、70km/hくらいでのクルージングは問題ない。80km/hでも、恐怖感はない。

トランスミッションは、変速時にカチッと決まり、ゲートはタイト。シンクロメッシュの状態は良いようだ。

ブレーキペダルのストロークは短く、比較的簡単にモーリスの速度を落としてくれる。ステアリング・ラックの調子も良く、直進時の安定性やコーナリングにも不安はない。

乗り心地は、意外なほどに快適。4本ともにリーフプリングが支えている。

確かに、このモーリス・エイトシリーズE ツアラーは、初心者でも運転できるクラシックカーだといえる。不必要に身構える必要もない。

筆者も、今から40年以上前、間違った選択をしたわけではないようだ。すでにクラシックカーの経験は少なくないわたしだが、この小さなモーリスを、しばらく借りたいと思ってしまった。

モーリス・エイト・シリーズE ツアラー(1938〜1941年)のスペック

価格:新車時 135ポンド/現在 1万5000ポンド(204万円)以下
生産台数:2776台
全長:3658mm
全幅:1422mm
全高:1549mm
最高速度:98km/h
0-100km/h加速:6.2秒
燃費:12.7-15.6km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:714kg
パワートレイン:直列4気筒918cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:30ps/4400rpm
最大トルク:5.3kg-m/2400rpm
ギアボックス:4速マニュアル


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モーリス・エイト・シリーズE ツアラー(1938〜1941年)
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