オーストラリアにはオーバーキルにもほどがある猛毒を持つ生物が数多く潜んでいる。毒グモ、毒ヘビ、毒クラゲはもちろん、植物だって油断ならない。
オーストラリアに自生するイラクサ科の「ギンピ・ギンピ(学名 Dendrocnide moroides)」は、地球上の植物では最高クラスの猛毒を持つ危険なやつで、葉や枝に触れたら最後、神経毒を送り込まれ、地獄の痛みを味わうこととなる。その苦痛は2年にも及ぶというのだからたまらない。
これまで、何がそんなにも強烈な痛みを引き起こしているのか謎だった。だが今回の研究でその神経毒の正体が明らかになった。
それは、これまでまったく知られていなかった新しいペプチドだったそうだ。
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想像を絶する痛みが長期間続く。ついたあだ名は自殺植物
ギンピ・ギンピの表面には、びっしりと刺毛が生えている。その為、うっかり葉や枝に触れてしまうとそこから神経毒が送り込まれ、想像を絶する苦痛でのたうち回るハメになる。
そのせいでついた名前が「スーサイド・プラント(自殺植物)」だ。
実際に死ぬことはないらしいが、その痛みは熱した酸を浴びせられ、それと同時に感電したかのような激痛であるそうだ。
植物学者のアーニー・ライダーは、1963年にうっかりギンピ・ギンピに触れてしまったときの経験をこう語っている。
2、3日は耐えがたい痛みで、動くことも眠ることもできませんでした。その後も2週間はひどい激痛です。2年経ってもヒリヒリした痛みが続き、水のシャワーを浴びるたびにぶり返しました。これに匹敵するような痛みはなく、他よりも10倍はひどいものです
Planta peligrosa en Australia Gympie-Gympie
ギンピ・ギンピから未知のペプチドが発見される
そんな激痛をもたらすギンピ・ギンピだが、何がそんなにも強烈な痛みを引き起こしているのかこれまで謎だった。そこから抽出した分子を使った実験では、そこまで激しく、しかも長引く苦痛を再現することができないのだ。
だが、オーストラリア・クイーンズランド大学の研究者によって、ついにその謎が解明された。
それはこれまで知られていなかった新しいペプチドで、抽出されたギンピ・ギンピにちなみ「ギンピータイド(gympietide)」と命名された。
植物由来ですが、クモやイモガイの毒に似て、3次元分子構造に折りたたまれ、同じ疼痛受容体を標的にします。まさにギンピ・ギンピは猛毒植物なわけです
と、研究グループのイリーナ・フェッター氏は話す。
知覚ニューロンを恒久的に変化
ギンピータイドは知覚ニューロンのナトリウム・チャネルを恒久的に変化させるようだ。そのおかげで、刺されてから数か月、下手をすると数年も痛みがぶり返して苦しむことになる。
フェッター氏は「この毒の作用を解明して、ギンピ・ギンピに刺された人の痛みを緩和したり、完全に消したりするような治療ができるようになればと思っています。」と話している。
この研究は『Science Advances』(9月16日付)に掲載された。
Neurotoxic peptides from the venom of the giant Australian stinging tree | Science AdvancesReferences:newatlas/ written by hiroching / edited by parumo 全文をカラパイアで読む:
https://advances.sciencemag.org/content/6/38/eabb8828
http://karapaia.com/archives/52294786.html
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