ギンピ・ギンピの猛毒の正体が明らかに

ギンピ・ギンピの猛毒の正体が明らかに image by:University of Queensland

 オーストラリアにはオーバーキルにもほどがある猛毒を持つ生物が数多く潜んでいる。毒グモ、毒ヘビ、毒クラゲはもちろん、植物だって油断ならない。

 オーストラリアに自生するイラクサ科の「ギンピ・ギンピ(学名 Dendrocnide moroides)」は、地球上の植物では最高クラスの猛毒を持つ危険なやつで、葉や枝に触れたら最後、神経毒を送り込まれ、地獄の痛みを味わうこととなる。その苦痛は2年にも及ぶというのだからたまらない。

 これまで、何がそんなにも強烈な痛みを引き起こしているのか謎だった。だが今回の研究でその神経毒の正体が明らかになった。

 それは、これまでまったく知られていなかった新しいペプチドだったそうだ。

―あわせて読みたい―

サイレントキラー・・・人間なんていつでも殺れる10種の植物
オーバーキルが加速する。人間を殺る気満々の10の植物
植物だって攻撃する。生きるために植物が身に着けた巧妙な殺しのテクニック10
俺に触るとヤケドするぜ。イギリスで最も恐れられている有毒植物「ジャイアント・ホグウィード」(※皮膚疾患画像注意)
植物怖いシリーズ。食べるな危険!油断するとひどい目に遭う10の猛毒植物

想像を絶する痛みが長期間続く。ついたあだ名は自殺植物

 ギンピ・ギンピの表面には、びっしりと刺毛が生えている。その為、うっかり葉や枝に触れてしまうとそこから神経毒が送り込まれ、想像を絶する苦痛でのたうち回るハメになる。

 そのせいでついた名前が「スーサイド・プラント(自殺植物)」だ。

2_e1

ギンピ・ギンピ image by:Institute for Molecular Bioscience, University of Queensland

 実際に死ぬことはないらしいが、その痛みは熱した酸を浴びせられ、それと同時に感電したかのような激痛であるそうだ。

 植物学者のアーニー・ライダーは、1963年うっかりギンピ・ギンピに触れてしまったときの経験をこう語っている。

2、3日は耐えがたい痛みで、動くことも眠ることもできませんでした。その後も2週間はひどい激痛です。

2年経ってもヒリヒリした痛みが続き、水のシャワーを浴びるたびにぶり返しました。これに匹敵するような痛みはなく、他よりも10倍はひどいものです



Planta peligrosa en Australia Gympie-Gympie

ギンピ・ギンピから未知のペプチドが発見される

 そんな激痛をもたらすギンピ・ギンピだが、何がそんなにも強烈な痛みを引き起こしているのかこれまで謎だった。そこから抽出した分子を使った実験では、そこまで激しく、しかも長引く苦痛を再現することができないのだ。

 だが、オーストラリアクイーンズランド大学の研究者によって、ついにその謎が解明された。

 それはこれまで知られていなかった新しいペプチドで、抽出されたギンピ・ギンピにちなみ「ギンピータイド(gympietide)」と命名された。

植物由来ですが、クモやイモガイの毒に似て、3次元分子構造に折りたたまれ、同じ疼痛受容体を標的にします。まさにギンピ・ギンピは猛毒植物なわけです

と、研究グループのイリーナ・フェッター氏は話す。

3_e1

ギンピ・ギンピの刺毛 image by:Institute for Molecular Bioscience, University of Queensland

知覚ニューロンを恒久的に変化


 ギンピータイドは知覚ニューロンのナトリウム・チャネルを恒久的に変化させるようだ。そのおかげで、刺されてから数か月、下手をすると数年も痛みがぶり返して苦しむことになる。

 フェッター氏は「この毒の作用を解明して、ギンピ・ギンピに刺された人の痛みを緩和したり、完全に消したりするような治療ができるようになればと思っています。」と話している。

この研究は『Science Advances』(9月16日付)に掲載された。

Neurotoxic peptides from the venom of the giant Australian stinging tree | Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/6/38/eabb8828
References:newatlas/ written by hiroching / edited by parumo 全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52294786.html
 

こちらもオススメ!

―植物・菌類・微生物についての記事―

キノコの山ならぬキノコの革。環境に優しく本革に匹敵する質感を持つキノコを使った代替レザーがいい感じ
植物は見ている。 植物に残された痕跡から森の中の遺体の場所を見つけ出す「法植物学」(米研究)
地球の生命はやはり宇宙から来ていたのか?細菌は宇宙空間で何年も生き続けられるという新たな証拠(JAXA)
川の危険な汚染物質「ダイオキシン類」を除染してくれる細菌が発見される(米研究)
トマトが発する電気信号を数学モデルで分析。菌を媒介して仲間に合図を送っていた(米研究)

―知るの紹介記事―

うれしいニュース。西海岸の森林火災に巻き込まれた馬全てが奇跡的に生き伸びる(アメリカ)
バイキングは金髪碧眼の北欧人というイメージが覆される可能性。DNAの分析からその多様性が明らかに
アメリカで渡り鳥が謎の大量死。山火事が原因か?(アメリカ)※鳥死骸閲覧注意
また別の電脳化技術が! 脳にチップを入れ視力を回復させるバイオニック・アイ(オーストラリア研究)
自分がちっぽけな存在だということに気づかされる、この世に存在する10の巨大なモノの写真
触れただけで地獄の痛み、猛毒植物「ギンピ・ギンピ」からまったく新しい神経毒を発見(オーストラリア)