もし自分が死んだらその遺体はどうして欲しいか?近代日本では火葬が一般的となっているが、世界では様々な葬送の在り方が模索されている。
できれは自然なプロセスで母なる地球へと還っていきたいと願う人も多いだろう。
オランダの研究者が考案した「Living Cocoon(リビング・コクーン)」なら、そんな思いを叶えてくれるかもしれない。
キノコの菌糸体で作られたリビング・コクーンは、まさに「生きた棺」で、納められた遺体を分解して自然に還してくれるのだ。
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死して、可及的速やかに再び自然と一体に
キノコの菌糸から作られた生きたお棺、「リビング・コクーン」は、収められた遺体を自然のプロセスで分解していく。
土に還った遺体は養分となり、新しく植物を育んでくれることだろう。それだけでなく、有害な化学物質もまた分解されるので、生きている間に汚してしまった地球が少しだけきれいになる。
遺体が分解されるまでは2、3年。一般に棺に入れて土葬した場合、完全に分解されるまでに10年以上かかるので、リビング・コクーンならずっと速やかに自然に還れるということだ。
リビング・コクーンの考案者はオランダ、デルフト工科大学のボブ・ヘンドリックス氏。この生きた棺で死者を埋葬し、生前地球に与えたダメージをいくらかでも修復する閉鎖系を作り出すことが願いだ。
私たちは今、自然の屍の上で暮らしています。私たちの行為は寄生的で、しかも近視眼的です。生命を劣化させ死に追いやり、物質で汚染していますが、それらを元気にできたとしたらどうでしょう?リビング・コクーンは、人を再び自然と一体にしてくれます。土を汚染するのではなく、豊かにするんです(ヘンドリックス氏)
キノコは森の分解者
キノコは「森の分解者」と呼ばれているそうだ。
その体を構成する糸のような「菌糸体」から酵素を分泌して、さまざまなものを生物学的ポリマーに分解することができる。こうして生物を腐敗させ、そこに蓄えられた二酸化炭素を大気中に戻すのだ。
「菌糸体は環境にとって栄養になる廃棄物をいつも探しています。油、プラスチック、金属といった有害物でも同じことです。」
「菌糸体はたとえばチェルノブイリでも使われましたし、ロッテルダムでは土壌の浄化に利用されています。農地を元気にするために使っている農家もいます。」
ヘンドリックス氏が生きた棺のアイデアを閃いたのは、昨年菌糸体で作った「生きている家」をお披露目したときのことだそうだ。
「女の子にこう聞かれたんです。『おばあちゃんが死んだら、そこに置いておいてもいいの?』ってね。」
菌糸体が人体にどのように作用するのかハッと気がついたという。それは人を生命の循環に戻し、植物に栄養を与えてくれる、と。
棺を育てるには1週間で、手間いらず
リビング・コクーンを作るには、それを成長させなくてはならない。棺の形をした型に菌糸体と栄養となる有機物を入れて、育て上げるのだ。棺の形に成長するまでは1週間かかる。
このときに特に手を加える必要はなく、わざわざエネルギーや熱や光を与えてやる必要がないのも自然を感じさせるところだ。
地球で生きて土に還る。生命の循環(ループ)を作り上げる
現在、ヘンドリックス氏は「Loop(ループ)」というスタートアップを設立し、リビング・コクーンの試験を行なっている最中だ。
いくつかの企業の協力のもと実際に棺を使ってみたところ、オランダの一般的な土では30~45日で還元されることが確認された。ただ、これによって生物多様性が増すかどうかは、これから調べなければならないそうだ。
「これが土にどう作用するのかはっきりと知りたいと思っています。遺体を栄養にすることで、汚染された土地を健康な森に変えられるのだと、地域の自治体を納得させるには必要なことです。」
ただの棺のほかに、発光するキノコを利用して、遺体を埋葬した場所の目印するというアイデアもあるそうだ。お墓に供える花の代わりに、光るキノコが供えられるようなこともあるかもしれない。
References:tudelft / dezeen/ written by hiroching / edited by parumo
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