15日に札幌ドームで行われたソフトバンク日本ハムの一戦。試合は「3-2」で日本ハムが勝利したが、試合結果以上に話題となったのがソフトバンク先発・千賀滉大の“148球完投”だった。

 同戦の千賀は2回裏に日本ハム西川遥輝に2点二塁打を浴び先制を許すも、3回以降は立ち直り7回まで無失点。千賀は7回終了時点で球数が116球に達していたため降板も予想されたが、工藤公康監督は続投を決断。千賀は8回に再び西川にタイムリーを浴びたがそれでもマウンドを降りず最後まで投げ、「8回148球3失点・被安打9・6四球」で完投負けとなった。

 自己最多の球数を投げた千賀と続投させた工藤監督に対し、ネット上には「負けはしたが気迫を感じた」、「無理に引っ張る必要はなかった」と賛否の声が多数寄せられた。一部では「数年前の藤浪みたいだな」、「藤浪は確かもっと球数投げてたな」といったコメントも見られた。

 名前が挙がっている藤浪晋太郎は、阪神(2013-)でプレーする26歳の先発右腕。今シーズンは「1勝5敗・防御率5.87」と振るわず14日に一軍登録を抹消されているが、過去に今回の千賀を上回る球数を投げた経験がある。

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 2016年7月8日甲子園で行われた阪神対広島の一戦。当時プロ4年目・22歳の藤浪は、ここまで4戦連続白星なしで勝敗も「4勝4敗」と不調。久しぶりの白星を目指した同戦も初回の3失点を皮切りに、7回表までで5点を失うなど今一つだった。

 「2-5」と阪神3点ビハインドの7回裏2死、その藤浪にこの日3度目の打席が回ってくる。逆転を狙うならば藤浪を下げ代打を送り、8回以降はリリーフに継投というのがセオリー。ところが、当時の金本知憲監督は藤浪に代打を送らず、8回もそのまま続投させる選択をした。

 7回表終了時点で既に131球を投じていた藤浪は8回、2四死球に自身初のボークも絡み2死満塁のピンチを招くと、広島・岩本貴裕に走者一掃の三塁打を浴び3失点。後続の田中広輔を抑えたところでようやく降板となったが、「8回161球8失点(自責点6)・被安打7・6四死球」という散々な内容。チームが「2-8」で敗れたため5敗目を喫する結果となった。

 失点、球数共にかさんでいた藤浪を金本監督はなぜ8回も続投させたのか、その理由は試合後の報道により判明する。報道によると、同戦の藤浪はシーズン8度目となる初回失点を喫したが、この投球に金本監督は「去年14勝した投手のやることではない」と激怒。そのため、“懲罰”の意味も込めて藤浪をいけるところまで投げさせることを決断したという。

 当初は「10点取られても投げさせるつもりだった」という金本監督は、「予定では10勝に行っていてもおかしくない投手。普通にやっておけば」と藤浪を叱咤激励。藤浪も「自分自身に腹が立つし情けない。そういう気持ちしかない」と自身の投球を反省していた。

 藤浪への期待の裏返しが理由だった金本監督の“懲罰続投”だが、当時のネット上は「今日の悔しさをバネに一皮むけてくれるはず」、「ただのパワハラじゃないか、どこか故障でもしたら責任取れるのか」と賛否両論。また、同年以降の藤浪は制球難などもあり現在に至るまで低迷が続いているが、低迷の原因の一つとして同戦を挙げる声も少なくない。

 今回の千賀は自分から続投を志願し、工藤監督も「お前が白黒つけてこい」と了承したことが伝えられている。4年前の藤浪とは事情が異なるが、球数がかさんだこともあり思い出したファンも多かったようだ。

文 / 柴田雅人

藤浪晋太郎