18日に発表された、バイエルンスペイン代表MFチアゴ・アルカンタラリバプール移籍。リバプール行きが盛んに報じられながら、中々進展がなかっただけに、安堵したサポーターも多いのではないだろうか。

近年、チームの足りない部分を的確に見極めて、最適な補強を行ってきたリバプール。中でも大金をはたいて連れてきたオランダ代表DFヴィルヒル・ファン・ダイクやブラジル代表GKアリソン・ベッカーは穴を埋めるだけでなく、チームのストロングポイントの一つになっている。リバプールは2019-20シーズンに日本代表FW南野拓実オランダ人DFゼップ・ファン・デン・ベルグらも獲得はしているが、アリソン以来の即戦力の獲得が今回のチアゴだ。


そのチアゴの加入が、リバプールにもたらすものとして考えられるのは、大きく分けて2つある。一つはトランジション時のクオリティアップ、そしてもう一つが中盤からのクリエイティブなプレーだ。

既にリバプールの強みである守備から攻撃への切り替えの部分だが、チアゴの存在はそのクオリティを一段高める。見過ごされがちだが、チアゴは守備面でも高いクオリティを持っている。決して大柄な選手ではないものの、敏捷性に優れるチアゴは高いボール奪取力を持ち、相手の攻撃の起点となる選手から素早くボールを奪うことができる。

さらにチアゴの優れている点は、ボール奪取後、すぐに攻撃の起点となれる高いパス精度を持っていることだ。パスに加え、相手のプレッシャーをいとも簡単にすり抜ける、高いキープ力とドリブルテクニックも兼ね備えているため、複数の相手から囲まれているような状況においても、ファーストタッチで相手からのマークをすり抜ける、または素早いドリブルで一瞬にして相手を置き去りにし、味方の攻撃に繋げるという場面がバイエルンでも数多く見られた。

相手の攻撃をストップし、すぐさま味方の攻撃に繋げることができるチアゴは、組織的なプレスと素早いトランジションからのダイナミックな速攻を得意とするクロップリバプールの武器をさらに強化するだろう。

そしてもう1つのチアゴの強みが、中盤からのクリエイティブなプレーで、攻撃の幅を広げることができる点だ。チアゴの最大の武器は、元スペイン代表MFチャビエルナンデス氏を彷彿とさせるエレガントなパスセンスだろう。1本のパスで相手DFを無効化し、ビッグチャンスを作り出すクリエイティブなプレーは、間違いなくリバプールの攻撃の幅を広げる強みになる。

中盤のクリエイティビティについては、昨シーズンからリバプールの課題とされていた部分であり、主力としてこれまで多くの試合に先発しているMFジョーダン・ヘンダーソンやMFジョルジニオ・ワイナルドゥムはどちらかと言えばハードワークを得意とするファイタータイプのMFであり、中盤からの仕掛けはそこまで得意な選手ではない。

その代わりに、DFトレントアレクサンダーアーノルドやDFアンディロバートソンといったサイドバックの選手がクリエイティブな仕事を担っており多くのアシストを記録しているが、やや一辺倒になっている面もあった。そのため、サイドバックからのパスの対策を講じられ、苦戦するという試合は昨シーズンも散見されていた。

こうした局面では、ドリブルで仕掛けていく力を持ったMFナビ・ケイタを投入して状況を打開しにいく、という場面が昨シーズンを通して何度も見られたが、今後そういった展開の試合において、チアゴのクリエイティブなパスやドリブルでの仕掛けは、リバプールにとってこれまでなかった新たなオプションとなり得る。

既にリバプールの強みである素早いトランジションをより強固なものとし、今までの課題であった中盤のクリエイティビティをチームにもたらすことができるチアゴは、プレミアリーグ連覇を狙うリバプールにとって大きな後押しとなるはずだ。

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