9月13日、世界最高峰の自転車レースツール・ド・フランスが勝負所のアルプス山岳地帯に入った。選手たちを応援する観客が、今年は誰もいない。PCR検査で大会委員長と出場チームスタッフ4名が陽性となり、ゴール地点での観戦が初めて禁止されたのだ。

 新型コロナウイルスの第2波に襲われているフランス。12日に1日あたりの新規感染者数は過去最多の1万561人に達した。

「(コロナの流行は)明らかに悪化している」

 カステックス首相はそう警告。今ではマスク着用を商店や公共交通機関、路上だけではなく、職場でも義務づけられ、違反者には135ユーロ(約1万7000円)の罰金が科せられる。感染経路追跡要員をさらに追加し、週100万件のウイルス検査も行われている。

 フランスで最も厳しい全国外出規制が実施されたのは、3月17日から5月11日マクロ大統領は「総力戦だ」と訴え、政府と国民が一丸となり、医療崩壊を免れ、感染者数も1日100人台に。だが、また7月末から再び増え始めた。

 なぜ再び感染が拡大しているのか。

フランスを再発見しよう」と国内旅行を奨励した結果……

 専門家たちが口を揃えて言うのは、外出規制解除の解放感とバカンスの気の緩みだ。

 6月、政府は「フランスを再発見しよう」と国内旅行を奨励した。そのため、親族や友人と接触する機会が増えた。政府によればクラスターによる感染は全体の2割程度で、残りは私的な家族の集まりだという。フランスでは親密な者同士の間では、マスクを着用することが少ないのである。

 また、感染者には無症状の若者が多いことから、集団で野外パーティを行ったり、街で群れたりする若者の自覚の乏しさが問題視されている。「フィガロ」紙の世論調査でも、64歳以上では61%が感染を心配しているが、18~24歳では39%にすぎない。

 このような若者はマスクをしないが、一般には広く着用されている。それにはフランスらしい理由もある。

 実は、コロナ禍が始まった3月、政府は「予防用マスクはいらない」と繰り返し発表していた。だが、かつては10億枚以上備蓄していた一般向けマスクの在庫が乏しくなっていたと発覚。「政府がマスク不足を糊塗するため嘘をついていた」とスキャンダルに。そのため、人前でマスクをすることが政府批判になっている。

 陽性率の高いマルセイユなどでも外出規制は検討されていない。感染防止策の未実施店に休業命令が出たり、10人以上の集会が禁止される可能性はあるが、全国一斉の規制は行われない見通しだ。世界中がフランスの今後を見守っている。

(広岡 裕児/週刊文春 2020年9月24日号)

今年7月に就任したカステックス首相 ©共同通信社