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若者向けのライトな4×4

translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

1994年5月、英国では歴史的な出来事がいくつも起きた。

芝生の上ではマンチェスター・ユナイテッドがFAカップ決勝でチェルシーを4-0で破り、海の中では英仏海峡トンネルが開通。そして陸の上では、トヨタが史上最も大胆なモデルの1つであるRAV4を発売したのである。

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トヨタRAV4

兵士よりもサーファーのことを考えてデザインされた、曲線的で風変わりな4WD車、RAV4。古風なジープラングラー、ランドローバー・ディフェンダー、そしてトヨタ自身のランドクルーザーのファンにとっては冒涜とも言えるモデルかもしれない。

しかし、RAV4は彼らのために作られたのではない。サーフィンやハイキング、登山が好きな若者のために作られ、現代のクロスオーバーの基礎を築いたのだ。

AUTOCARが初めて英国でRAV4を運転したのは、1994年フォード・エスコートRS2000と並んで行われた比較テストの時だった。奇妙な組み合わせのように思えるが、2台はそれぞれコンパクトなファミリーカーとして、4輪駆動とスポーツ性を備えていた。

エスコートがパワーの面で優位に立っていたものの、RAV4は約65kgも軽量だった。それに、RAV4が登場したときはまだ、日産ジュークフォードピューマ、シュコダ・カロークといったライバルは存在しなかったのだ。

RS2000のようなホットハッチは一般のドライバーが保険をかけることがほとんど不可能になっていたし、ラングラーやランドローバーディスカバリーのような従来型のオフロード車は日常的な使用には不向きで、燃費も悪かった。

現代のクルマにはない魅力

RAV4が登場したことで、新しいニッチが開拓された。RAV4は本質的に両セグメントの間に位置し、使いやすさ、楽しさ、手頃さを提供していた。

RAV4は特に速いわけではなかったが、AUTOCARのテストで証明された8.8秒という0-100km/hのタイムは、ラリーで鍛えられたエスコートに恥をかかせるには十分だった。

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新車のように美しい状態のRAV4

今改めてハンドルを握ってみると、この丸みを帯びた小さな4×4が持つパフォーマンスは、かなり控え目だということに気付く。

賑やかな3気筒ターボトルクのあるディーゼルエンジンを搭載している今日のスポーティなコンパクトSUVと比べると、RAV4の自然吸気2.0Lエンジンは少し根性が足りないように感じられるし、アイドリング時のゴロゴロという音は、ビーチというよりはむしろ納屋を連想させる。

しかし、ギアを上げていくと、RAV4の永続的な魅力がどこにあるのかが明らかになる。誰もいない平坦な郊外の道でさえ、今日のコンパクトモデルにはしばしば欠けているクロスオーバーの本質を思い出させる。

RAV4の堅実さは確かにそこにあり、オフロード性能もライバルとは一線を画す。これまでに製造されたRAV4の約90%がいまだに走行可能なのも不思議ではない。

車内はグレーのプラスチック、黒のビニール、鈍重なマニュアルなど、今日の基準では刺激的とは言えないが、その正直さにはある種の魅力がある。ノスタルジックな決まり文句にはまることなく、今のクルマよりもはるかに直感的にレイアウトされている。

その気取りのなさは、不朽の人気と相まって、今公道を走っていても、誰も立ち止まってじっと見たり、声をかけたり、SNS用の写真を撮ろうとしたりしない理由となっている。これは、内向的な人にとって理想的な準クラシックカーだ。

トヨタの歴代モデルを保管

試乗した車両番号「N897 VHN」のRAV4は、オドメーターが20万kmを超えていたが、丁寧にレストアされており、保存するためにどれだけの時間と労力が費やされてきたかは明らかだ。

作業チームはルーフを修復するために、もう1台ドナーとして購入したという。1960年代の貴重なランボルギーニにふさわしい、本格的なレストアだ。

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レクサスLFA

ここ、英サセックス州にあるトヨタのワークショップ兼博物館にあるのはRAV4だけではなく、もっと注目すべきクルマも展示されている。

何の変哲もない倉庫の奥には、トヨタレクサスで重要な立ち位置にあり、高い評価を受けている人気モデルが並んでいる。イベントや雑誌の特集で利用できるように丁寧に保管されているのだ。

2020年モデルのカローラ、C-HR、カムリの列の後ろには、初代MR2や伝説的なAE86など、トヨタファン垂涎のクラシックカーがずらりと並ぶ。

そして、他のクルマから少し離れたところには、レクサスの超高級ハイパーカーLFAが1台置かれている。かつてヨーロッパでLFAを扱うために訓練を受けた、5人の技術者のうちの1人がここで働いているのだ。

11年前に発売されたLFAは、歴代のスーパーカーの中で最もスパイシーなモデルの1つとして確固たる地位を確立している。4.8L V型10気筒エンジンは、アナログタコメーターでは追いつかないほどの速さで9400rpmまで回転する。ボディにはカーボン複合材を使用しており、開発には10年近くの歳月を要した。

しかし、先述の技術者マイク・クロフトは、LFAの評判をあまり気にしていない。

「パーツが違うんですよ。プロペラシャフトではなくトルクチューブを採用しているので、エンジンとクラッチが前に、トランスミッションが後ろにあります。しかし、ちょっと整備が必要なだけで、サーキットでも本当によく持ちこたえてくれます」

わたし達はLFAを公道に引っ張り出すことはできないが、スロットルを素早く弾いただけで、LFAスーパーカーの中でもかなり特別なものであることを十分に証明できる。

コロナ、プリウス、ヴィッツも

ロフトによると、コレクションの中で最も古いクルマである1966年製のコロナも同様に問題はないという。現代的なステレオを追加したこと以外は。コロナはヤリスGRMNと、欧州専売車のアイゴのカスタムカーの間に置かれている。

このアイゴのカスタムカーは、標準モデルとは一線を画す仕様となっている。

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トヨタ・コロナ(手前)、アイゴ(奥)

リアシートを取り外し、200psのターボエンジンを搭載し、リアウイングボルトで固定し、リアにリミテッドスリップディファレンシャルを装着するとどうなるか。これは、業界の中でも「まとも」と評される企業の、稀に見る狂気の表れに他ならない。この作品は歴史に名を残すに値する。

整備工場の反対側では、ラリーにも対応した初代プリウスがリフレッシュされている。

2002年に当時のパワートレインの信頼性を実証するために作られたこのエコ戦士は、同年にスウェーデンからヨルダンまで続く「ミッドナイトサン・トゥ・レッドシー」の過酷なラリーに参加。電動化された内臓の重さにもかかわらず、それほど悪い成績を残さなかった。

ステッカーが貼られ、スパルタンな内装のプリウスは、毎日の通勤で乗るプリウスとはかけ離れたもので、初期の成功に重要な役割を果たした。以来、ハイブリッド技術は進化を重ねてきたが、これは、一見ありふれた普通のクルマでさえも、長く続く伝統を享受することができるということを示していいる。

さらに意外な展示物は、2001年式のヤリスヴィッツ)だ。約20年前のクルマでありながら、走行距離はわずか240kmだけ。アイルランドで購入され、オーナーの家に到着したときにガレージのドアにぶつけてしまったそうだ。その後修理されたが、それ以来、ずっと乾式保管されてきたという。

どう見ても新車で、購入時のタイヤもちゃんとしている。今ではトヨタレクサスの偉人たちに囲まれながら、永住の地を与えられている。

社会に貢献してきた名車たち

これらのクルマの中には、「クラシック」というステータスが正当かどうか疑問に感じるものもあるだろう。

確かに、低価格のモデルは使い捨てだと主張する人々もいるだろう。しかし、これらのクルマは、アストン マーティンDB6やフェラーリ250 GTOマクラーレンF1よりも、モビリティ社会に多くの貢献をしてきたので、何らかの記念に値することは間違いない。

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手に入らない高級車より、人々の役に立ってきたのは大衆車だ。

ロフトは、展示物がどのようにして選ばれるのか、かなり簡潔に説明してくれた。

「基準は、コンディションが非常に良いこと、走行距離が少ないこと、あるいはちょっと珍しいことです。それがすべて揃っていれば完璧です」

ハイパーカースポーツカー、そして愉快なハイラックス・ブルーザーまで、この博物館に並ぶクルマは、自動車の歴史は保存するだけでなく、運転する価値があるという生きた証明でもある。

初代MR2との出会い

コンパクトで角張っていて、スーパーレッドに輝くこのMR2が、なぜ「ベイビーフェラーリ」という愛称で呼ばれているのかは一目瞭然だ。後ろに下がって目を細めれば、ほとんどF40のように見える。

カローラから借用した1.6L 4気筒自然吸気エンジンを搭載し、128psと13.4kg-mを発揮して、体重1030kgのこの2シータークーペを0-100km/hを8.5秒で走らせる。

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トヨタMR2

過去30年の間に事故や腐食によりMR2の数は減少してきたため、公道ではやや見慣れない存在となっている。運が悪ければ、通りすがりのタンクローリーの車輪の下に消えてしまう可能性があるのだ。遊び心よりも、脆弱さの方がやや勝っているので、このクルマを味わうには一般道を走るのが一番だ。

手頃な価格のスポーツカー1987年から進歩してきたので、純正のMR2がサーキット走行の武器になるとは思えない。また、今日のクルマのようにきれいな排出ガスも出さない。

しかし、その低い車高、応答性の高いハンドリング、ツインカムモーターの喉を鳴らすような音、そして7000rpmに近いレッドラインは言うまでもなく、別次元の楽しさを提供してくれる。

競技用のスポーツカーではないので、アグレッシブに運転する必要はない。ほとんどの道路では、ランボルギーニやパガーニよりも楽しい時間を過ごせるはずだ。

ただ、このような軽いフロントエンドを持つクルマにしては、ノンアシストのステアリングは衝撃的に重く、後方視界は良くても平均以下で、ラゲッジスペースは心もとない。

しかし、英国では7000ポンド(100万円)程度で手に入るMR2は、日曜日の午後のカジュアルクルーザーとしては羨ましいものだ。


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