「○○さんは淡々と語った」「彼は淡々とした様子だった」の「淡々と」は、あっさりとして、淡白な様子を表します。

同じ読み方の「坦々と」と混同されやすい言葉でもあります。

また、似たような意味を持つ「粛々と」とは、誤用が起きやすいようです。

今回は、それぞれの意味と違いを詳しく解説します。

■「淡々と」の意味は「あっさりした様子」

まず「淡々と」を辞書で探すと、「淡淡」が見つかります。

「淡々」の「々」は「ヽ」「ゝ」と同じ繰り返し記号で、前の文字を繰り返すことを意味するので、「淡々」と「淡淡」は同じです。

たんたん【淡淡】
(1)あっさりしたさま。執着のないさま。淡白なさま。
(2)水の静かに動くさま。
(『広辞苑 第七版』岩波書店

(1)の用例に「淡淡と語る」が掲載されています。

「淡々」に「と」を加えた「淡々と」は、事物の性質や状態がどのようであるかを表す形容動詞です。形容動詞は、名詞を修飾する機能と、述語としての機能があります。

「淡々と」は、色や味わいなどがあっさりしている様子を表しています。また、人の動作や態度が淡白で執着のない様子を表す言葉です。

■漢字間違いが多い「淡々と」と「坦々と」の違いとは?

「淡々と」と同じ音を持つ言葉に「坦々と」があります。

文字にすると違う言葉であると分かりますが、耳で「たんたんと」を聞くと、どちらの文字なのか、すぐに判断しにくいのではないでしょうか?

◇「坦々と」の意味は「変化がなく平凡な様」

「淡々と」と「坦々と」はどう違うのか? 「坦々」を引いてみます。

たんたん【坦々】
場面・道路などが平坦なさま。転じて、変化なく平凡に過ぎるさま。
(『広辞苑 第七版』岩波書店

平坦の「坦」を重ねる「坦々」は、文字通り起伏や変化がないことを表すものです。

転じて、「坦々と」は、道や場面、展開などに変化がなく、無事に、あるいは平凡に過ぎる様子を表す言葉です。

また「坦々」は、常用漢字外なので新聞や公文書ではひらがなで「たんたん」と表記されます。

◇「淡々と」と「坦々と」の違いは?

「淡々と」と「坦々と」のどちらも「たんたんと」と読みますが、その意味は微妙に違います

「淡々と」は、「色や態度があっさりしている様」を、「坦々と」は「起伏がなく平らな様、物事が平凡に過ぎる様」を意味します。

以下に、意味と例文を整理します。

☆「淡々と」は「色や態度があっさりしている様」

「淡々と」は、淡くぼんやりしていることから、次のような状態を表現できる言葉です。

・色や風味があっさりしている

・態度があっさりしている

《例文》

淡々として風雅な和菓子だ。

・彼は、仕事で失敗しても淡々としている。

・彼女は、自身の波乱万丈の人生について淡々と語った。

☆「坦々と」は「起伏がなく平らな様、物事が平凡に過ぎる様」

「坦々と」は、起伏がなく平らなことから、次のような状態を表現できる言葉です。

・大地・平野・地面・道路がどこまでも平坦である

・時間や物事の流れが大した変動・起伏なく(無事に)過ぎる様子

《例文》

・見渡せば、坦々とした平野がどこまでも広がっていた。

・あまりにも坦々と進む試合運びに、観客も帰り始めました。

・他人から見れば、坦々とした日々の連続かもしれない。

◇「たんたんとした口調」の場合、どちらの言葉を使うのか?

以上のことから判断すると、「たんたんとした口調」と平仮名で書かれている場合には、「淡々」を使うのがふさわしいでしょう。

ただし、言葉の発音に抑揚がなく、平らな道のように感じさせる口調だという意味でなら、「坦々とした口調」と書けないわけではありません。

表現する対象が「色・味・時間・日々・口調」など抽象的である場合、「淡々と」「坦々と」の書き分けは、主観に左右されることがあるので注意しましょう。

一方で、「たんたんとした道」は、「坦々とした道」です。「淡々とした道」とは書けません。

表現する対象が、「土地・道路」など物理的な物である場合には、明快に書き分けられます。

■同義語として誤用されやすい「淡々と」と「粛々と」の違いとは?

さて、次に音は違いますが、意味が似ていることから判断がつきにくい「淡々と」「粛々と」の違いについても説明します。

◇「粛々と」の意味は「静かにひっそりとした様」

「粛々」を辞書で引くと、次のように書かれています。

しゅくしゅく【粛粛】
(1)つつしむさま。
(2)静かにひっそりしたさま。
(3)ひきしまったさま。
(4)おごそかなさま。
(『広辞苑 第七版』岩波書店

上記から判断して、「粛々と」は、静かにひっそりとした様子や、引き締まった厳かな様子を意味する言葉です。

◇「粛々と」と「淡々と」の違い

「淡々と」「粛々と」は、静かな印象があることでは少し似通っています。

ただ、「淡々と」の静かな印象がぼんやりした、捉えどころのなさからくる静かさであるのに対し、「粛々と」には意図された静かさが感じられ、厳かな緊張感があります。

例えば、葬儀などで「彼は粛々と喪主を務めた」とあれば、感情の起伏を抑え冷静であろうとしている緊張感や厳かさが感じられます。

「淡々と」であれば、「彼は淡々と喪主を務めた」となり、そこに厳かな緊張感はなく、冷たい印象を与えるでしょう。

ちなみにこの場合、後述する「坦々と」を使うことはふさわしくありません。

◇「粛々と」と「坦々と」の違い

また、「粛々と」「坦々と」は、起伏のない印象があることで若干似ているように感じられます。

ただし、「坦々と」の場合には、物理的な起伏のなさであり、転じて抽象化した起伏のなさであるにしても、意図せずして平坦である様子がほとんどでしょう。

一方、「粛々と」の起伏のなさは、厳かで抑制的な平坦さです。そこには、行為の主体者が静かであろうとする意図が感じられます。

「淡々と」はどんな時に使えるのか?(例文付き)

ここまで述べた「淡々と」と「坦々と」「粛々と」の違いを頭の片隅に置きつつ、改めて「淡々と」を使った例文を挙げます。

◇色や風味があっさりしている様子を表す時

☆例文

・彼の日本画は、淡々とした素朴な画風で、多くの人に愛されている。

・秋の新作を試食したが、ビビッドな色合いからは想像もつかない淡々とした味だった。

・彼女は、淡々とした色合いの服に小物でメリハリをつけるのがうまい。

◇態度があっさりしている様子を表す時

・彼女は、つらかったはずの思い出をもう吹っ切れたかのように、淡々と語った。

・私には思い入れの深い企画だったが、後継者により淡々と進められた。

・今年の入社式は、初のオンライン化で淡々とした味気ないものにならないよう、随所に工夫が施された。

■「淡々と」の言い換え表現

「淡々と」と似たような意味の言葉は他にもいろいろあります。ニュアンスの違いを把握して、上手に使い分けましょう。

◇「超然と(ちょうぜんと)」

世俗にこだわらず、悠々としている様子を表す言葉です。

何かにおいて、抜きん出ている時にもよく使われます。

☆例文

・株価が暴落しても、彼は超然としてキーボードを叩いている。

◇「飄々と(ひょうひょうと)」

世俗とかけ離れ、こだわりのない様子を表す言葉です。

冷たさではなく、つかみどころのなさを伝えたい時に使います。

・その古本屋の店主は、飄々とした風貌には似つかわしくない、鋭い書評で知られている。

◇「泰然と(たいぜんと)」

落ち着いていて動じない様子を表す言葉です。

「こだわりのなさ」から何となく落ち着いて見えるわけではなく、「動じないこと」からくる確固たる落ち着きがある時に使います。

☆例文

・彼は、新入社員ながらも、泰然とした落ち着きがある。

◇「淡白な」

色や味、気性などがさっぱりしている様子を意味する言葉です。

冷たいわけではなく、ただ関心が希薄な時によく使われます。

☆例文

・彼は、名誉や金銭に淡白だ

◇「然有らぬ(さあらぬ)」

いかにもそうだという態度を見せない様子を表す言葉です。

意図的に平然としている時によく使われます。

☆例文

・K容疑者は逮捕されても、然有らぬという態度だった。

◇「あっさり」

単純でしつこくない様子を表す言葉です。

こだわりのなさから、すぐに辞めたり、諦めたりする時に使います。

☆例文

・今回は、あっさり諦めます。

◇「さっぱりした」

態度があっさりしていて、こだわらない様子を表す言葉です。

気持ちの良さを表現したい時に使うといいでしょう。

☆例文

・納品ミスをしてしまったが、取引先の部長はさっぱりしたお人柄で、「すぐに対応してもらったので、全然気にしていませんよ」と言ってくださった。

前後の文脈や受け手によって印象が変化する「淡々と」

「淡々と」は、一律に印象に残らなかったり、冷たかったりするわけではありません。

例えば、料理であれば、「淡々とした味」と聞いてぼんやりした味と思う人もいるでしょうし、上品な味と思う人もいるでしょう。

また、「淡々とした態度」が情けを乞う相手に対しての様子であれば、冷たいと感じられますが、試合に負けた後の様子であれば、悔しさを表に出していないのだと受け止められます。

どう受け止められるかは、前後の文脈や受け手にもよるのです。

誤解を避けたい場合には、紹介したような言い換え表現も用いてみてくださいね

(前田めぐる)

※画像はイメージです

知ってる? 「淡々」と「坦々」の違い