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 3000年前に南アジアでインダス文明が滅んだ原因については、砂漠化説、河流変化説、気候変動説、アーリア人侵入説など、さまざまな説がある。

 だが今回、新たに行われた数学的な証明によって、気候変動が原因だった可能性が高いことがわかったという。

 アメリカ・ロチェスター工科大学の数学者ニシャント・マリク氏は、モンスーンの季節が変わって干ばつが増えたせいで、インダス文明が衰退したという気候変動説を、数学的に裏づける新たな証拠を発見した。

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モンスーンの影響を数学的に分析

 研究チームは北インドの洞窟の石筍の中の特定の同位体元素を分析した。これにより、長い間に雨として降った水の量がわかる。その結果、過去5700年以上にわたって、この地域を襲ったモンスーンの降水量を推定することができた。

 そのデータから、マリク氏はインダス文明が始まったころにモンスーンのパターンに大きな変化があり、その後、文明の衰退と合わせるように逆の変化がみられるパターンを特定することができた。

「古気候学を分析して得られるデータは、たいてい短い時系列で、データの誤りや確実性に欠けることが多いのです」マリク氏は言う。

「数学と気候を合わせて考えるときに、気候や気象を理解するためにわたしたちがよく使うツールは、力学システムです。でも、力学システム仮説は、古気候学のデータに当てはめるのは難しい。でも、この新しい手法なら、短くて不確実要素や誤りの多い、古気候学などの難しい時系列における変化を発見できます」

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長い間に移り変わるインダス文明の居住地分布 image by:Rochester Institute of Technology

気候変動説を裏付ける分析結果


 マリク氏が特に関心を寄せているのは、めったにない出来事が突然、起こりやすくなる力学的体制の変遷だ。これは、降水パターンの変化から株式市場に至るまで、物理学、生物学、経済学にも適用できる。

 力学理論と、機械学習と情報理論に基づいたアルゴリズムの要素を合わせて、マリク氏は記録におけるギャップの一部を人工的に埋め、標準的なグラフには表われてこないパターンの確率を計算することができた。

 このやり方は、降水量のように統計の推定値に大きなギャップがあることが多い、過去の気候データを詳しく調べるのに適しているという。例えば、石筍の記録の場合は、実際には5年毎の夏のモンスーンをマークしているだけだ。

 最初に発掘された遺跡の名から、ハラッパー文明と言われることもあるインダス文明は、古代エジプトメソポタミアと並ぶ、南アジア北西部の三代文明のひとつだ。

 文明のピークには、インダス川上流の定住地は1500キロにも渡っていて、中には人口6万にも達する都市もあったと考えられている。

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image by:WIKI commons

 インダス文明時代の人たちを新しい土地に離散させた原因は、諸説あるが、今回の結果は気候変動説を裏付ける形となったようだ。

この研究は、学術誌『Chaos』に発表された。

Uncovering transitions in paleoclimate time series and the climate driven demise of an ancient civilization: Chaos: An Interdisciplinary Journal of Nonlinear Science: Vol 30, No 8
https://aip.scitation.org/doi/10.1063/5.0012059
References:New mathematical method shows how climate change led to the fall of an ancient civilization | RIT/ written by konohazuku / edited by parumo 全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52294849.html
 

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