新型コロナウイルスの感染防止策として、公共施設や商業施設などでは「マスク」の着用が推奨されていますが、そんな中、交通機関でマスク着用を巡るトラブルが相次いでいます。9月7日には、北海道の釧路空港発関西空港行きの旅客機で、男性がマスクの着用を拒否し乗客や客室乗務員を威嚇(いかく)したとして、旅客機が新潟空港に緊急着陸。同12日には、北海道の奥尻発函館行きの旅客機で、マスクの着用を拒否した男性が出発前に機内から降ろされました。

 マスクの着用を拒否した理由について、男性らは「健康上の理由で着用できなかった」などと説明しています。健康上、マスクが着用できないケースというのは、実在するのでしょうか。マスクを着用できない場合の対処法などについて、医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。

「感覚過敏」の人は頭痛も…

Q.健康上、マスクを着用できない事例というのは実在するのでしょうか。もし実在する場合、マスクを着用することでどのような症状が出るのですか。

森さん「マスクを着用することによって、心身に何らかの症状が出たり、悪化したりする人はいます。例えば、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚への刺激が原因となって、体に異変が生じる『感覚過敏』の人はマスクを着用することによって、顔や耳に痛み、かゆみが生じたり、頭痛が起きたりすることがあります。

また、『アトピー性皮膚炎』『接触性皮膚炎』など皮膚に症状が出やすい人は長時間のマスク着用によって、症状が悪化する場合もありますし、呼吸器系の持病による息苦しさからマスクが着用できないこともあります。このほか、認知症の人がマスクを着用した後にすぐ外してしまうケースも多いです」

Q.やはり、肌が弱い人はマスクを着用することで肌が荒れてしまうのでしょうか。

森さん「不織布や布のマスクが常に触れていたり、こすれたりすることによる刺激は皮膚の表面の角層(角質層)にダメージを与えます。角層が持つバリアー機能が低下すると、乾燥や炎症が起こりやすくなり、かぶれ、湿疹、ニキビなどにつながるほか、吐いた息や汗によってマスクの中が蒸れて症状が悪化することもあります。

マスク着用による肌荒れを起こしている人は多く、場合によっては症状の範囲が広がったり、強いかゆみや痛み、出血を伴ったりと症状が重くなることもあります」

Q.健康上の理由でマスクを着用できない人は着用できる人に比べて、感染症にかかるリスクは高いのでしょうか。

森さん「マスク着用が推奨される理由は『ソーシャルディスタンス(人と人との距離)』を保てない場合に、マスクによる飛沫(ひまつ)の拡散防止によって周囲の人に感染させるリスクを下げるためです。マスクをすることで、自身の感染リスクを下げるかどうかはいまだに分かっていないため、着用できない場合に感染リスクが高くなるかどうかは何ともいえません。

ただし、ウイルスが付着している可能性がある手を自分の口や鼻に触れさせないという点では、感染リスクを下げることにつながるため、マスクを着用していない場合は手で口や鼻を触れないよう注意が必要です」

Q.マスクを着用せずに外出することで、周囲の人を不安にさせる可能性やトラブルに発展する可能性も考えられます。健康上の理由でマスクを着用できない場合、どのように対処したらいいのでしょうか。

森さん「新型コロナウイルスは発症する前の症状がない人からも感染することが分かっており、また、発症しても無症状の人もいます。こうした人たちから、気付かないうちに感染が拡大することを防ぐために、『屋内や人が多く集まる場所では、症状の有無にかかわらずマスクの着用を』という『ユニバーサルマスク』の考え方が推奨されるようになりました。公共交通機関や商業施設など不特定の人が多く集まる場では、マスク着用が『お願い』として通知されています。

健康上の理由でマスクが着用できない場合は、周囲の人との距離を確保するようにし、なるべく会話を控えるか、ハンカチを口に当てるなどで飛沫の拡散を防ぐようにするとよいと思います。ハンカチを手に持っていると、突然のせきやくしゃみにも対応できます。もし、マスクの着用を要請された場合は『責められている』と受け取らず、まずは健康上の事情があることを相手に伝えることが円滑にコミュニケーションする上で大切です。

最近は、民間の団体などが健康上の理由でマスク着用が難しいことを知らせるマークを作成しており、バッジやキーホルダーで表示できるものもあります。心理的な負担を軽減するために、こうしたグッズを身に着けるのも一つの方法です。

施設を運営する側は健康上の理由でマスクが着用できない人がいることをスタッフで共有し、施設全体で理解していくことが大切です。マスク着用をお願いする掲示には、健康上の理由で着用できない客がいることも記載することで、理解を広げる一助になるでしょう。施設、業種によっては、マスクを着用しないとサービスの提供が難しい場合もあると考えられるため、その場合は、利用にあたっての規定や注意事項にその旨を明記することが必要なのではないでしょうか」

Q.健康上の理由ではないものの、マスクの着用を控えた方がいいケースはありますか。

森さん「乳幼児はマスクによる息苦しさや体調の変化を訴えることが難しく、自分でマスクを調節したり外したりすることができません。そのため、窒息や熱中症などの危険があります。特に、2歳未満の子どもの場合、顔を覆うことによる窒息の危険性が高いため、マスクの着用を控えるよう、公益社団法人日本小児科学会をはじめ米国小児科学会や米国疾病予防管理センターからも注意が呼びかけられています。

高齢者は加齢により、聴力が低下し大きな声になりやすいため、飛沫の拡散も多いと考えられます。また、重症化リスクも高いので、人が多く集まる場所では特にマスクの着用が重要です。しかし、温度を感じる機能が加齢に伴って低下する傾向もあるため、気温や湿度が高い場所ではマスク着用による熱中症リスクが高まります。環境によっては、マスクを着用しない方がいい場合もあります」

オトナンサー編集部

マスクが着用できないケースも?