新型コロナウイルスの感染拡大は収まる気配はなく、経済状況の逼迫は拡大の様相を見せている。企業の倒産は右肩上がりで、厳しい舵取りが予想される。リストラされ苦しむ人々がいる一方で、経営者側にも並ならぬ苦労がある。今回は実際に会社の倒産を決意した社長に取材した。

◆告白!なぜ社長は潔く会社を清算できたのか?

 労働者を解雇する身の経営者側は倒産をどう思っているのか。青森県宮城県カフェ他5店舗を展開する「イロモア」の社長だった福井寿和氏は4月下旬、全店舗の閉鎖と会社倒産を決断した。福井氏は当時の自分をこう振り返る。

「日中は突然動悸が激しくなって、息ができず、夜もろくに眠れない。何にも集中できず、うつ病のようでした。妻子のことを考えると首をくくるわけにはいかないが、『この場所からいなくなりたい』という気持ちをずっと抱えていました」

 なにしろ傘下の各店の売り上げは壊滅的で、3月上旬から徐々に客足が減り、下旬には普段は満席の店内も土日でさえガラガラ。日々の売り上げは例年の2〜3割に落ち込んでいた。

 さらに4月に入ると、コロナ感染の恐れから、従業員の間にもピリピリした空気が漂い始めた。試しにアンケートを取ってみると、「感染が怖いので出勤したくない」という声が7割を占めた。そこで福井氏は一旦全店舗を休業し、その期間中の賃金は保証すると従業員に約束した。

「給料の総額は毎月400万円ほど。資金繰りを計算すると、資金調達がなければ8〜9月には倒産が確定した状況でした。資金調達をするか、それとも倒産するか、この二者択一になったわけです」

◆経営者保証に関するガイドラインが後押しに

 そこで福井氏は、倒産を選ぶ。

「多くの飲食店がテイクアウトを始めましたが、カフェに来るお客さまは、おしゃれな店で飲食を楽しむという体験を買いに来ているわけで難しいんです。取り巻く事業環境が大きく変わるなかで、打開策を見いだせない以上、新たに借りても返せるあてがなく、金融機関にさらに迷惑をかけてしまう。ならば、畳もうと思ったんです」

 その時点での会社の負債総額は9000万円。代表者として連帯保証をつけている以上、福井氏の自己破産は必至のはずだった。

金融庁中小企業庁が推進する『経営者保証に関するガイドライン』が後押しになりました。これは、早い段階で倒産を決めて金融機関に一定額の返済をした誠実な経営者については、連帯保証を外そうというものです。債務免除になるかもしれないのは、心強かった。

 元従業員たちの『(倒産を)早く決断してくれてよかった』という声にも救われていますね」

 従業員や取引先に誠実に向き合い、保身に走らず正しく倒産すれば、資産を失うことにはなるが、信用は残る。今苦しむ全国の社長たちに、そう伝えたいという。

<取材・文/武馬怜子(清談社)>
※週刊SPA!9月15日発売号の特集「[会社がヤバい!]を見抜く」より

―[[会社がヤバい!]を見抜く]―


店の閉鎖にあたって、従業員たちと片付け作業をした福井氏(左)。早い段階で倒産を決めた社長の判断には、好意的な反応が相次いだ