株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、スマートカーの世界市場の調査を実施し、関連技術分野の動向、主要自動車メーカの取り組み、将来展望を明らかにいたしました。

1.市場概況

2016年にDaimlerがクルマに大きな変化をもたらす4つのトレンドとして「CASE(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric)」を提唱して以降、このキーワードは今後のクルマの開発方向性を示すものとして、業界に広く浸透した。しかし、現実にはCASEが提唱されて4年の年月が経過しても、進化のスピードは想定より遅い。環境規制や人々の需要からCASEの流れは不可逆的であるものの、新型コロナウイルス感染症COVID-19)が経済に深刻な打撃を与えているアフターコロナ時代では、自動車販売台数の減少や膨らみ続ける開発費などから今まで以上に困難な道のりとなる。

本調査では、CASEを高い次元で実現したクルマとしての「スマートカー」をCASE発展の1つの指標とし、V2X(Vehicle to X)通信機能とレベル4の高度自動運転システムを搭載したEV(Electric Vehicle)をスマートカーとして、その世界生産台数を予測する。

2.注目トピック~MaaSはスマートカーのドリブンとなる

スマートカーを実現させるにはカメラやLiDARなどの各種センサ、高容量LiB、通信モジュールなど高額なコンポーネントを多数搭載する必要があり、それらを車両価格に転嫁した場合、POV(Personally Owned Vehicle:個人所有車)での実装は一部の高級車に限られる。このため、POVにおけるスマートカーの広がりは限定的で、むしろタクシーやシェアリング、バス、特殊目的のミニバンなどの「MaaS専用車両」にスマートカーが先行して採用されると考える。

MaaS(Mobility as a Service)は、あらゆる移動手段を組み合わせて価値を提供するエコシステムであり、交通手段と充電、駐車をワンストップで提供する役割(「基本のMaaS」)の上に、移動先での目的となる飲食や観光といった周辺サービスも一元化させることで移動需要そのものを喚起させる役割(「目的のMaaS」)が内包された概念である。そのため、ネットワークとの通信や移動中のコト消費が可能となるスマートカーは活躍できる領域が広い。

3.将来展望

スマートカーの普及は複数かつ複合的な要素によって市場が成立するため、ピンポイントでの予測はできない。例えば、V2X(Vehicle to X)通信は、従来検討が進められていたDSRC(Dedicated Short Range Communication)方式ではなく、セルラー方式を採用する勢いが増しており、仕様の改定やサイバーセキュリティ対策を進めるべく技術検証や更なる開発投資が必要となっている。
EVではNEV(New Energy Vehicle)規制やCAFE(Corporate Average Fuel Efficiency:企業別平均燃費基準)規制などの環境規制の厳格化に伴って、政策に強制される形で一定の普及が進んでいく見通しである。一方で、2019年に購入補助金が減額された中国では、2019年下期のNEV販売台数が前年同期比30%減と大幅に低下したことから、消費者目線では未だ補助金ありきの商品であると捉えられている。

それらの状況とその他の規制動向、実証実験の進捗具合などを踏まえ、本調査では2035年時点において、EVやレベル4の高度自動運転システムの普及率を高低で2パターンの予測をしつつ、さらにMaaS専用車両1台でPOV(Personally Owned Vehicle:個人所有車)の大衆車およそ3台と置き換わるシナリオをDrasticな予測、MaaS専用車両1台でPOVの大衆車およそ2台と置き換わるシナリオをConservativeな予測とした。
2035年のスマートカー世界生産台数は、Drasticな予測で1,141万台(市場全体生産台数の9.2%)、Conservativeな予測では148万台(同1.2%)に拡大すると予測する。

※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
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調査要綱
1.調査期間: 2020年6月~8月
2.調査対象: 国内・海外主要自動車メーカ、自動車部品サプライヤ、半導体・電子部品メーカ等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話取材、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2020年08月31日

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