◆飲食店経営者は青息吐息

 新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的に、酒類を提供する店などに営業自粛、営業時間短縮の「お願い」が各自治体から出されて、もう数か月が経つ。その間に営業を諦めたという経営者も少なくない。一方、なんとか続けてきた経営者のほとんどが青息吐息。いつ潰れてもおかしくない、というギリギリの状態だ。そんななか、9月に入ってから東京都では“夜の街で感染ゼロ”というニュースが流れた。

 これでひと安心と思いきや、経営者たちからは波紋を呼んでいる。

東京都の“夜の街で感染ゼロ”に波紋

 テレビや新聞で流れたのは次のようなニュースだった。大手紙都政担当記者が説明する。

東京都は、6月以来ついに“夜の街で感染ゼロ”になりました、取り組みが間違っていなかったのだと胸を張り、その成果を会見などでアピールしていました。一応、報道しましたが、本当にそうなのかと言われると、取材していた記者たちも疑問を持っています」(大手紙都政担当記者)

 東京都港区の飲食店経営・増本達人さん(仮名・40代)が怒りを込めて言う。

「営業自粛の協力金もわずかになって、うちを含めたほとんどの店が、感染対策なんてろくに取ってないよ。アルコール消毒、従業員のマスクはするけどさ。感染者が激増していた時期より、今のほうがガンガン営業してんのよ? それで“夜の街で感染ゼロ”? 信じらんないね」(増本さん)

 実際、“夜の街で感染ゼロ”とは言っても、感染経路不明者がいる。そのため、本当に「夜の街経由」の感染がなかったのか、これはかかった本人を含めて誰にもわからないのだ。

 前出の記者が言う。

感染者が接待を伴う飲食店に行っていたとしても、役所や保健所の聞き取りに対して正直に答えないというケースは今もザラにある。夜の街で感染ゼロ、なんてどんな計算をしても導き出されることは不可能なはずなのに、とは思いましたね」(前出の大手紙都政担当記者)

◆再び感染者が増加した場合の懸念

 こうした報道があったことで、内外に「営業自粛、営業時間短縮の要請」自体が正しかったと受け取られてしまうと、飲食店は追い討ちをかけられるような状態になりうるという。東京都練馬区の飲食店経営・菅野祐一さん(仮名・30代)が訴える。

「東京は、23区とそれ以外で営業時間短縮要請に“差”までつけられた。練馬区のうちは早い時間に店を閉めなきゃだけど、数百メートル離れた西東京市、埼玉の新座市では、営業時間の制限はない。こんなバカみたいな不公平はあり得ないと反発しようとすると、“夜の街で感染ゼロ”のニュースでしょう?

 また感染が拡大し始めたら、行政の“要請”がより強いものになっちゃうよね。それこそ、協力金なしでも休め、みたいな空気になることが怖いですね」(菅野さん)

 東京都新宿区のナイトクラブ経営・西畑ヨウジさん(仮名・40代)は、「今後、行政や自治体の要請は全て無視する」と言い切る。

「夜の街で感染ゼロ、だとしたら、他に感染が広がっているところは、夜の街みたいに全部閉めろよって言いたいね。だからもう言うことを聞くのはやめて、ガンガン営業することにした。若いやつがかかっても死ぬ確率は低い。若者だってインフルで死ぬこともあるんだから。中高年の客は確かにこないけど、若い客が増えた。俺も中年だから気をつけないとね」(西畑さん)

 東京都では、これまでの取り組みに一定の抑制効果があったとして、9月16日から時短営業の要請が解除された。だが、これからの季節にインフルエンザの流行と重なり、感染者が増えてしまったときに、果たしてどうなってしまうのか……。<取材・文/森原ドンタコス