最終回を迎えたばかりのTVアニメ「デカダンス」。作品の魅力を掘り下げるリレー連載第19回は、撮影監督の魚山真志さんのインタビューをお届けします。「デカダンス」を彩る光や影といったエフェクトのこだわりを伺いました。

TVアニメ「デカダンス」より

――本企画に関わることになった簡単な経緯を教えていただけますか。

魚山 社内のオリジナル作品を手掛けるのでやってみないか?と言われ、面白そうだったのでお受けしました。

――最初に設定や資料をご覧になってどのような印象をお持ちになりましたか。

魚山 荒廃した世界観やSFチックなサイボーグ世界観など、見ていてワクワクしました。

――光と影の演出や全体の撮影処理を考える上で、どのようなテーマ、方向性にしたいと考えられましたか。

魚山 できるだけ陰影をハッキリ出したいと考えて作業していました。光の処理は監督からの指示もあり画面内にアクセントで光やレンズゴーストなどの処理を乗せています。サイボーグは、監督からチープ感を出したいとのオーダーがあったため、パラ(カメラにパラフィン紙をかけるように影を落としたり、グラデーションをつけたりする撮影処理)など注意して処理を乗せていました。あまりしっかり乗せすぎると立体感が増してしまいそうでその辺は気を使いました。

――ほかに監督からあった印象的なオーダーは何かありましたか。

魚山 立川監督からのオーダーで特に気を付けていたのが空気遠近感(遠くの風景が淡く霞んだ色合いになる遠近法の一つ)です。デカダンス自体が超巨大要塞で、それを遠くから見た場合の見せ方などを注意していました。背景の山などは最初から空気遠近がかかっているのでそれに合わせつつ、デカダンスが埋もれてしまわないようカット内容に合わせて調整しました。

――人間たちの住む世界、サイボーグたちの住む世界と環境が大きくことなる世界が描かれます。それぞれの世界でどのようなことを大事にされましたか?

魚山 人間たちの住む世界は光や空気遠近感を意識して作業しており、パラやフレアで画づくりをしました。キャラクターの色が大きく変わらない程度にリアルめな処理をしています。逆にサイボーグの世界では、全体的にチープで平面的な感じが出るように画づくりをしていました。

――キャラクターもギア、タンカー、サイボーグと多岐にわたります。キャラクターの見せ方でのご苦労などはありましたか。

魚山 ギア、タンカーは特にありませんでした。サイボーグに関しては、ギア、タンカーと差異を出すために、輪郭線と色トレス部分の色を拾って線を太くさせています。

――特に大変だった作業はなんでしょうか。

魚山 デカダンスキャノンを打つところの一連の作業が大変でした。セル、CG、背景を合わせて最終的に画づくりするのですが、一連を繋げ光源、露出などの調整をし派手に画面を見せられるようにいろいろと試行錯誤しました。

――改めて、「デカダンス」に参加しての感想や手応えを聞かせていただけますでしょうか。

魚山 いろいろと大変なカットの内容もあったりしましたが、最終話まで完成させられてよかったです。巨大なもの同士の戦闘の表現を頑張りましたので、迫力ある映像を感じてもらえたら嬉しいです。(WebNewtype・【取材・文:岩倉大輔】)

TVアニメ「デカダンス」より