【J番記者コラム】仙台に勝利し今季2度目の3連勝 ブラジル人FW3人で総得点の6割超え

 横浜F・マリノスベガルタ仙台を3-1で破り、今季2度目の3連勝を飾った。そのチームをけん引しているのが前線のブラジル人トリオだ。

 昨季得点王のFWマルコス・ジュニオールはここまで11得点、昨夏に加入して12試合で8得点を挙げたFWエリキと、今夏に加入したFWジュニオール・サントスは7得点ずつ。現在、攻撃のフロントラインを形成する3選手はここまで計25得点を挙げ、チーム総得点40のうち実に6割以上を彼らだけで叩き出している。

 この活躍にはチームメートも目を見張るばかり。ボランチとしてゲームコントロールのタスクを担うMF扇原貴宏は、「のびのびとプレーしてくれていると思うし、今のシステムにやりやすさを感じてくれていると思う。個の能力がある選手たちが得点を取ってくれていて心強い」と手応えを感じ取っていた。

 横浜FM9月9日の第15節名古屋グランパス戦(1-2)から3バックを採用。それに伴い、翌節のセレッソ大阪戦(1-2)から前線を元来の3トップから1トップ2シャドーに変更した。3トップ採用時はJ・サントスがセンターフォワード(CF)、エリキが左ウイング、そしてM・ジュニオールがトップ下を務めていたが、スタートポジションの変更によってそれぞれの距離が近くなり、コンビネーションプレーがよりスムーズになった。

 シャドーとなり中央寄りに立ち位置を変えて以降、最近4試合で6得点を挙げているのがエリキだ。昨季終盤はCFとして身体能力の高さと献身的な守備で優勝に貢献したアタッカーだったが、今季はチーム編成の都合によって左ウイングプレーする機会が増えていた。

 タッチラインを背負ってプレーするウインガーは、ボールを受ける時点では前を向きやすい。しかし1対1のドリブル局面で対面の選手をかわせないエリキはスピードダウンを繰り返し、加えて利き足の右足にボールを持ち替えるために攻撃がスローダウンする傾向にあった。

 ところがシャドーポジションに移ってからは、DFを引き連れながらサイドに流れてもスピードを落とさず、フィニッシュやラストパスに持ち込めている。仙台戦の先制点はまさしくその形で、プレッシャーを受けている状況でも相手を上回るだけのスピードと爆発力を秘めているというわけだ。

熾烈な前線のポジション争い、負傷から復帰する仲川をどう組み込むか

 また、右ウイングバックの位置から鋭いクロスを供給しているMF水沼宏太も、システム変更によって存在感を増している1人。元々精度の高いクロスに定評のあった水沼だが、横浜FMウイングを務めるにはスピードと局面打開能力に物足りなさもあった。

 それがウイングバックにポジションを変えたことで、高いクロス精度はそのままに起点となる球出しでも得点に絡んでいる。一般的にはコンバートの印象が強い起用法でも、ポゼッションで優位に立てる場合が多い現行のスタイルにおいては、この位置が水沼のベストポジションかもしれない。

 仙台戦では序盤に先制を許したが、ブラジル人トリオのゴール&アシストであっさりと逆転に成功。そしてゲーム終盤、交代でピッチに登場したのが昨季11得点のFWエジガル・ジュニオ、大分トリニータで10得点を挙げたFWオナイウ阿道、そして東京五輪世代のストライカーで圧倒的なスプリント能力を武器に持つFW前田大然の3選手なのは贅沢の極み。疲労がピークに達する終盤にフレッシュで能力の高いアタッカーが続々と投入されるのだから、相手にしてみたらひとたまりもない。

 次なる課題は、もうすぐ負傷から復帰する昨季MVP&得点王のFW仲川輝人をいかにチームに組み込むか。順当ならばシャドーの一角をエリキと争うことになるが、ポジションを争う仲間が目に見える結果を残しているだけに、仲川にかかるプレッシャーも相当なものになるだろう。

 今季ここまで2得点と思うように結果を出せず、度重なる負傷にも苦しむ背番号23は、チームのさらなる浮上に必要不可欠。しばらくはトリコロールの前線から目が離せそうにない。(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)

横浜FMで躍動する前線の“ブラジル人トリオ”【写真:小林 靖】