コルベットがミドシップ化された理由
最新のC8コルベットが、ミドシップなことはご存知だろう。スモールブロックと呼ばれるV8エンジンをフロントノーズから取り出し、ドライバーの後ろへ搭載する。進化した概要は、わかりやすい。
シボレーのエンジニアは、フロントエンジン・リアドライブの可能性を追求してきた。だが、サーキット性能をさらに引き上げるにあたって、ミドエンジン・リアドライブは避けられない選択だったのだろう。
さらに重要な、別の理由もある。フロントエンジンのスポーツカーは、オールドファッションなのだ。
例えば、ジャガーEタイプ、アストン マーティンV8ヴァンテージ、フェラーリ・デイトナ。オジサン世代の心を揺さぶるスポーツカーたちは、どれもFRだった。
一方で若い世代のクルマ好きにとって、高性能なスポーツカーといえば、ミドシップというイメージがある。ポルシェ911を除いて。動的な性能だけでなく、クルマのフォルムにも関係している。
2019年のジュネーブ・モーターショーで発表された、ヴァンキッシュ・ビジョン・コンセプト。アストン マーティンによるミドシップ・スポーツの新提案だったが、同じような背景があるはず。
大胆な変化には、リスクもある。コルベットは、戦後のベビーブーム世代のドライバーが、コアな購買層になっている。スポーツカーはFR、というイメージを持つ世代だ。
ラスベガスに集合した8世代のコルベット
ミドシップ化の理由は、ベビーブーム世代も理解はできるはず。しかし、コアなコルベット・ファンを一晩で若返らせることは難しい。
熱烈なファンは、最新のC8コルベットをどう見ているのだろう。それを知る方法はただ1つ。直接聞いてみるしかない。
英国編集部は、アメリカ・ネバダ州ラスベガスまでやって来た。砂漠が目前に広がる、ブートレッグというイタリアン・レストランの駐車場が、今朝の集合場所。
ラスベガスは、シボレーがC8コルベット・スティングレーの国際発表を行った街。今日はこれから、東のミード湖までロードトリップを楽しむ。明日は、西のスプリング・マウンテン・サーキットで、スポーツ走行の予定もある。今からワクワクする。
見事な快晴となった、日曜日の朝。ラスベガス・コルベット・アソシエーションという、巨大なコルベット・ファンクラブのメンバーへ合流する。
先月、筆者はクラブの会長を務める、ベニータ・クレイズナーへ連絡をとった。最新のC8コルベットをオーナーズクラブに披露し、どう感じたのか印象を聞いてみたいと。
初代C1からC7まで、各世代のコルベットに来てもらうことも可能か尋ねてもみた。興味本位で。
ベニータは有言実行の女性だった。今朝、ブートレッグの駐車場には、7世代にわたる色とりどりのコルベットが並んだ。そして、シボレーの担当者が持ってきた、最新の黄色いC8が加わった。
特にスタイリッシュなC1
「ほかのメンバーが加わっても構いませんか」。と彼女は尋ねてきたので、「もちろん。むしろ歓迎します」。と筆者は答えた。その結果揃った、見事なコルベットたち。素晴らしい眺めだ。
初代のC1コルベットが、特にダイナミックな走りをしないことは、経験で知っている。ポルシェやジャガーに並ぶスポーツカーを生み出すことは、簡単なことではなかった。
しかし1958年式のC1コルベットは、これまで誕生したスポーツカーの中でも、際立ってスタイリッシュなモデルであることに間違いない。オーナーのダン・クロシェが、説明してくれた。
「大学卒業後に、1981年式のコルベットを購入しました。このクルマは、22年前に手に入れたものです。C2が欲しかったのですが、妻はC1が好きだと話していて、悩みましたね」
「1958年のC1は、ウォッシュボード・ボンネットとクロームのブーツ・ストラップが付いている、唯一の年式。派手だという批判的な意見もありますが、特別だと知るほどに、手に入れたい気持ちが強くなりました」
「283cu.in、4.6LのV8エンジンに4バレル・キャブレターを2基積んでいます。最高出力は248ps。1990年にレストアが完了し、今は山道を楽しむために、月に1度はガレージから外に出しています」
ダンは、C8コルベットに興味はあるという。でも、1958年式と置き換わることはないだろう。
別のメンバーにも話を聞いてみよう。スリム・スティーブンスも、コルベットのオーナーとして、かなりの経歴を持っている。
C7に積める荷物は、C8にも積める
「この1965年式のC2コルベットは、数年前にやって来ました。前オーナーの頃から、10年ほど自分が面倒を見てきたクルマなんです。327cu.in、5.4Lのエンジンには、新しいカムとマニフォールドを組んでいます」
「これからホーリー製のEFIシステムと、4速MTを積もうと考えています。過去には、ビッグブロックを積んだ1964年式クーペにも乗っていました。1973年には、C3を新車で購入しています」
スリムは、C8コルベットの実用性を気にしている。荷物用のスペースが、ほとんどないと考えているようだ。
実は、C7コルベットのリアに積める荷物は、そのままC8のフロントとリアの荷室へ分けて積むことができる。シボレーのディーラーでも、同じような説明を何度もするのだろう。
カナダ出身のベニータ・クライズナーも、かなりのコルベット・ファン。チェコスロバキア出身の男性と結婚し、アメリカで暮らしている。2013年式のC6グランスポーツ60thアニバーサリー・コンバーチブルと、2015年式のC7スティングレイを所有している。
1972年式のC3もレストア中だという。「C8は注文済みです。納車が待ちきれません。これまで所有してきたコルベットは、新しいほど内容も優れていました。最新のC8も、きっと良いはずです。スタイリングも気に入っています」
この続きは後編にて。
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シボレー・インパラ(1965年)「ジプシー・ローズ」
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