吸血リスの食生活が明らかに

吸血リスの食生活が明らかに image by:Swapna Nelaballi

 インドネシア、ボルネオ島に広がる熱帯雨林で暮らしている希少種「フサミミクサビオリス(学名 Rheithrosciurus macrotis)」は、世界で一番もっふもふな尻尾が自慢のリスだ。

 体長は38センチほどで、一般的な樹上性リスより2倍も大きい。そこからさらに30センチも伸びている銀色の尻尾は、ほかの部分の3割も大きなふさふさ具合だ(関連記事)。

 地元では動物の生き血を吸い、内臓をむさぼる「吸血リス」として知られていたが、実際には、その生態はよくわかっていなかった。この度、新たなる研究によりその食生活が明らかになったようだ。

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フサミミクサビオリスは本当に吸血リスなのか?

 フサミミクサビオリスは、とても愛らしい姿をしているのに、どういうわけだか「吸血リス」などという忌まわしい名で呼ばれている。

 地元のハンターたちの話によると、フサミミクサビオリスは枝の上からシカに飛びかかり、ノコギリのような歯で首の血管を切り裂いては、内蔵を喰らうのだという。

 2014年の『Science』でもそんな風に紹介されたことで、界隈ではすっかり吸血リスのイメージが定着してしまった。

 だが、それはどうやら濡れ衣だったようだ。今回、その生態が初めて本格的に調査され、吸血リスなどではないらしいことが明らかになったのだ。

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image by:RONA DENNIS

森で一番硬い種が大好き


 アメリカ・ミシガン大学をはじめとするグループは、ボルネオ島グヌン・パルン国立公園の熱帯雨林に分け入り、数年がかりでこの幻のリスの生態を研究した。

 その間、エサを食べている姿は79回ほど観察されたが、噂されているようにムンチャク(犬くらいの大きさのホエジカの仲間)に襲いかかることはなかったそうだ。

 それでもフサミミクサビオリスの好みはかなり特殊だ。

 カンランの仲間(C. decumanum)とユーカリの仲間(M. leptopoda)の種ばかりを食べていたからだ。どちらも熱帯雨林では一番硬い種を結ぶことで知られている木だ。


Stable copy of Borneo tufted ground squirrel

吸血リスというよりは暗殺リス?

 研究グループは、ほかの動物と比較した結果、フサミミクサビオリスは森にもっとも特化した分類群であると述べている。

 彼らが食べている種はハンマーを使っても砕くには一苦労するほどの硬さで、ほかの動物にとっては実質的に食べることができないものなのだ。

 つまりフサミミクサビオリスは、そうした種を食べられるように特化することで、競争相手の少ないニッチに適応したのである。

 上顎と下顎に生えた長い門歯は、まるでノコギリのようだ。研究グループによれば、これまで記録されてきたどんな動物の歯とも違っており、このことからも特殊な食べ物に合わせて適応を遂げたと推測できるのだそうだ。

 超硬い木の実バリバリ砕くその鋭い歯で背後から首筋を噛みつかれたら、人間だってただではすまないだろう。

 こうした特徴を鑑みると、「吸血リス」よりも「暗殺リス」というニックネームの方が相応しいのではなかろうかと、研究グループは述べている。


Bornean Tufted Ground Squirrel

フワフワの尻尾は何のため?謎多きフサミミクサビオリス

 フサミミクサビオリスは、どうやら吸血リスではないことはわかった。だが、不思議なリスであることには違いない。一番の近縁種は南米に生息するリスで、800万年以上前に分岐したと考えられる。

 しかし北アメリカでもアジアでもその祖先の化石が発見されていないために、一体どのようにしてボルネオ島にたどり着いたのか謎に包まれている。

 尻尾には体をより大きく見せる効果があるため、ウンピョウのような捕食者から身を守る上で役に立っているかもしれない。また襲われたとしても、フワフワの毛のおかげで掴まれにくい可能性もある。

 こんな素敵な動物だが、他の動物と同じ課題を抱えている。

 「インドネシアをはじめとする熱帯の森は、懸念すべき速さで失われており、そこで暮らす種の生態について、基本的なことすら分からないまま絶滅してしまうリスクがある」と、研究論文(現在『bioRxiv』(8月3日投稿)で未査読版を閲覧可)は警鐘を鳴らしている。

References:iflscience/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52294968.html
 

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