このほどアメリカである高齢女性の家が「6セント(約6円)」の税金未納のために売却され、女性があわや自宅を失う危機に瀕するという事態に発展した。女性は89歳と高齢かつアルツハイマー型認知症を患っており、娘のリサさんはTikTokおよびTwitterを通じて市の対応や徴税システムを非難している。『Daily Mail Online』『NBC New York』などが伝えた。

今月9日、米ニュージャージー州モンマス郡のオーシャン・タウンシップに住むグレンクリスティゴールデンサールさん(Glen Kristi Goldenthal、89)の家が2019年度の税金未納分6セント(約6円)とその利子300ドル(約31600円)が支払われなかったために売りに出されてしまった。

グレンさんの家が売りに出されていることに気付くと、バージニア州に住む娘のリサ・スーヘイさん(Lisa Suhay)はすぐに未納金を支払い、各所へ連絡を取った。これによってグレンさんはなんとか家の売却を免れた。

たった6セントの支払いで母が家を失いかけた事実と、グレンさんへの市の対応に疑問と深い憤りを覚えたリサさんは、SNSにその時の様子をこう明かしている。

「今日、私は丸一日かけて母の家を(差し押えた物件の)公売から救うために奔走しました。」

「母はアルツハイマーなので何が起こっているのか覚えていられなくて、しかも母はそれが恐怖でまた恥ずかしく、とても不安で、とても心配で…私にはどうも言いたくなかったみたいです。」

パンデミックの真っ只中にある89歳女性の自宅を税金のため売却しようとしたんです。母がいくら未納だったのか知りたい? 6セント、6ペニーです! それだけのために家を売ろうとしたのよ!」

リサさんによると、グレンさんはさらに400ドル(約42000円)ほどの手数料と、売却を新聞に掲載するための広告費まで請求されていたそうだ。

売却に至るまでにグレンさんは一度警告を受けていたようだが、彼女の病気ゆえに状況が把握できなかったか、もしくは警告を忘れてしまったようである。

またグレンさんのもとには男性の徴収職員から直接電話があったが、男性はグレンさんの理解力に疑問を持ちつつも対応を行わなかった。リサさんは徴収職員との会話を『NBC New York』にこのように話している。

「どうやら徴収担当の男性は母に電話をしていたようです。彼は私に『母が理解しておらず、何かがおかしいと気づいた』と言いました。」

「私が『ちょっとごめんなさい、あなたは今日たった6セントの未払いのために母の家を売るのね』と伝えたところ、彼は『ああ、こういうことが雪だるま式に膨れあがってすすんでいくんだね、すごいことだよ』と言ったんです。」

リサさんはどうにか母親の家の売却を防ごうと市長をはじめ、町役場で働く人へ連絡がつく限り電話をかけた。この電話によって事態を把握したクリストファー・シチリアーノ市長(Mayor Christopher Siciliano)は「当然のことながら、町が誰かの家を6セントで売りに出すのは本当に恥ずべきことだし、愚かだ」と話し、グレンさんへ謝罪を述べている。

また市長は徴税システムの見直しが必要であるとも認めており、以下のように説明した。

「税金の支払いは4半期ごとに分割して払い続けることが出来ますが、過去の支払いがきっかけとなって最終的に今回のように税金による家の売却に結びつくことがあります。」

「システムはすべてコンピュータによる管理なので、人の手で修正できるものではないんです。」

シチリアーノ市長は売却が行われてしまう前に、どれほどの負債額なのかによって売却制限を設けるための法律を作るように州当局に働きかけたことを明らかにした。

リサさんは今回の市の対応について「大勢の人がいるオフィスの中で、たった6セントを出すことができないなんて! なんでもっと柔軟な発想ができないの! 恥を知りなさい。10セントくらい自腹で出せないの?」とその怒りを露わにした。

その後、グレンさんは家の売却を免れたものの心配と不安が拭えず、24時間のうちに何十回もリサさんに「私の家は大丈夫なの? 荷造りしないといけないの? どこに行けばいいの? どこに住めばいいの?」と電話で確認してきたそうだ。

たった6セントほどで家を失ってしまっては後悔してもしきれない。コンピュータを使った仕事は効率よく便利だが、今回の事態のように人の心遣いが必要となる柔軟性ある対応ができないのが難点だ。コンピュータに頼りすぎるのも問題である。

画像は『LADbible 2020年9月18日付「Woman With Alzheimer’s, 89, Almost Loses Home Over Six Cent Tax Bill」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 YUKKE

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