全国の高速道路には、多くの人でにぎわうSAがある一方で、PAのなかには、規模がかなり小さいものがあります。立地が不思議だったり、美しい風景が見えるものも。全国の主要な高速道路からいくつか紹介します。

真横をクルマが高速で走り抜けていく

全国の高速道路の休憩施設はパーキングエリア(以下、PA)とサービスエリア(以下、SA)に大別されます。PAはSAに比べて簡素な施設なつくりであることが一般的です。

その中でも、特筆して規模が小さく、都市部にあっても鉄道でいう「秘境駅」のような趣を漂わせるPAをいくつか紹介します。

由比PA(東名高速、静岡市清水区)

東海道のかつての難所「薩埵(さった)峠」の麓で、東名高速国道1号東海道新幹線が崖下の海岸線を走るビュースポットに位置します。下り線は駿河湾の水際近くに狭いスペースが設けられ、そこにトイレや展望台を兼ねた小さな建屋があります。駐車場は縦列駐車で、本線とを隔てるものはガードレール1本だけ。雰囲気はまるで新幹線の、待避線のみにホームがある駅のようです。

上り線にはかつて食堂や売店があり、狭いながらも賑わっていましたが、2020年5月に撤退してしまいました。今やこちらも新幹線の通過駅の趣ですが、海が間近に見える点では、下り線のほうが楽しめそうです。ただし、下り線エリアは初日の出を拝もうとする人も多いことから、正月には閉鎖されることが多くなっています。

羽島PA(名神高速、岐阜県羽島市)

新幹線といえば、名神高速の羽島PAも本線とガードレール1本で隔てられた簡素な構造ですが、海ではなく、東海道新幹線がすぐ目の前を並走しています。新幹線を最も間近で見られるPAと言ってよいでしょう。

料金所の脇の「くぼみ」にPAが!?

首都高にも極小のPAがあります。

大師PA(首都高K1横羽線、川崎市川崎区)

大師PAは駐車台数わずか9台、トイレと自動販売機があるだけの極小サイズです。大師料金所の脇に設置されており、ブースを出た左手の目の前に駐車マスがあります。入口と出口という概念すらあやふやな、まるで「くぼみ」のようなPAです。

駒形PA(首都高6号向島線、東京都墨田区)

駐車台数では、大師PAよりも規模が小さかったのが駒形PAです。もともと6台でしたが2019年の改修で10台になりました。

本線から分岐し、駒形入口料金所のブースに吸い込まれるように通行すると、本線との間に小さな建屋が見えてきます。料金所の屋根は2レーン分あり、そのうちの1レーンが駒形入口の料金ブース、もう片方がPAの通路を覆っているという構造です。屋根をくぐるとそのまま駒形入口から来たクルマと合流、一体になって本線に合流していきます。

新旧「ミニミニPA」横綱は…

阪神高速には、その名も「ミニPA」が2か所存在します。

森小路ミニPA(阪神高速12号守口線、大阪市旭区)&弁天町ミニPA(阪神高速17号西大阪線、大阪市港区)

阪神高速のPAのなかで「ミニPA」を名乗るのが、森小路と弁天町です。どちらも収容台数は6台、1車線ほどのスペースがあるのみで、トイレなどがある建屋はやや外れた場所にあるため、非常に簡素な印象を受けます。

森小路ミニPAに至っては、森小路入口から入ってすぐの地点に設置されています。なぜこんな場所に作ったのかという疑問が生まれますが、元々このスペースは「森小路線」の延伸計画のために確保されていたものでした。設置目的も、阪神高速は「遊休空間を有効活用した、利用客の疲労軽減のための施設」としています。

かつては尼崎市阪神高速3号神戸線にも同じ規模の尼崎ミニPAがありましたが、2019年にリニューアルされ、収容台数43台の「尼崎PA」として生まれ変わりました。

番外編:旧・上石津PA(名神高速、岐阜県大垣市)

かつて「日本一小さなPA」の地位を不動のものにしていたのが、名神高速の養老JCTと関ケ原ICの間にあった上石津PAです。

施設が何ひとつ設置されず、加速車線もほとんどない、まるでバス停のようなPAでした。豪雪地帯である関ケ原の峠越えにあたり、自動車がチェーンを装着するための場所として利用されたそうです。2001年に廃止されましたが、今でもその遺構を見ることができます。

なお、上石津PAから10数km東にも「番場PA」というミニサイズのPAがありましたが、米原JCTの建設に伴い1970年代に廃止されました。

海に面した由比PA(2019年4月、乗りものニュース編集部撮影)。