林海象監督の7年ぶりとなる最新作で、俳優の永瀬正敏が主演を務める映画『BOLT』が、12月11日より公開されることが決定。予告編と林監督のコメントが解禁された。

【写真】映画『BOLT』で監督を務める林海象

 第22回上海国際映画祭パノラマ部門にて正式招待、京都国際映画祭2019にて特別招待された本作は、2015年から2017年にかけて製作された、「BOLT」「LIFE」「GOOD YEAR」の3つのエピソードで構成された人間ドラマ。

 ある日、日本のある場所で大地震が発生。その振動で原子力発電所ボルトがゆるみ、圧力制御タンクの配管から冷却水が漏れ始めた。高放射能冷却水を止めるため、男は仲間とともにボルトを締めに向かう。この未曾有の大惨事引き金に、男の人生は大きく翻弄されていく。

 主演は、これまで林監督と何度もタッグを組んできた盟友、永瀬正敏。そのほか、佐野史郎、金山一彦、後藤ひろひと、大西信満、堀内正美、月船さららが脇を固め、佐藤浩市が声で出演。現代美術家のヤノベケンジが香川・高松市美術館に創り上げた巨大セットや防護服などの近未来的なデザインも見どころとなっている。

 予告編は、2011年3月11日に大震災が発生するシーンからスタート。続いて、3つのエピソードそれぞれの印象的な場面が展開する。「BOLT」では、「君たちは、直接原子炉冷却タンクへと向かい、漏洩箇所のボルトを止める。任務はその1点に絞られる。ここで君たちがボルトを止められなければ、汚染水は未来へ流れ続ける」と語る佐藤浩市の声が響く中、防護服に身を包んだ男たちが任務を遂行しようとする様子が緊迫感たっぷりに映し出される。

 続く「LIFE」では、遺品整理の仕事をする永瀬演じる主人公が、なぜその仕事をするのか聞かれ「誰かがやらなきゃいけないでしょ」と答える場面、「GOOD YEAR」からは、主人公のもとにある夜突然訪れた女が、「東京を捨てたわ。何もかも。仕事も男も。ついでに子どもも」と語る場面を収録。各エピソードに登場する人々の人生模様に興味がふくらむ予告編となっている。

 林監督は「東日本大震災の翌年に、京都である写真展があった。福島第一原発の作業員の方が、内部の現状を写真にとり写真を公開しているものだった。その時、その方から『大地震で原発内部のボルトの多くが緩み、それを閉めに行った。高濃度の汚染があるため、ボルトを締める回数は必ず一回と決められ、一つボルトを締めるのにのべ数百人の人間が必要だった』という話をきいた。いつかその話を映画にしてみたいと思った」と本作を作ることになったきっかけを明かす。

 そして「原発内の描写や防護服など低予算自主映画には高いハードルがあった。それを救ってくれたのが現代美術作家のヤノベケンジ氏だ。高松市美術館の中に『BOLT』のセットを組んでくれるというのだ。美術館で撮影風景を観客に公開しながら映画を撮っていく、という前代未聞の撮影方式が行われた」と明かし、「そしてこの三本が完成できたのは、主演永瀬正敏さんのおかげである。お二人と、長年携わってくれたスタッフ、キャスト、そして何より学生たちに大いなる感謝を述べたい」と関係者に謝意を表した。

 映画『BOLT』は12月11日より全国順次公開。

映画『BOLT』コンセプトビジュアル