コンビニで長く働いてきた筆者。店員と客でお互いに気持ちよく過ごせればなによりだ。しかし、“過剰サービス”は始めたらキリがない。マニュアルにないことでも当たり前だと勘違いされてしまうからだ。これが結局、クレーマーを生む原因にもなっている。

 以前、こんな客がいた。

 レジ横で販売されている揚げ物などは、注文が入った場合、基本的に置かれているものから売るようになっている。ある男性が揚げ物チキンを2つ買った。すでにあるものを出そうとしたら「新しいものを揚げてくれ」と当然のごとく言う。今までそんな注文を受けたことはない。どうしたらいいのか困惑しながらも筆者は揚げた。

 その後、別のスタッフが同様の注文を受け、新しいチキンを揚げた。しかし店長はそれを知った際に怒った。

「それを許したらスタッフが大変になるだけだし、収拾がつかなくなる」

◆過剰サービスを「他の店ではやってくれる」と言う客

 数日後、その男性がやってきた。そして、再び「揚げてくれ」と言ってきた。店長が出てきて丁重に断ったのだが、男性が食い下がる。

「他の店ではやってくれる」

 これはクレームを入れる人の特徴で、必ず「他の店ではやってくれる」と言う。それならば、その店に行ってくれればいいだけの話。ここでは対応できない旨を伝えると、怒って本部にクレームを入れた。

 自分のワガママが通らなければ、すぐに本部にクレームを入れるのだが、相手にしているとキリがなく、店員は疲弊してしまう。結局、そのような人は二度と来ることはないのだ。

レジ袋に「入れろよ、当たり前だろ」は当たり前じゃない

 “過剰サービス”と言えば、7月1日から始まったレジ袋有料化にまつわるトラブルも発生している。

 ほとんどの人が慣れてきたはずだが、コンビニで商品を買うときには、「レジ袋ください」と伝えればいいだけだし、マイバックを持っているけど店員に商品を入れてもらいたい場合は、遠慮なく「すいませんが入れてもらえますか?」と言えば問題ない。

 しかし先日、とんでもない客がやってきたのだ。

 レジ係はバイト仲間の矢野さん(30代)。コンビニ歴の長い方で、いつも夜勤帯で働いている。

 夜の12時、50代と思われる小太りの男性が6品ぐらい持ってレジにやってきた。その男性はレジにカゴを置くと、いきなり持参したレジ袋を矢野さんの前に放り投げた。それだけでも態度が悪くて普通ではない。まるで喧嘩を売っている感じだ。

◆商品を購入後、客が仁王立ち状態に

 もしも筆者がレジを担当していたら、嫌な予感がした場合は「袋に入れてもいいですか?」とこちらから言う。きっと相手は、「当たり前だろ、入れろよ」とか返すはずだ。それでも「いや、コロナで嫌がる人が多いものですいませんね」と調子よく切り抜けると思う。

 だが、矢野さんは疲れていたのか、はたまた集中力が切れていたのか、レジを打ったあとも特に行動は起こさなかった。男性は、自分ではレジ袋に商品を入れようともせず、仁王立ちになったのだ。

 気まずい空気が流れる。常識人だったら入れて欲しい場合、「入れてください」とひと言告げればいいだけなのだが、男性は激怒した。

「入れろよ! なんで入れないんだよ!」

「お客様にご自身で入れてもらうことになっています」と矢野さんは返すが「どこにそんなこと書いてあるんだよ! 他の店ではやってくれているぞ!」と怒鳴り散らしている。

 矢野さんもブザーを鳴らしてバックヤードで作業をしている店長を呼べばいいのに、それをしなかった。筆者はその光景を防犯カメラで見てイライラした。

◆男性のクレームは終わらない

 男性は、矢野さんに暴力的な言葉を浴びせてから帰っていった……と思いきや、男は戻ってきた。矢野さんがレジを閉める音を聞き、抗議をしていると勝手に受け取ったらしい。

「なんだこの野郎! 文句あるのか?」
「ないですよ」

 その後、矢野さんの名札を見て「矢野か。クレーム入れておくよ」と捨て台詞を残して出ていった。10秒ぐらいしてから、大声を聞いた店長が何事かとやってきた。

 もう少し早く気がついてくれたら男性を“出入り禁止”に出来たはずだ。最悪の出来事で、筆者も非常に気分が悪かった。

 翌日、男性から本部に「ご意見として聞いてください」とクレームが届いたそうで、SV(スーパーバイザー)が店にやってきた。しかしSVも防犯ビデオを見て、呆れ返っていた。

 そしてレジ横に「コロナ禍の為、お客様が基本的に商品を入れてください。助けの必要な方はお申しつけください」というような旨を記載した。

 店で働くベテラン女性がこの男性を知っていたようだが、「購入したタオルが臭い」「おにぎりセットの海苔がベトベトしておかしい」など、たびたびクレームを入れてきたらしい。

 ちなみに、筆者の主観だが、面倒くさいクレーマーは50~70代の男性がいちばん多いと思う。先日、某コンビニで夜勤の店員が早朝、70代の男性客にいちゃもんをつけられて暴力をふるったという事件が起きた。

 暴力はいけないし、店員としてやってはいけないことは当然である。だが、筆者のまわりのコンビニ店員たちは、暴力をふるった店員に同情的な意見が多い。

「人として許せないのはいるよね。やりすぎだと思うけれど、よほどのことだったと思うよ」

<取材・文/浜カツトシ>