大手結婚相談所”キューピット・コーポレーション”で働くトップ・ブライダルアドバイザーの主人公”リネット・ミラー(名前変更可能)”には、誰にも言えないトップ・シークレットがありました。それは……恋の女神のキューピットだったのです。とある事情から人間界に降臨した主人公は、相談所で有名な厄介会員5名を成婚に導くよう言われます。攻略相手を成婚に導くために奔走するという乙女ゲームでは珍しい展開が繰り広げられる『キューピットパラサイト』は、自らの恋心を秘めながら恋敵を応援して胸が締めつけられる物語を体験する……ではなく、キューピットである主人公が攻略対象たちにガンガンとダメ出しをして、素敵な恋の相手を見つけるために尽力するのです! そんな異色の作品について紹介します。



文 / みかそ

◆普通だけど普通じゃない? コメディー強めのハチャメチャ恋模様

神界で恋の矢を使って恋結びをしていたキューピットは、なぜかすぐに別れてしまうカップルに頭を悩ませていました。恋結びの法則も以前とは異なってきていて、「相性の良し悪しだけを見て行うのはいけないのではないか?」、「神が干渉せず人間に任せるべきなのでは?」と考えるようになった主人公は父親的存在であるマーズにそのことを伝えますが、まったく聞き入れてもらえません。さらには人間を見下す態度をとるマーズに主人公は「キューピットの矢を使わず、人と人をいっぱい結婚させてみせる!」と啖呵を切って神界を飛び出したのでした。その後、主人公はトップ・ブライダルアドバイザーとしての手腕を認められ、社長から昇格の話を持ち掛けられます。昇格条件として提示されたのは、ある会員5名を結婚させること。主人公は神の力を使わず、人間界で有名な大手結婚相談所キューピット・コーポレーションで名実ともにトップとなる目的を果たすため、社長からの提案を受けるのでした。そんな主人公が引き受けた5名は、他のブライダルアドバイザーたちが匙を投げた会員。社内では”Parasite(パラサイト)5”と呼ばれ、結婚できる見込みがないと半ば放置されていたのです。Parasite5 と顔合わせを行い、面談・セミナーを重ねてアドバイスをしてみますが、相手はパラサイトと呼ばれるだけあってなかなかの強敵です。そんななかで主人公とParasite5 は会社の宣伝も兼ねた婚活シェアハウスTV番組”PARASITE HOUSE”への出演が決まり、共同生活を送ることに……。まずは、主人公と本物のキューピットですら手を焼く個性豊かな Parasite5について紹介しましょう。
主人公である”リネット・ミラー”は明るく素直で人の恋に対して真摯な子ですが、自分の恋愛には全く興味がなく人を結びつけることばかり考えて行動しているため、人間界の親友からは「あなたは”キューピットパラサイト”ね」なんて言われてしまうほど……。しかし、恋の女神のキューピットである主人公は全く疑問に感じていません。人間になっても彼女が行動する使命は変わらないのです。そんな彼女が5人のアドバイザーになることで、女神ゆえの人として無知な部分が絶妙なやりとりとして物語に反映され、5人にアドバイスする際に手加減なくズケズケと言うところは「よく言った!」と共感することも多く笑いを誘ってくれます。

Parasite5の1人目は”ギル・ラヴクラフト”(CV:木村良平)。フリーエディターであり、2年まえの失恋を吹っ切るためにキューピット・コーポレーションに登録するものの、紹介される相手を全て失恋相手と比べてしまい、”失恋パラサイト”と呼ばれるようになりました。実はその失恋相手とは主人公のことなのですが、失恋したと思っているのはギルだけで主人公にその想いが届いていなかったという複雑な経緯があったりします。この残念な感じがいかにもギルらしいですね。ギルはガールフレンド至上主義で、主人公が「一緒に居られる人がいい」と言ったのをどこかで聞いて、時間の融通が利くフリーエディターになってしまうほどです。さらに神界から降りたばかりの主人公を箱入りのお嬢様だと思って、お風呂の入りかたや一般常識等を教えてくれるとっても優しく可愛い男の子。筆者としてはあまりの過保護っぷりと、主人公がこれっぽっちもギルの気持ちに気づいていないことに「大丈夫なの?」と思ってプレイしていましたが、この段階があったからこそ、個別ルートでのギルとの関係や気持ちの変化がさらに魅力的に感じられてとても素敵でした。

2人目はキューピット・コーポレーションの創業者にして社長でもある”シェルビー・スネイル”(CV:KENN)。世間的には愛妻家として広く知られており、結婚相談所のトップが愛妻家というプラスのイメージから同社の結婚率にも貢献しているのですが、実は独身です。ちょっとした誤解から愛妻家として振舞っていましたが、いい加減辻褄が合わなくなってきたため名前を伏せて婚活をすることに……。アドバイザーである主人公に名を伏せているのが自分だと伝えられず、婚活の場面には本人ではなく代理が出てくるという……隠れて婚活しているがゆえの弊害が酷いんです! シェルビーは常に地位の向上を追い求める”地位パラサイト”で、何に対してもSSランクでいることを良しとする追求型の仕事中心人間です。ストーリーとしては主人公の目的に一番直結している攻略対象だったため、会社関係の内容が多かったですね。ストーリーを進めると主人公もシェルビーだと知ることになります。共通の目的に向けての共闘や秘密の共有など、上司と部下という関係に弱い方はぜひシェルビーをおすすめします! 仕事や地位を第一としているシェルビーが主人公と接していくうちにどのように変化していくのか。彼が地位パラサイトとなった経緯もストーリーに丁寧に描かれていますので、その先にどのようなENDが待ち受けているのか期待してください。

3人目は有名男性服ブランドデザイナー”螢彩院・F・琉輝”(CV:榎木淳弥)。キューピット・コーポレーションで成婚した姉に勝手に会員登録されてしまった琉輝君は、美への意識が非常に高い”外見パラサイト”。外見の偏差値が低い人は認識することができず、過去担当のアドバイザーとも会話が成立しなかったのです。そんな琉輝君ですが、模擬デートの際に外見パラサイトの威力を発揮してメイクから服までコーディネートし主人公を磨き上げるシーンでは、筆者は拒否感よりもこういうデートをしてみたいと感動してしまいました。個別ルートに入ると外見パラサイトも魅力のひとつになっていることに気づきます。態度や話しかたがきつく感じますが、琉輝君の素直で可愛くて一所懸命なところにきっと胸を打たれることでしょう。このルートでは主人公と琉輝君のふたりで、別のカップルを恋結びさせる様子が描かれているところも要チェックですよ。他のルートで出てきたキャラだったため筆者は思わず、「あーここでこのカップルか!」と喜んでしまったほどです。

4人目は女性に大人気のムービースターラウル・アコニット”(CV:八代 拓)。主に迫力のあるアクションで数々のヒット作に起用されていたラウルですが、初の恋愛映画への出演が決まったことで、リアルな”恋愛の演技”を勉強するためキューピット・コーポレーションの会員となります。神話研究と考察が趣味で、口を開けば神々の話ばかりするため誰とも話が噛み合わない”趣味パラサイト”のラウルですが、もうこの時点でちょっとソワソワしてしまいますよね。だって主人公は本物の女神でキューピットなんですから。個別ルートに突入すると彼の奔放で人懐っこい部分が強く出され、お互いが抱く普通の恋人関係観とはこうであるという”普通”に対する価値観の差が如実に表れてきます。主人公はどのようにしてラウルに恋心を教えていくことになるのか……。ENDに向けての怒涛の展開に乞うご期待です!

5人目は高級枕店で働く”アランメルヴィル”(CV:古川 慎)。想い人がいる女性会員や恋人がいる職員を「いい夢、見させてあげる」と口説き、最終的に略奪して問題を起こす”略奪パラサイト”です。結婚に興味があるからキューピット・コーポレーションに登録したと言っていますが、実はアランは人間ではなく本物の悪魔”インキュバス”だったのです。インキュバスであることは最初の時点でプレイヤーにはわかるのですが主人公はまったく気づかず、その目的については最後の最後までわからなくなっています。「社会では多くのものがシェアされているのにどうして女性のシェアはダメなのか」と言って主人公を困らせるアランですが、個別ルートに入るといろいろなことがわかってきます。アランは他の攻略対象と違い人間界以外についての話が増えるため、人間を相手にするストーリーとはまたガラッと変わった内容を楽しむことができちゃいます。多大な期待を胸にプレイしていただきたいです!

以上の5人ですが、初回プレイ時から攻略できるキャラクターと2周目以降じゃないと攻略ができないキャラクターがいます。プレイ順によっては、「あー、あのときの意味深な言動はこういうことだったのか……!」とか「主人公が動いていたとき、こんなことが裏であったのね!」という伏線がそれぞれのストーリーに張り巡らされています。特にそれらが顕著なのは2周目以降に攻略可能なキャラなのですが、ネタバレになるため詳細を控えざるを得ません! プレイをしてこの壮大なストーリーを味わいながら、本作をさらに魅力的にしているラブだけじゃないコメディー部分も十分に楽しんでくださいね!

◆各ルートからENDまで100%楽しむためのアドバイス

物語は婚活シェアハウスTV番組のPARASITE HOUSEを皮切りにさまざまなルートが展開してゆくのですが、早い段階で”LovetypeTest”というものがあり、その結果次第ではENDに多大な影響があります。結果では6種類のラブタイプから1つ選ばれるのですが、よく読むと各タイプが攻略対象たちと多く重なる部分が見えてくると思います。初回は自分のタイプを知るためや事前の知識なくプレイすることを推奨しますが、攻略対象のENDを全てコンプリートするという目的の場合、自分のラブタイプの結果を意図的に選ぶ必要が出てくるため注意が必要です。

物語の進行状況を確認することができるフローチャートでは、解放済みのイベントであれば任意の箇所へ移動してプレイすることも可能です。セーブ・ロード機能もありますが、全ての選択肢を見る場合はフローチャートのほうが管理しやすいかもしれません。ちなみにセーブは100個までデータを保存することが可能。セーブデータの上書きがあまり好きではない筆者は、セーブ枠を気にせず楽しくプレイすることができました。

先ほどラブタイプがENDに与える影響は大きいと述べましたが、もちろん選択肢による好感度も大事ですよ。好感度アップを表す”愛キャッチ”を見逃さずに進めていきましょう。ちなみに愛キャッチはオプション画面でオン・オフの設定ができます。好感度の確認ができる”Love”画面もハートが溜まっていくのがポップ&可愛らしいのでぜひ確認を!

個別ルートは選択肢によって自動的に入っていくわけではなく、好感度数値の溜まり具合によって分岐します。そのため、いろいろな選択肢を試しながらお目当ての個別ルートを探る必要がありません。「絶対恋結びしてやる!」と思いながら物語を進めるもよし、ロックオンで狙いを定めるのもいいですね。彼らのパラサイトを楽しみながら進めていきましょう。

本作は17歳以上対象となっています。さらりとベッドシーンがあったりしますが、これが非常に重要な鍵を握っていますし、登場人物の考えかたや気持ちの変化に大いに影響を与えていてとてもよかったと思います。Parasite5の攻略を進めていくうちに主人公が人間ではない故の感覚の違いや、さまざまな人としての気持ちを知ることで変化していく様子がとてもリアルに、ときにはもどかしくストーリーの随所に散りばめられていて、全員のENDを見たあとに全てのストーリーがきれいに一本にまとまったことは非常に感動しました! むしろ気持ちがいいくらいの達成感と壮大なストーリーに「なるほど……!」と思わず打ち震えてしまいました。主人公が人間界に降臨したのは人の力で縁結びをして、神の力が必要のないことを証明してみせるためでしたが、はたして主人公はマーズにその成果を見せることができたのでしょうか? シリアスでありながらも重くなりすぎず、コミカルに描かれている『キューピットパラサイト』の世界を皆さんも体験してみませんか?

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相手の欠点が魅力になる不思議『キューピットパラサイト』いつの間にか恋に落ちてましたは、WHAT's IN? tokyoへ。
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掲載:M-ON! Press