日本財団は、「子ども基本法※」制定を目指す提言書を発表しました。本提言書には、子どもの権利を守るために必要な(1)子ども基本法の制定(2)「子ども総合政策本部(仮称)」を設置と国による年間計画の策定(3)子どもの意見を代弁する子どもコミッショナーの設置などが盛り込まれています。今後は本提言書を基に、法律制定に向けたキャンペーンやシンポジウムの開催、また国会議員へ立法に向けた働きかけを進める予定です。

※「子ども基本法」とは
日本財団らが制定を目指す、子どもの権利を守るための法律です。子どもの権利条約の一般原則である「生命・生存・発達への権利」「子どもの意見の尊重」「子どもの最善の利益の確保」「あらゆる差別の禁止」などを定めるとともに、国による基本計画の策定や、子どもコミッショナーの設置などを定めるものです。

子どもの権利をめぐる国内外事情、進まない法整備

 子どもの虐待やいじめ不登校、貧困など、日本の子どもをめぐる状況は厳しさを増しています。特に児童相談所の虐待通報件数は1990年に統計を取り始めてから増加を続けており、2018年度には159,850件に達しました。

平成30年度の児童相談所での児童虐待相談対応件数

 日本が1994年子どもの権利条約を批准してから26年が経過しています。日本政府は、子どもの権利条約の批准の際に現行法で子どもの権利は守られているとの立場を取り、国内法の整備を行いませんでした。これは、障害者権利条約の批准に当たり、障害者基本法の改正や、障害者総合支援法および障害者差別解消法の成立など、国内での障害者の権利を守るための様々な法制度の整備が行われたこととは対照的です。

 国連子どもの権利委員会からは、子どもの権利を守る日本の取り組みが十分ではないと複数回にわたり勧告を受けています。昨年3月にも、子どもの権利に関する包括的な法律の採択や、子どもの権利を監視するための独立した機構である子どもコミッショナーの設置を求められています。

子ども基本法の制定に向けた研究会を設置

 こうした状況の中、日本財団2019年10月から2020年5月まで、有識者による「子どもの権利を保障する法律(仮称:子ども基本法)および制度に関する研究会」を開催しました。座長は日本子ども虐待防止学会の奥山眞紀子理事長がつとめ、委員には児童虐待防止全国ネットワークの吉田恒彦理事長や、社会的養護を経験した当事者がおり、またアドバイザーとして国連子どもの権利委員の大谷美紀子弁護士も参加しています。

 この研究会では、主に虐待や社会的養護など児童福祉の分野から、子どもの権利を守るための包括的な法律および制度の必要性について議論し、子ども基本法の試案を含む提言書を作成しました。

提言書の内容(抜粋)

子ども基本法の柱建て試案(1)理念と責務

 子ども基本法では、「子ども」を冠する基本法として、名実ともに子どもが中心に据えられた法律としています。そこでは、子どもはその発達上の状態ゆえに特に人権侵害を受けやすい特性を考慮し、個々の子どもの年齢や発達の状況を十分踏まえつつ、子どもを権利の主体として捉え、子どもの権利条約の一般原則をはじめとした子どもの諸権利を社会全体で遵守する必要性を明記します。

基本法の柱建て試案(2)基本的施策

 国で子どもの権利の推進に向けた年間計画を策定します。また、子どもの権利を中心として省庁横断的に整理・調整するため、国に「子ども総合政策本部(仮称)」を設置し、前述の年間計画を行政内から総合的に調整し各省庁・部局の政策の改善促進を牽引します。また、正確な現状把握や予防的政策による積極的な権利保障の実現のため、省庁横断データベース等の調査研究基盤を整備します。

基本法の柱建て試案(3)「(仮称)子どもコミッショナー」の設置

 現在、日本の一部の自治体子どもオンブズパーソン子どもの権利委員会など、子どもSOSを受け止めて解決をはかる取り組みが実施されています。しかし子どもの権利保障に特化した国レベルの独立した子どもの権利擁護機関((仮称)子どもコミッショナー)は存在しません。子どもは自らがその権利侵害を訴えることが難しく、弱い立場にあるため、子ども基本法によって、子どもの権利を守ることに特化した「(仮称)子どもコミッショナー」を設置します。子どもコミッショナーに重要なのは組織運営及び活動における独立性であるため、政府の外局として置かれる合議制の行政委員会としての設置を目指します。

子どもの権利を保障する法律(仮称:子ども基本法)および制度に関する研究会 提言書(全文)

今後の予定

 今後は本提言書を基に、今年11月には日本子ども虐待防止学会でのシンポジウムを開催する予定です。また、法律制定に向けたキャンペーンや、また国会議員へ立法に向けた働きかけを進める予定です。

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