ビニールの仕切りを介しての聞こえにくい会話、トレー越しに行うお釣りレシートの受け渡し。私たちの買い物様式も、ずいぶんと様変わりしている。すっかり新しい様式が日常となった今、スーパーやアパレルなど小売店で働く人々はどのような思いを抱いているのか。スーパーで働き、職場の人間模様やお客様とのエピソードを発信しているあとみさん(@yumekomanga)に話を聞いた。

【あとみさん漫画】「客をバイキン扱いしてるのか」ビニール越しに怒る客が一転、”笑顔”になった理由とは?

■変化した買い物様式「最初は戸惑いばかりだった」

 あとみさんは、スーパーのレジ担当として働いている。レジ前のビニール、カゴやカートを消毒し、店内のいたるところをピカピカにするルーティーンも加わり、(自分の家を掃除したいな…)としみじみすることも。買い物の様式が様変わりし「慣れるまでは戸惑うことばかりでした」と話す。

「とにかく、レジ前の仕切りとマスクで声が聞き取りにくいのに、ボソッとしか話して下さらないお客様も多くて、ずーっと不便な毎日です。マイバッグにお入れするのは禁止、お釣りを直接手渡すのは禁止等で、慣れるまでは戸惑うことばかりでした。最近はもう、感染の不安感も麻痺してきています…。様々な作業がありますが、お客様からの『大変ね!頑張ってね!』といった優しいお声掛けが有り難いですね」

 あとみさんのインスタグラムには、スーパーに来る子どもとのほっこりするエピソードも多数投稿されている。例えば、レジ前でマスクをしている子どもがぐずっていて、あとみさんが「マスクかわいいね」と声を掛けると、一時は恥ずかしがって親の陰に隠れてしまった子どもが徐々に笑顔に。親からは「マスクを外したがっていたけど、店員さんから褒めてもらえてて上機嫌に。ありがとうございます」と後から御礼があった…という話も。

「やはりお子様が絡むといつも和みます。店内で迷子になった子どもさんに、名前を聞くと自分の名前ではなくて親御さんやご兄弟の名前を言ってしまったり、お会計のおつりの計算をしたいと子どもさんが一生懸命考えていらっしゃったり。お子さんが可愛いのと、色んな勘違いがおかしくて、親御さんともあとで笑い合ったのを思い出します。楽しい出来事となりました。

 いつも私のレジを探して並んでいると言って下さる貴重なお客様もいらしたり、お褒めの言葉は本当に嬉しいですし、頑張る気持ちと自信をいただきました。この先も、このままひたすら今のパート漫画をつらつらと描き続けていきたいと思っています」

■「子ども服、若い人から買いたくない!」独自の価値観を押し付ける客に疑問

 もう一つ、SNSで話題を集めた実録漫画がある。百貨店子ども服店で店長として働いていた経験のある、ぼのこさん(@bono_gura)だ。接客中に出会った印象的なお客様のエピソードや、女性が多い職場ならではの苦労を赤裸々に語っている。最近では、ある若い販売員がお客様から「子育てもしたことない若い人から買いたくない」と言われてしまったエピソードを投稿。これには「子どもがいなくちゃいけないなんて、差別でしかない」「”プロ”に対して非常に失礼な言葉」「がんになったことのない医者、入院したことない看護師…そんなのたくさんいるのにね」と多数の反響があった。

「まだまだ日本では、お客様に比べて接客する側の立場が弱い印象です。丁寧な接客を提供することには変わりないけれど、『販売員とお客様の関係性がもっとフラットな世の中になればいいのに』というのが私の正直な気持ちです」

 漫画では、バックヤードで涙を流す若手販売員の描写が。実際にぼのこさんは、部下である若手販売員をひたすら慰めて話を聞いていたという。

「もしあのとき、私が雇われ店長ではなく、自身で店を経営していたら、お客様にはっきりと『それはよくない』と伝えたかもしれません。しかし、私の言動が雇い主であるブランド、そして百貨店さんにも繋がってくることでもありました。なので、あの日私が取るべき対応は、“お客様に反論をすること”ではなく、できる限りその場はスムーズにことを終わらせ、バックヤードで部下をケアすることだと判断しました」

 「色んな考え方のお客様がいるけれど、無理にそれに合わせようとする必要はないんだよ」と販売員に伝えたぼのこさん。今後もSNSでの発信を通して「多様性を尊重しあえる社会」であることを伝えていきたいと話す。

「自分の意見はこうだけど、あの人の意見はこうなんだ。では、お互いにとってよりよい結果を出すためには互いにどういった調整が必要だろうか…といった具合に、“自分の意見も大切にしつつ、他者へも歩み寄っていく姿勢”が大切だと考えます。読者の方が自分のことと当てはめ、“人間関係”について考えたり、気づいたりできる“きっかけ”の提供を、 今後は漫画だけに留まらず、文章や声といったあらゆる場で発信していきたいです」

泣いている女児に「可愛いマスクだね」と話し掛けるスーパーの店員さん(画像提供:あとみさん)