公務員在宅勤務の実施率は15.9%——。監査法人などを傘下に持つデロイトトーマグループが国や自治体の職員1000人に行った在宅勤務の実態調査で、役所の対応が遅れている実情が明らかになった。同社は主な要因に、行政独自のネットワーク環境やセキュリティ対策、住民向けの窓口対応などを挙げている。調査ではテレワークの普及率などで国・都道府県区市町村での格差も明らかになった。

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 所属する部署にテレワーク制度があると回答した人は全体の約半数の48.7%にとどまり、制度があっても利用していない職員が67.4%いた。団体別では、国が67.1%、都道府県では61.7%が「制度がある」と回答した一方、区市町村は32.2%で国の半分以下となった。

 また、在宅勤務の実施頻度では「週1回以上」の割合が国が46.7%であるのに対し、区市町村は19.7%となり、制度を巡り、国と区市町村との格差が明らかになった。業務別では、「税務」で87.9%が在宅勤務をしておらず、ワースト。「福祉」が81.5%、「農林水産」が77.3%と続いた。

在宅勤務の課題では「IT・ネットワーク環境」が最多62.9%

 職員が挙げた在宅勤務する上での課題では、「IT・ネットワーク」(62.9%)、「業務内容」(59.7%)、「セキュリティ」(46.5%)が多く、区市町村ではセキュリティを懸念する割合が国や都道府県よりも高い傾向にあった。

 在宅勤務のためには、業務に使っている端末を持ち帰り、自宅から仕事場のネットワークアクセスする必要がある。民間では、テレワーク用の端末を社員に貸与する企業もあるが、調査では全体の62.5%が端末の持ち帰りが「不可能」と回答。端末を持ち帰っても、内部ネットワークに接続できないと回答した職員も12.2%おり、自宅で職場同様の環境で作業できるのは全体の16.3%にとどまった。端末を持ち帰った上で、自宅からネットワークに接続可能な団体別割合は、国が29.3%、区市町村は8.6%だった。

 デロイトはこうした要因に、国のセキュリティ対策方針「三層の構え」の存在を指摘。「自治体の情報セキュリティ対策強化のためにとられた、ネットワークの分離が多分にあると推察される」としている。

 三層の構えは、2015年日本年金機構から125万件の年金情報が流出した事件を契機に総務省が策定した方針で、マイナンバー利用事務などの各ネットワークを分離し、セキュリティ強化を図るというもの。17年には国内の全自治体が対応済みだ。総務省コロナ禍で行政のデジタル化の遅れが浮き彫りになったことから、今年5月以降、改定に着手しているが、過去の方針が役所の在宅勤務を妨げていることが数字から見て取れる。

Web会議実施は全体の4割

 Web会議を使える職場は全体の40.6%。団体別では国の54.2%、都道府県の43.9%に対し、区市町村は31.8%となり、ここでも行政間の格差が判明した。Web会議ツールシェアトップは「Zoom」で、26.9%を占めた。

 その他、デロイトは職員の要望も調査。8割以上が在宅勤務を希望し、希望日数では週2日が29.3%で最多。改善を希望する事項トップ3は「自由な働き方」(41.7%)、「労働時間」(39.5%)、「職場環境」(38.4%)だった。

 デロイトは「自治体個人情報に関係する事務とそうでない事務を区別した上で、主体的に窓口申請のオンライン化などを進めるなど、住民サービスの向上と職員の働き方の改善の両立を目指すことが求められている」としている。

 デロイトは今年7月17日から19日にかけて調査を行い、国や都道府県区市町村の職員1000人から回答を得た。

在宅勤務制度の状況と頻度