わが国固有の領土である尖閣諸島を中国は「核心的利益」と位置づけている。

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 そのことは、人民解放軍(PLA)、人民武装警察とその隷下の海警局、民兵などからなる全武装力量に対し、「祖国の完全統一」という最大の使命の一つとして、台湾とともに尖閣諸島奪還を付与していることを意味している。

 全武装力量を集中統一指導し、唯一絶対の指揮・統率権を有する、習近平中央軍事委員会主席は、2017年10月中国共産党第19回党大会において、党の軍に対する絶対指導を強調している。

 それとともに、「いつでも戦うことができ、戦えば勝てる」軍であることを要求している。

 尖閣諸島に対する中国の全武装力量による奪還作戦が行われるとすれば、その尖兵となり侵攻してくるのが、PLAの海軍陸戦隊である。

 また中国は尖閣諸島と台湾をともに、太平洋への出口を閉ざす閂として、戦略的に一体とみている。

 台湾侵攻を主任務とするPLA海軍陸戦隊の軍改革による近年の変化とその特色を明らかにすることにより、尖閣諸島への海軍陸戦隊の侵攻作戦の変化も読み取れるであろう。

 以下では、林頴佑、李玉偉「軍改革後の解放軍海軍陸戦隊の変化と近況の分析」『2020中共年報』(中共研究雑誌社、2020年、3-46-3-53頁)に基づき、PLAの海軍陸戦隊に焦点を絞った分析結果について述べる。

対台湾水陸両用作戦の尖兵としての海軍陸戦隊の改編・増強

 過去の海軍陸戦隊は規模も第1旅団と第164旅団の2個旅団に限られ、海軍内でも特に重視されていたわけではなかった。

 早くからPLAは水陸両用作戦を重視し、その狙いは台湾にあったが、当時の南京軍区には陸軍の水陸両用機械化部隊が隷属しており、南京軍区には主力の72集団軍と73集団軍が駐屯していた。

 その火力と機動力は海軍陸戦隊に比べてはるかに優れており、台湾を意味する「大型島嶼」を目標とした戦力であった。

 台湾解放作戦の第1波主力部隊はこれらの陸軍の集団軍とされ、海軍陸戦隊が特に大きな関心を集めることはなかった。

 しかし、最近の海軍力の装備の進歩と国力の向上、海外での利益に対する要求の高まりにより、海軍陸戦隊の価値とその適用に対する新たな思索が始まった。

 最も顕著な変化は、海軍陸戦隊の編制と任務の拡大である。

 2017年3月の中国国防部の記者会見発表によれば、「目下の海軍陸戦隊内の改革措置の相互調整は計画に従い着実に進められている」としている。またPLAも一部の陸軍部隊を海軍陸戦隊の隷下に入れる計画を始めている。

 2017年2月に北部戦区の第80集団軍第77旅団は北部戦区海軍陸戦隊の隷下に入った。

 また省軍区と警備区の海防師団・旅団の一部も海軍陸戦隊の隷下に入り、陸軍の人員は削減され、海軍陸戦隊の編制拡大の目的に転用された。

 PLAの海軍陸戦隊にはそれまで独立した指揮機構が無く3大艦隊の隷下にあった。

 しかし2017年2月、習近平主席の八一ビルでの新たに造られた84個の軍単位の組織の接見時に、海軍陸戦隊司令官と同政治委員の職務が出現した。

 これは海軍陸戦隊が独立した専門的な指揮・指導組織を持ち、その司令官が正規の軍級の少将であることを顕示し、PLAが海軍陸戦隊を重視していることを示すものでもあった。

 対照的に陸軍の集団軍の規模は、各集団軍は6個合成戦闘旅団、および陸軍航空、特殊戦、砲兵、防空、工兵・化学旅団などの旅団から成り、各旅団は3000から5000人、1個集団軍は3万から5万人になった。

 現在の海軍陸戦隊は6個合成戦闘旅団を保有していることからみれば、海軍陸戦隊の正規の軍の編制は陸軍の集団軍の構成を超えることはないとみられる。

 また、その目的は全域型合成部隊に発展させ、一体化した連合作戦を有効に遂行し即応尖兵部隊としての役割を果たすことにあるとみられる。

約5万人10個旅団の海軍陸戦隊の編制と戦時の戦区連合指揮統制組織隷下組入れ

 PLAの海軍陸戦隊の編成は以下のように推測される。

 6個合成戦闘旅団、1個特殊戦旅団、1個航空旅団、1個戦闘支援旅団、1個保障旅団、併せて10個旅団。

 各旅団には、作戦部、政治部、後勤部、4個陸戦合成大隊(陸戦歩兵、水陸両用偵察調査兵、水陸両用装甲兵)、1個砲兵大隊、1個防空大隊、1個戦闘支援大隊(工兵、通信兵、化学防護兵、ヘリ分隊、エアークッション艇上陸艇分隊)、1個保障大隊。

 編成人員は各大隊約500から600人として計算し、1個旅団で総編成人数は5000人前後となる。PLA海軍陸戦隊の総人数は従来の見積からも少なくとも5万人程度には達するとみるべきであろう。

 PLA海軍陸戦隊は長らく水陸両用装甲車両の多くがキャタピラ式となっており、海上からの水陸両用上陸作戦の要求に応じるものとなっている。

 ただし、海軍陸戦隊の1個旅団はすでに「ZBL-09」装輪式歩兵戦闘車と「ZTL-11」装輪式装甲突撃車に換装されているとの報道もある。

 装輪式装甲戦闘車はその水陸両用戦上陸能力には限界がある。

 しかしジブチの海外基地にこの型の装輪装甲戦闘車がすでに配備されており、合成旅団の編成装備として初めて出現している。

 これから判断すると、この種の装輪式の装甲車両を装備した即応戦闘旅団は、近岸における水陸両用上陸作戦には運用されず、将来の海外での複雑な環境下での機動部隊の要求に応ずるためのものであり、海外遠征に向けての発展のためのものと言えよう。

 海軍陸戦隊の水陸両用艦艇が増加するにつれて、外部からの各軍陸戦隊に対する分析の幅が広がった。

 071型ドック型輸送揚陸艦は現在のPLAの水陸両用作戦の主力であるが、それらの3隻は南海艦隊に配備されてきた。

 ただし4番艦は東海艦隊に配備が開始され、5番艦は2016年に軍に配備され、後に6番艦と組み合わされるであろう。

 続々と軍に配備されている075型水陸両用攻撃艦と726A型エアークッション艇により、PLA海軍陸戦隊は作戦上、伝統的な上陸作戦を超越して、これまで強調されてきた「多層双超」作戦を具体的に実践できるようになるであろう。

 2016年2月にPLAの5大戦区が成立し、同時に新たな戦区組織機構も発展を遂げた。

 すなわち、各戦区には連合作戦指揮機構があり、「軍事委員会がすべてを管理統制し、戦区は戦いを主とし、各軍種は建設を主とする」との原則の下、海軍陸戦隊指揮部は海軍の隷下にある。

 その指揮態勢の下で、海軍陸戦隊指揮部は、平時には海軍陸戦隊部隊の建設・訓練・管理に主に責任を負い、戦時には各戦区連合作戦指揮機構に適格な作戦部隊及び戦闘支援を提供する。

 作戦統制については、海軍陸戦隊の作戦運用は直接、中央軍事委員会作戦指揮機構の命令に基づき戦区海軍指揮部の作戦指揮を受け、戦区および陸戦隊指揮部の指揮は受けない。

海外遠征軍的な合成化モジュール化旅団への脱皮

 改編後の海軍陸戦隊の訓練はこれまでとは異なった点が見られる。

 2019年初めに海軍陸戦隊は新疆の砂漠を使い「戦区を跨る遠距離機動訓練」を行い、冬季の演習・訓練も行った。

 2018年3月に海軍陸戦隊は「万人千車」と称するすべての編制が空輸を含む戦区を跨る立体的な輸送展開訓練を行い、海軍陸戦隊を山東と雲南に区分して輸送した。

 これらのことは、海軍陸戦隊の任務が単に上陸作戦を行うことだけではなく、変化する地形と様々の天候の下で与えられた目的を、米国の海兵隊に類似した「海外遠征軍」のような機能を発揮し、中国の海外での利益を保護する先鋒となり、達成することにあるのを明示している。

 他方で、海軍陸戦隊は頻繁に戦区を跨る機動演習・訓練を行っており、即時反応部隊としての責務に応え、様々な長距離輸送手段を選択できることが、すべての演習・訓練の共通した目的である。

 2014年以来海軍陸戦隊は数回の大規模な遠距離機動訓練を行ってきた。

 軍改革以前の作戦対象は大隊級部隊だったが、軍改革後は旅団級単位の戦力投射能力が主となっている。その目的は、将来の遠征戦力の発展を準備することにあるとみられる。

 海外の基地では地理的な位置により戦区兵力のような火力、勤務支援の区画がなく、海外駐留兵力は独立作戦能力を持たねばならない。

 この枢要な能力は、作戦部隊のモジュール化と合成化の程度によって決まる。海軍陸戦隊はいままさに、高度の合成モジュール化旅団(大隊)の整備に邁進しつつある。

 このことは単に、戦区指揮隊形との一体化を加速するにとどまらず、水陸両用作戦後の独立作戦遂行において、後続の陸軍上陸部隊合成旅団との継ぎ目のない連接を可能にするものである。

 また、海外基地の安全保障と地域の安定に対しても、威嚇するに足る軍事能力の提供を可能にするものである。

 海軍陸戦隊の遠距離機動訓練は、山地、森林、積雪地、砂漠など、将来作戦環境として予想される場所で行われている。

 またその編制体系は、大幅な調整ができるようにモジュール化と合成化が進められ、旅団と大隊級の独立作戦能力が強化されている。

 それとともに、自らの航空火力と輸送力の不足を補うために、海軍陸戦隊のパイロット要員を養成し、水陸両用作戦の武装ヘリと輸送ヘリの配備に適用できるように改編を進めている。

 その結果、部隊の作戦能力について言えば、PLAの海軍陸戦隊の遠征作戦準備は既になされている。

 将来の海軍陸戦隊は、島嶼に対する上陸作戦以外にも、海軍の大型水陸両用艦艇の発展に歩調を合わせ、遠距離戦力投射も遂行するようになるであろう。

外国軍との連合演習を通じた外交的任務への適応と遠距離機動能力等の向上

 外国軍との連合演習については、2016年から2019年の間に、外国との多くの連合演習に参加している。

 例えば2019年には中・タイ海軍連合演習で、陸戦隊は人道主義救援活動や連合対テロ行動などを主要演練項目として演習し、非伝統的安全保障における威嚇能力を向上させている。

 海軍の外交軍種としての任務を継承しつつ、陸軍の野戦での生存連合訓練にも参加しているが、今後、海軍陸戦隊は海外での外交的任務の役割がますます高まるとみられる。

 中ロの「海上連合2016」、「海上連合2017」は、海軍陸戦隊の水陸両用上陸・島嶼奪還作戦の基本的な技能に関するものであった。

 ただし、2018年3月海軍陸戦隊は初めて、全編成、全システム、全要素による遠距離兵力投射を実施し、同時に、その強大な「軍民融合」による運輸能力も検証した。

 軍改革後、海軍陸戦隊は何度も砂漠、寒帯、山岳地、森林などの複雑な環境・地形の下での訓練を行ってきた。

 その演習・訓練の地点、時間は、気象および複雑な環境の影響を受けず、部隊の戦場適応能力、遠距離機動能力と全域作戦能力を強化することにより、海外への兵力展開および海外の軍事行動遂行に必要な要求を満足させることを追求している。

 また、海軍陸戦隊の海上での運用に当たっては、特殊作戦の兵員を艦艇に随伴させて護衛させることを最重視している。

 海賊行為対処、海域での秩序維持、国際人道救援などの比率がますます増加している。

 これらの任務では小規模の特殊作戦要員の能力が発揮される。近年の海軍陸戦隊の行動に見られる役割と能力から推測すれば、今後海軍陸戦隊の役割は、海外での軍事行動、海外駐留軍の国際的な治安維持、対テロ活動などが多くなるとみられる。

同時2正面対処を意識した海軍陸戦隊の2個戦区に跨る演習実施

 2019年7月にPLAは東シナ海と南シナ海の沿海部において「恒例の軍事演習」を行うと公表した。

 当日、ネットに浙江と杭州において105ミリ砲を搭載した05式水陸両用突撃車などの各種の車両が鉄道により南に輸送されている写真が掲載された。

 似たような演習は、1996年の台湾海峡危機、2001年2003年2004年にもみられたが、すべて東山島で行われた大規模演習であった。

 2001年2004年は「解放1号」、「解放2号」と称され、2003年には北海艦隊が南下して参加した。

 この時初めて台湾海峡を経ずに第一列島線を出て、台湾の東方を経てバシー海峡から南シナ海に入った。

 これらから、PLAが東山島演習を、空中部隊の「遠海長航」より以上に、台湾に向けられたものにするとの意義を重視していたことは明らかである。

 2019年7月に中国当局は舟山島付近において軍事演習を実施すると発表した。これは軍改革後初の2個戦区に跨り行われる軍事演習であった。

 その2個戦区に跨る演習の形式から、中国が、将来の軍事衝突発生においては単一の戦区のみで対応するのは不可能であり、同時に別の方向から来る敵軍に対処しなければならないことが多いとみて、米軍が「同時に2正面の局地紛争に勝利する」能力を保有しなければならないとしているのと類似した戦略を想定していることは明らかである。

 特に現在の中国は、軍事衝突の原因が一つであっても、必ず複数の異なる方向からの軍事脅威に直面することになるとみている。

 その最も明らかな例としては、1996年台湾海峡にミサイルが撃ち込まれた時に、米国はアジア太平洋の兵力を急派したが、そのうちの1波は太平洋から、もう1波はペルシア湾からマラッカ海峡、南シナ海を経て台湾近海に入った。

 1996年ミサイル発射の危機の後、PLAは「対艦」戦術・戦法を積極的に深刻に検討し始め、それ以降この概念が次第に戦術のレベルから戦略のレベルに発展し、「接近阻止/領域拒否(A2/AD)」作戦になった。

 PLAが2個戦区の連合作戦の演練をしているのは戦略上の要求によるものである。

 ただし、中国が発表している演習のニュースのほかにも、それに続き、特に参加兵力の規模が示されることもなく、その多くが軍事専門家や台湾側の専門家の関連した評論に引用されるだけで、実際の演習項目も投入兵力の単位も報道されることなく、この種の演習が行われている。

 このような演習の中でも最も関心を引くのは、外部世界が極度の関心を持っている水陸両用部隊の作戦能力の分野である。

規模重視の水陸両用作戦概念から全域多数点小規模の迅速立体化縦深作戦への転換

 伝統的な水陸両用作戦は海上から敵岸あるいは目標区域に向かい兵力を投射することであった。

 その主要な類型には、水陸両用攻撃、水陸両用襲撃、水陸両用戦力誇示、水陸両用撤退作戦の4種類がある。

 過去のPLAの水陸両用作戦概念は主にその作戦規模に重点が置かれていた。ただし近年は、米軍の水陸両用戦概念の模倣が始まっており、非戦争軍事行動の遠距離戦力投射と海外への海軍陸戦隊の展開の遂行も含まれるようになり、逐次遠征行動に向かって発展している。

 過去の水陸両用作戦は海から陸に向かって起きたが、推進的な作戦モデルが逐次進展している。

 すなわち、まず海空打撃を目標地域に加えて戦場の制空権を奪取した後、上陸部隊により上陸突撃と橋頭保の確保が行われる。

 水陸両用輸送手段と装備の急速な発展により、水陸両用作戦では海浜部での逐次前進によることなく、縦深立体作戦方式に改められ、迅速に任務目標を奪取し、作戦範囲は数個の上陸区域に渡り、迅速な機動と指揮統制による多数点攻撃方式を採り、重要目標に対して縦深立体攻撃を実施し、その戦果を獲得する。

 海軍陸戦隊の作戦概念の基本は以上の「重点打撃」、「立体上陸」、「縦深突撃」を基礎としている。

 多数点での上陸機動突撃を強調し、大型の水陸両用上陸艦、エアークッション艇、ヘリの優勢な迅速輸送力により、全域にわたる多数地点に、時空を限定することなく、縦深への輸送と即時機動突撃・上陸行動を実施する。海軍陸戦隊に水陸両用作戦において要点、施設と水際陣地奪取の役割を果たさせ、全縦深突破の目的を達成する。

 軍改革後のPLA海軍陸戦隊の作戦の変化について総合的に観察すると、伝統的な水陸両用作戦の思想から抜け出し、小規模合成特殊作戦部隊に発展し、海軍の新型水陸両用艦艇の戦列に加わり、海から陸を制圧する遠征作戦概念が正に形成されようとしている。

 作戦運用上は、かつての水陸両用上陸モデルと異なる方式を採用することも可能になり、大型水陸両用艦の遠距離投射能力、搭載されたヘリとエアークッション艇の高速特性を無人機の偵察・打撃力と結合させ、それにより大隊レベルの小型・特殊作戦化・立体多数点攻撃、浸透、特殊攻撃等の方式を採り、打撃範囲も拡大するようになっている。

 特に、中国の水陸両用作戦概念の変化をみると、伝統的な古い戦術戦法はもはや用いられることはなく、水陸両用作戦の先行・先遣作戦では必ず非正規の装備を配備し、全域の立体多数点迅速突撃上陸方式を採り、かつ合成化兵力編組をさらに弾力性のあるものにするであろう。

 海軍陸戦隊の作戦概念はこれまでより迅速に変化し、伝統的な水際からの上陸作戦概念を繰り返すことはないとみられ、この点が海軍陸戦隊の作戦運用時の重要指標となる。

 水陸両用輸送手段と装備の迅速な発展により、水陸両用作戦は縦深立体方式になったが、他方で海上機動にはプラットホームが設置され、海上乗り換え区域は海上浮動基地となり、部隊指揮と海上作戦能力が向上している。

 海軍陸戦隊の整備規模はモジュール化、合成化に向かい発展しており、作戦編組はさらに融通性に富み精密かつ専門化されている。

 海軍陸戦隊の作戦概念もこれまでより融通性を持つようになり、既に伝統的な上陸作戦概念ではない。火力打撃、火力支援と後続陸軍水陸両用部隊と重要な点で整合されている。

 大型水陸両用艦についても、自らが計画上の搭載艦であるだけではなく、戦場の指揮統制の戦闘プラットホームとしての役割も果たしている。

 この点も将来の海軍陸戦隊の作戦運用時の重要指標となる。この点は新型の075型水陸両用攻撃艦の新たな運用にもみられる。

 総合的に言えば、陸戦隊の水陸両用作戦において果たす先行打撃の役割は、突撃作戦のために内部に潜入して応ずる役割に属し、高速機動輸送手段により台湾の内陸深くに侵入し、陸軍所属水陸両用機械化合成旅団の任務、すなわち橋頭保確保と後続部隊を支援して上陸作戦基地を建設するのを容易にすることにある。

 外部との連携のための役割としては、連携する陸軍合成旅団部隊及び台湾攻撃の主力部隊を掩護することがある。

海軍陸戦隊と陸軍水陸両用機械化歩兵合成旅団との差異

 海軍陸戦隊は一地上部隊と誤解されがちだが、海上戦力の重要な一部であり、その作戦領域は、複雑な地形と天候下に広がる国家利益を守るための戦略部隊である。

 海軍陸戦隊の訓練と装備から見ると、強襲突撃を主要な任務としているが、大規模上陸作戦は主要任務ではない。

 海軍陸戦隊は主に、前方の沿岸部で運用され、作戦行動を維持し支援する。機動性と快速反応は海軍陸戦隊の主要な特質であるが、この特質は海軍艦艇の沿海機動能力に依存している。

 他方で、海外で展開されればさまざまの危機と突発事件があるため、海軍陸戦隊は、融通性のある反応能力、随時の快速反応能力とともに、快速増援能力を備え、本土の基地または海外基地から要員を、海上機動輸送を通じあるいは空輸により、快速展開し任務地域に派遣する能力を持たねばならない。

 総合的に言えば、世界の一流の海軍陸戦隊はすべて、高度の機動力による融通性に富み、かつ随時の複雑な環境に対し高度の適応能力を具備し、将来の小規模戦争及び快速反応作戦任務の要求に応えねばならない。

 PLA海軍陸戦隊と陸軍水陸両用機械化部隊はともに類似した任務と使命を持つが、作戦運用上は多くの異なる点がある。主要な差異点としては、海軍陸戦隊は艦隊に随伴して遠海で護衛する任務を持ち、任務海域は陸軍水陸両用部隊よりも広大である。

 また、海軍陸戦隊は重要な戦略的意義を有する戦術任務に任ずるが、後続の上陸部隊のために先鋒となり好機を作為するほか、海軍が制海権を奪取するために有利な態勢を作為する任務も有している。

 その他に、非戦争軍事行動任務では、陸軍の水陸両用機械化部隊には多くの限界があるが、海軍陸戦隊は高機動性と打撃力をもって、海上と陸上の多様な強襲突撃作戦任務から特殊上陸作戦に至る任務に任ずる。

 しかし陸軍も海軍を通じて上陸艦隊との協同を開始し、水陸両用上陸作戦を演練しなければならない。ただしこれは台湾への上陸作戦の先鋒ではなく、上陸作戦後の第2梯隊が遂行する陸戦の準備のためのものである。

 PLAの保有する制式化された輸送用装備は数量が不足しており、海軍の戦略にとり当面の主な制約要因となっている。

 海上輸送は「大型の遠海保障のできる制式艦船数量が極めて不足しており、用いることにできる渡海上陸用船舶の数はさらに限りがあり、トン数の小さい小型が多く、少数の部隊を輸送できる能力しかない」「大規模な作戦に対する各種の保障についての法がない」などの問題がある。

 大規模海上戦略輸送を行うには、単にPLA海軍の現有戦力だけでは需要を満足するのは困難であろう。

 中国の現在の国防動員体制は優れているが、海上輸送組織の動員経路は複雑であり、軍と地域の人員の動員経路間の交流も少ない。

 とりわけ、地方の民兵などの武装力量の、海上訓練と重要な任務への参加の機会が非常に限られており、この点は海上戦略輸送の動員効率に直接影響を与えている。

まとめ

 軍改革の変革期はPLAの実態解明の好機であり、特に上陸作戦の尖兵となる海軍陸戦隊の役割、任務、編成装備、訓練などの変化を解明することは、その脅威度および具体的な運用・能力を知るために極めて重要である。

 中でも、東部戦区は台湾と尖閣を含む日本を対象区域としており、その実態解明は極めて重要な意義を有している。

 今後もこの種研究を継続する必要性はますます増加するものと思われる。

特に、①海軍陸戦隊の即応性、②海上輸送力の向上、③ヘリなども多用した海上積み替え基地からの高機動立体作戦、④大型水陸両用艦とホバークラフトを活用した独立作戦能力を持った大隊規模の小規模多数点迅速上陸と継ぎ目のない内陸侵攻、⑤陸軍水陸両用機械化部隊との連携、⑥遠距離機動能力と海外遠征能力の向上、⑦非戦争軍事作戦など多様な任務への適応力、⑧地形・気象への適応力、⑨特殊作戦能力の向上など、数々の改善点が列挙されている点は注目される。

 作戦統制については、海軍陸戦隊の作戦運用は直接、中央軍事委員会作戦指揮機構の命令に基づき戦区海軍指揮部の作戦指揮を受けることになるであろう。

 今後、PLAの海軍陸戦隊が、米国の海兵隊のような能力と編成装備、運用に近づいていくのかが注目される。

 特に不十分とされている、ドック型輸送揚陸艦、ヘリ搭載型強襲揚陸艦などの大型水陸両用艦艇の輸送能力の向上および、地方レベルの海上民兵などの輸送動員態勢の整備には注意が必要である。

 いずれにしても、PLAはわが国の尖閣諸島と台湾は一体と捉えており、わが方が海空優勢を喪失すれば、台湾攻略を容易にするためにも、尖閣諸島のみならず南西諸島などへの着上陸侵攻もありうるとみるべきであろう。

 その際の尖兵はPLA海軍陸戦隊となる。台湾は大型島嶼であり、尖閣諸島は小型島嶼という違いはあるが、運用の基本は大きな相違はないとみられる。

 尖閣諸島への侵攻作戦では、小規模の大隊級の独立戦闘能力を持つ海軍陸戦隊特殊部隊が、中央軍事委員会の命令を受け、戦区海軍の指揮のもと、海軍、海上民兵や海警と緊密に連携しつつ、沖合のヘリ搭載大型強襲揚陸艦などから発進した、エアークッション艇、ヘリ、無人機などを使用し、多数点への同時奇襲着上陸立体作戦により、一挙に尖閣諸島全域の制圧を試みるものと予想される。

 今回紹介した、PLA海軍陸戦隊の能力と運用の実態には、わが国としても引き続き注目しなければならない。

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